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社会

日本の子どもの7人に1人が貧困...“可能性を潰す社会”はどうすれば変わるのか?

林大介(監修)

2023年08月22日 公開

 

親の経済力で子どもの将来が決まる

日本は約30年近く経済が低迷し、働く人たちの収入(賃金)が増えない状況が続いています。そのなかで、高い教育費は親の大きな負担になっています。

そのため、親の収入が低かったり、親が病気がちである、などの理由で進学をあきらめて、働くことを選ばなければならない子どももいます。

親の経済力しだいで、子どもにどれだけよい教育環境をあたえられるかが決まり、場合によっては、子どもの可能性をうばうことになるのです。親の経済力によって子どもの将来の選択肢が減ってしまうのは、大きな社会問題です。

最近では、若者の貧困も問題となっていますが、大きな負担になってきているのが、奨学金(貸与型)の返済です。現在、日本では、学生の2人に1人が奨学金を受けているといわれます。

社会人になって働きはじめても、奨学金返済の負担で貯蓄ができず、それが理由で結婚時期がおくれたり、あきらめたりするケースもあり、そのことが少子化をさらに加速させています。

30年ほど前の日本の社会では、奨学金はごく一部の成績優秀な学生が利用するものでした。1985年の大学や短大の進学率は、合わせて37.6%ですが、2022年では60.4%となっています。

また、入学金と年間授業料を合算した金額は、国立大学では約2.2倍になり、私立大学でも約1.7倍になっています。

 

勇気を出して声をあげたロールモデルたち

若者にかぎらず、最初に声をあげるのは、勇気のいることです。その主張が、多くの人が感じてきた普遍的な内容であれば、最初に声をあげた人は、多くの人のロールモデル(考え方や言動が模範となる人物)となるでしょう。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリは2018年、15歳のときに「気候のための学校ストライキ」と称して、学校を休んでスウェーデン議会議事堂前に座りこみ、気候変動対策を議会にうったえました。

この運動は、「未来のための金曜日」(Fridays For Future)の運動としてSNSで若者たちに広がり、2019年3月15日には、世界125か国で100万人以上がこの運動に参加しました。

また、2009年、11歳のときに、武装勢力タリバンによる女子校の破壊活動を告発した、パキスタンの人権運動家マララ・ユスフザイは、その後、銃撃されたことにも屈せず、「女の子にも教育を」とうったえ続けて、2014年に世界最年少でノーベル平和賞を授与されました。

マララの行動により、世界中の多くの女の子が教育の機会をうばわれていることに注目が集まり、女子教育推進への機運が高まりました。

ふたりの少女は、声をあげることで自分も世界に変化をおこすことができるのだと、若者たちに勇気をあたえたのです。

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声をあげれば社会は少しずつ変えられる

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