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仕事

数多の会社員をみて判明した「仕事ができる人」になる最短ルート

安達裕哉(ティネクト株式会社 代表取締役)

2023年12月11日 公開

 

「まず案を出す」重要性

「どうすれば"仕事ができる人"になれるでしょう?」といった相談を、若手の方からよくいただく。

A :やっぱり論理的思考力を身につけるべきですか?
B :英語ができたほうがいいですかね?
C :資格はとったほうがいいですか?

多くはそういった類の相談だ。もちろん、いずれも間違いではない。しかし、私がコンサルタントとして、多くの企業を見て学んだことのなかで、もっとも重要だと思ったのは、そのようなことではなかった。

それに私が気づいたのは、ある会議でのことだ。会議のテーマは「集客」だった。新しいサービスを立ち上げたのだが、いまひとつ反応が悪く、「これからどうすべきか」の話し合いを部門全体で行なっていた。

会議のメンバーは部門の主要メンバーで約15名。若手からベテラン、部門長までが一堂に会していた。私はその司会進行役という名目で会議に参加していたが、実質的には「部門長の脇で議事録をまとめる」という役割であり、最終的な決定の権限は部門長が握っていた。

会議は、まず現状の報告から始まった。売上の状況、顧客の数、引き合いの推移、チラシの具体例から利益予測まで、さまざまなデータが提出された。かれこれ1時間程度の報告があっただろうか。ひと通りの報告が終わると、部門長は口を開いた。

I :何か考えがある人は発表せよ。

しばらくは沈黙のうちに時間ばかりがすぎた。そして5分ほど経ったときのことだ。ある若手、まだ20代後半と思しき人が、手をそろそろと挙げた。

F :よろしいでしょうか......。

部門長がうなずくと、彼はゆっくりと話し始めた。

F :ありがとうございます、では、意見を述べさせていただきます。このサービスですが、現在調子がよくない理由は、「キャッチコピー」にあると考えています。私が思うに、このサービスの本来のターゲットは「300人以上の企業」です。

しかし、現在のキャッチコピーはどちらかといえば、「100名程度の零細企業」向けになっていると感じており、それが現在の引き合いの少なさの原因だと思われます。

I :そうか。

F :したがって、私が考える案は、キャッチコピーを次のように変えることです。

そして、彼は自分の考えてきたキャッチコピーを披露した。だが、会場からは苦笑が聞こえるのみだった。それもそのはず、彼が考えたというキャッチコピーはいかにも稚拙なものであり、どうひいき目に見ても、集客できるようなクオリティではなかったからだ。すかさず、会場からは批判の声が上がる。

A :問題はキャッチじゃないでしょう、価格ですよ。
B :キャッチというのは間違っていないように思うが、このキャッチではねぇ......。
C :なぜこのキャッチが300名以上向けなのか、理由がわからないんだが。

質問、批判が相次ぎ、彼は落ち込んでいるようだった。だが、部門長は言った。

I :非常に良い意見だ。私は気づいていなかった。検討事項に加えよう。

その後、会議は「キャッチコピー」のみならず、価格設定、ターゲットの再設定、営業の方法まで、多岐にわたり話が展開し、新しい施策がまとまり、終了した。私は会議が終わったあと、部門長に質問した。

G :なぜ、あのキャッチコピーを「良い意見」とおっしゃったのですか? 素人目に見ても、クオリティは高くないように感じましたが。

I :仕事で一番偉いのは誰だと思います?

G :権限を持っている方でしょうか?

I :権限を持っていてもダメな人はダメです。どんな仕事でも、一番偉いのは「最初に案を出す人」なんですよ。批判なんて誰でもできる。でも、「最初に案を出す」のは勇気もいるし、何より皆から馬鹿にされないように一生懸命勉強しなければいけない。だから、最初に案を出す人を尊重するのは仕事では当たり前です。

私はそれ以来、さまざまな会社で観察を行ない、仕事をするときは常に、「まず案を出す」ということがいかに重要かを、多くの企業で見ることができた。

だからいまでは、若手から「仕事ができるようになるためにはどうすればいいですか?」という質問を受けたときには、おせっかいながら必ず「一番最初に案を出せるようになるように頑張る」と回答するようにしている。

 

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