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部下が動かないとキレる管理職は“ピラミッド型組織の崩壊”に気づいていない

前川孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役)

2023年06月08日 公開

 

組織づくりへの采配の如何が上司力を左右する

その上で、上司の役割としての組織のつくり方を考えます。冒頭でも述べたように、組織に集うだけで、部下たちが自然と連携して動いてくれることはありません。まず上司が組織の目的を明確に示し、その目的に部下が共感して動機づけされることが必要です。

そして、一人ひとりに組織の目的達成を目指すための重要な役割を割り振り、「あなたの持ち味を活かして、組織の目的達成のためにこの仕事を任せたい」と伝えることが大切です。

こうして「組織の目的」と「個人の役割」をしっかりつなげ、組織の全体像を部下たちに見せて「全員が組織の目的実現に向けて重要な役割を担い合っている」と納得してもらうのです。そうすることで初めて、組織は機能し始めるのです。これこそが、上司の役割としての組織づくりです。

サークル型組織の説明の際に、組織の目的を中心に置くと述べました。しかし、これは単に理念として会社の壁に掲示したり、メンバーに唱和させれば浸透するものではありません。

会社の最上位の組織目的である経営理念にせよ、その下での自分たちの組織の目的にせよ、いくら経営者や上司が口酸っぱく繰り返しても部下は動きません。「それを、いかに達成するのか」「自分は達成のために何ができるか」がイメージできなければ、雲の上の話に終わってしまいます。

部下たちが「自分の仕事・役割が組織の目的実現にどう関わっているのか」をしっかり腹落ちできて初めて、組織の目的は部下にとって現実味を持つのです。

 

「あなたならでは」の活躍に期待し、動機づける

それでは、部下一人ひとりの強みを活かす組織はどのように作ればいいでしょうか。上司と部下が互いに共有し合った部下の役割が、さらに組織の中でどのような位置づけになるかを示し、本人と組織全体で共有する方法を見ていきましょう。

あなたは中堅広告代理店で営業組織を率いるリーダーで、組織づくりの面談をします。面談相手の部下は、営業第二課の11年目の中堅社員の渡部さん(仮称)とします。今期、東部エリア担当の営業主任として抜擢し、本人も受諾してくれました。

面談で上司からは、これまでの本人の活躍と希望を踏まえ、近い将来には営業第二課全体でのリーダーシップの発揮を期待すると伝えました。併せて、次の上半期は全員で「お客様の販売30%UPで、売上目標30%UPを達成しよう」との組織目標も共有したところです。

そこで、新たなリーダーの渡部さんには、「あなたならでは」の役割を担ってもらいたいと強調するのです。渡部さんは、コツコツと顧客本位の提案営業を積み重ねてきたことで、お客様からの信頼が厚く、社内でも定評があります。また上司や後輩との報連相も丁寧で頼りにされる存在です。

そうした自他共に認める「信頼関係作りのプロ」としての強みを今後も十分に発揮して、渡部さんらしいリーダーシップで組織に貢献し、大きく成長してほしい。そのことを本人に伝えると同時に組織図にも明記し、全体で共有するのです。

こうして、部下一人ひとりの仕事を組織全体の中に位置づけると同時に、本人のキャリア希望にもつながる仕事として動機づけるのです。こうして、部下一人ひとりの活躍・成長と組織の成長がつながっていくのです。

 

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