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生き方

医師が考える「悔いがない最期」を迎える人の60代からの心がけ

和田秀樹(精神科医)

2023年12月07日 公開

 

補聴器などの高齢者グッズは積極的に買う

その一方、加齢によって、体のあちこちに不具合が出てくることもまた事実です。外を歩くと膝が痛くなったり、耳が遠くなってきて友達の声が聞こえづらかったり、といったことも出てくるでしょう。

ここで「弱ってきたから、出歩かないようにしよう」と思うのは禁物です。そのときこそ、有効なお金の使いどきです。

不具合が出てきた部分を補うグッズを買いましょう。目が悪くなれば老眼鏡、歩きづらければステッキ、聞こえが悪くなれば補聴器、などなど。

 補聴器はとりわけ大事です。聴力の維持は、認知症予防になるからです。

耳が遠くなると、入ってくる情報量が必然的に少なくなります。人との会話も減り、生活も内向きになり、うつになったり、認知症が進んだりすることがあるのです。人の話を聞き取ろうとしてずっと頑張っていることが脳にアンバランスな負担をかけ、認知機能が落ちていくという説もあります。補聴器があれば、そのリスクを回避できます。

今の補聴器はサイズも小さく、性能も非常によくなっています。値段は片耳3万~50万円、両耳で6万~100万円くらい。それだけのお金をかける価値は十分にあります。

紙おむつも心強い味方です。尿漏れが気になって外に出るのが億劫な方は大いに利用しましょう。最近の紙パンツは薄くなっているうえに性能もよく、履き心地がよくなっています。

 

「年甲斐もないこと」を楽しもう

お話ししてきた通り、新しい経験は前頭葉を活性化させる、最強の老化防止法です。「ワクワク」にお金を使うのは、とても有意義です。

これまでの自分とはかけ離れたこと、やりたかったけれど二の足を踏んでいたこと、憧れていたけれどできなかったことをやってみましょう。

前述の「最低限の貯蓄」に手を付けない範囲なら、公営ギャンブルを楽しんだり、大枚をはたいてポルシェに乗ってみたりするのもいいのではないでしょうか。

ワクワクと言えば、疑似恋愛的なことも、非常に大きな若返り効果があります。キャバクラに行ったり、推し活をしたりと、「年甲斐もないこと」をするとホルモンの分泌が活発になり、脳も体も若返ります。

 

著者紹介

和田秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長。著書に、『医学部にとにかく受かるための「要領」がわかる本』(PHP研究所)、『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(以上、PHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『感情的にならない本』『[新版]「がまん」するから老化する』(以上、PHP文庫)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『自分は自分 人は人』(知的生きかた文庫)など多数。

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