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人を気持ちよく納得させ、いい結果を導く説明とは

2012年06月14日 公開

小宮一慶 (経営コンサルタント)

《PHPビジネス新書『一番役立つ!ロジカルシンキング』より》

最初の10分で概略を説明できるようにする

 プレゼンテーションに臨むにあたっては、事前にその流れを自分のなかで論理的に組み立てておかなければなりません。しかし、相手が非常に忙しい人などの場合は、いくら論理が緻密に積み上げられていて分かりやすくとも、長時間の説明にはイライラすることでしょう。そこで、プレゼンテーションでは、最初の10分間で説明の全体像、概略を伝えられるようにしておくべきです。

 本当に忙しい人というのは、場合によっては途中で抜けなければならないこともありますし、ほかの突発的な用事が入ってくることもあります。ですから、最初の10分間で、資料1枚程度にまとめた概略を説明するのです。10分間であれば、どんな人でも長いとは感じません。資料1枚にまとめて、10分間で伝えきるトレーニングをすることをお薦めします。

 10分間で伝えられることは、あくまでも概略にすぎません。当然、相手のなかにはいくつも疑問が浮かぶはずです。そこで、その疑問に答えるという形で、あるいは補足で1つひとつを説明するのです。つまり、説明にも、段階的な階層構造を入れるということです。

 具体的には、ステップ1で結論とその根拠などの概略、ステップ2で概略のすぐ下にくる大きな柱、ステップ3でその大きな柱のなかの項目といったようになります。

 とにかく、最初の10分間は、結論とその根拠の概略を説明することだけに集中します。新聞の見出しと数行のリード文のようなものと考えてもらえば分かりやすいかもしれません。それで全体像が見えれば、相手も安心するわけです。

 

 例えば、「マレーシアに進出する」というのが結論であれば、まず「マレーシアに進出することを提案したいと思います」と結論を言って、その根拠の概略を10分間の説明のなかに入れこんでしまいます。

 もちろん、10分間しかありませんから、細かいところまで、すべてを説明することはできません。そこで、ステップ2でそれぞれについてくわしくお話ししていきます、とするのです。このように進めれば、何らかの事情で途中退席したとしても、相手は結論を理解してくれます。資料をきちんと用意しておけば、くわしいことは、あとでお読みくださいということですませられるかもしれません。

 

 ただし、1つ気をつけてください。10分間の説明であっても、論理的にしっかり組み立てられたものでなければなりません。論理的におかしなところがあれば、途端に相手はプレゼンテーションそのものや、それによって導き出される結論に、不信感、不安を抱くことでしょう。

 したがって、10分間の説明においては、論理的な整合性に注意を払い、より深い部分の説明に関してはステップ2に任せれば良いということになります。

 

嘘をつかない

 人に説明するときには、相手が反論できない、しにくい、相手が納得しやすいことをしっかりと話すことが大事です。

 例えば、日本経済に閉塞感があるということは、誰もが否定しにくいことです。そうした事実をきちんと積み重ねていかなければなりません。

 「だから、海外進出をするべきです」
 「海外進出をしたほうが良いと思います」
 と話を持っていけば、相手は逃げられなくなります。

 

 そうはいっても、「本当に大丈夫なのか」という意見は必ずと言っていいほど出てきます。もちろん絶対に大丈夫などということはありませんから、進出した同業他社などの成功例や失敗例、それぞれの確率などが分かる資料をきちんとそろえておくべきです。

 

 ここで気をつけなければならないことは、絶対に嘘をつかないようにするということです。

 「過去、70パーセント程度の企業が成功しています」
 「成功した企業のリターンはこれぐらいの数字です」
 というように、必ず事実を伝えるようにします。

 官僚や政治家がよくやるような、こじつけの数字を持ち出してくるのは厳禁です。なぜなら、プロジェクトを実現させたいがために、都合の良いデータをひっぱりだしてくると、あとでひどいしっぺ返しをくらうこともあるからです。

 現に、今、年金がたいへんなことになっているのは、10年前、15年前の非常に甘い人口推計を使ったからです。当時、国民を納得させるには、そのほうが都合が良かったからだと思いますが、見こみ通りになっていないことは明らかでしょう。

 自分に都合の良い前提で話をしていると、相手の論理的思考力が高い場合、そこで疑義をはさまれて、相手はすべてに対して疑いを持つようになります。

 前にも述べましたが、特に、日本人は、「この人が言うことは、確からしい」「あいつの言うことは信じられない」といったように、話の内容よりも、誰が言ったかで判断する傾向があります。

 1つでも「こいつの言っていることは嘘だ」と思われたら、それ以降のほかのことすべてについて、疑わしいと思われてしまうのです。

 こんな状態では、当然、相手は納得しません。

 

相手からの質問があることを想定して準備する

 相手に説明をする際に、想定される質問事項に対しての答えを、あらかじめ準備していますか。

 例えば、上司に売り上げ報告をするとします。その際、上司は前年同期の数字ぐらいは聞いておきたいと考えることでしょう。そうしたことについては、事前にその資料を用意しておくか、プレゼンテーション用の資料のなかに数字を書き加えておくことが、最低限の準備として必要です。

 それさえも思いつかないというのは、少々問題です。会議で質問されて、「調べておきます」と答える人をよく見かけます。しかし、そのなかには想定して、準備しておいて当然の質問に対しても答えられない人が少なくありません。際限なく質問を想定しろとは言いませんが、先ほどでいえば前年同期の売り上げぐらいは高い確率で尋ねられると認識しておくべきです。もっといえば、そういうことに興味のない人が提案していることに疑問を感じる人もいるのです。

 

 自分の言いたいことを伝える準備に、一生懸命になっている人がいます。説明さえ完璧にできれば、相手は何も言わずにそれを了承するだろうと考えているのでしょう。繰り返しますが、理解してもらうことと、納得してもらうことは別です。相手は自分とは異なる思考パターンをもっているかもしれません。そうすると、やはり様々な質問が出てくる可能性が十分にあるわけです。

 もし相手に質問されて、それに答えられなかったら、相手は、なんだ、その程度のものか、十分に考えていないのではないかと疑いを抱くことになります。せっかく、きちんと伝わるように説明しても、その努力がムダになってしまいます。

 

 ただ、若いうちは、経験も少なく、論理的思考力の問題とは関係なしにものごとの関連性が分からず、想定される質問に思いいたらないこともあります。そこで、先に同僚や先輩相手に、同じ説明をして、リハーサルをしてみましょう。説明を聞いた同僚が、疑問に思ったところ、さらに知りたいと思ったところを聞いて、それに対しての答えを準備しておきます。そうすれば、きちんと準備ができるはずです。

 

小宮一慶

(こみや・かずよし)
 
経営コンサルタント

株式会社小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。1981年、京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。1984年7月から2年間、米国ダートマス大学経営大学院に留学。MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の1993年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1994年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア)企画部長として在宅介護の間題に取り組む。1996年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。
主な著書に『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)『「1秒!」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)『決算書速習教室』『たった5分で「あなたと一生仕事をしたい」と思われる話し方』『ひらめき力速習教室』(以上、PHP研究所)など多数。


◇書籍紹介◇

一番役立つ! ロジカルシンキング

小宮一慶 著
本体価格 800円
 
「何を言いたいんだ」「整理して話せ」と怒られている人、必読! ロジカルシンキングを使って言いたいことをきちんと伝える方法を解説。


 

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