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マスク事業参入で大赤字...「まずはリサーチ」で始める事業が失敗に終わるワケ

内田和成(早稲田大学名誉教授)

2023年08月10日 公開 2023年08月10日 更新

 

かつて有料だった情報がどんどん「無料」に

また、かつては情報を得るためには「時間とお金」が必要だった。営業担当者が取引先についての詳細な情報を知りたければ、図書館や書店に行って情報を集めたり、調査会社に依頼して資料を入手したりする必要があった。情報を手にするためには、手間もかかればお金もかかった。

だが、いまや各社のホームページを見ればその会社の情報が無料で幅広く公開されており、業界団体のホームページにアクセスすれば、過去何年にもわたる業界動向が詳しいデータやグラフつきで紹介されている。世界中の地理情報だけでなく、ある通りの画像すら家にいながらにして見ることができる。

情報収集が格段にやりやすくなったことで、情報そのものでの差別化が難しくなった。つまり、「インプットだけで差をつけることは難しい」時代になっているのだ。

 

似たようなレポートが増えている

情報収集(インプット)の段階で差がつかないと、何が起こるのか。アウトプットがみな、似たり寄ったりのものになってしまうのだ。

「ESGについての情報をまとめ、レポートとして提出せよ」という課題が出たとする。多くの人はまず、グーグルやヤフーにて、この単語で検索をかけるだろう。すると、ウィキペディアをはじめとした複数のサイトが表示されるはずだ。

あるいはSNSでハッシュタグ検索をする人もいるかもしれない。その結果、検索履歴により多少の違いはあるかもしれないが、ほぼ誰もが同じようなページをリコメンドされることになるだろう。

もちろん、どの情報を活用し、どのように解釈したり、どの論点に力点を置くかで異なるタイプのレポートにはなるが、ある情報を手に入れることができるかできないかで差がつくことはない。

結果として、どうしても似たようなレポートが多くなってしまう。つまり、「情報のインプット→それを踏まえてのアウトプット」というプロセスでは、ほとんど差がつかないということだ。

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「まずインプット」では成果が出ない理由とは?

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