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「脳の疲れ」がスーッととれる!“癒しホルモン”オキシトシンの増やし方

有田秀穂(東邦大学医学部名誉教授)

2012年08月17日 公開 2024年12月16日 更新

「脳の疲れ」がスーッととれる!“癒しホルモン”オキシトシンの増やし方

PHP文庫『「脳の疲れ」がとれる生活術』より

 

心と体の疲れがスーッと消える10の習慣

現代人は疲れやすくなっているのかもしれません。周囲には、さまざまな便利なものがあふれ、生活はどんどん暮らしやすくなっているはずなのに、何かイライラしたり、欲求不満が多く、いつもストレスを抱え、疲れがとれない状態なのではないでしょうか。

それは肉体的に疲れているというよりも、むしろ心の疲れ、すなわち「脳の疲れ」といえるものをつねに抱えているからなのです。

日本人の幸福度は、いろいろな調査(ちなみに、イギリスのレスター大学、178カ国の調査[世界幸福地図国別幸福度ランキング2006]では90位〈第1位はデンマーク〉、ミシガン大学社会調査研究所による2008年発表の世界97カ国の調査では43位〈第1位はデンマーク〉、2009年度「地球幸福度指数ランキング」では143カ国中75位〈第1位はコスタリカ〉)でかなり低いようです。

いま、経済的な問題や政治的な問題など、いろいろな問題を抱えているとはいえ、日本はまだまだ豊かな社会でしょう。そうであっても、日本人自身があまり幸福だとは思っていないようです。

しかし、昨年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災とそれに続く福島原発事故以来、少し変わってきたのではないかと思っています。不幸な出来事でしたが、それをきっかけにして、日本中からボランティアなど支援の輪が広がり、また家族の絆、人と人の絆の大切さが見直されてきたからです。

危機の中で、家族を含めた人間関係こそが、私たちの心を癒してくれることに、多くの人が気づきはじめたのではないでしょうか。

実は、人と人の結びつき、信頼こそが、脳の疲れを癒してくれるということが、脳科学の立場からも検証されはじめたのです。

私は以前から脳のセロトニン神経の活性化によって、ストレスを受け流すことができるようになり、安定した心になるということを書いてきました。さらに最近注目されているのは、オキシトシンというホルモンです。オキシトシンが十分に分泌されていると、脳の疲れを癒し、気分を安定させ、人に対する信頼感が増し、心地よい幸福感をもたらしてくれるのです。

オキシトシンとセロトニンは関係していて、オキシトシンが分泌されるとセロトニン神経に影響を与え、セロトニン神経も活性化されます。オキシトシンとセロトニンが十分に分泌される生活は、心の疲れを癒し、心に充足を与えてくれるのです。

なぜそれがよいのかということについては、拙著『「脳の疲れ」がとれる生活術』の中で、詳しく説明していますが、ここでは脳内にセロトニンとオキシトシンを十分に分泌する、誰でも簡単にできる方法をあげておきましょう。

1、夜は12時までに眠る。
2、夕食後はパソコンを操作しない。
3、夜は携帯電話で長話をしない。ベッドの近くに携帯電話を置かない。
1~3については、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をよくして、よい睡眠をとる条件です。

4、朝日を浴びる(朝型生活に)。
5、朝と夕方に30分程度歩く(あるいはジョギング、サイクリング、スイミングなどのリズム運動を30分程度)。
6、呼吸法をする(これもリズム運動の一種です)。
一日の中で何回か5分程度、腹式呼吸をする(ヨガ、気功、坐禅などは呼吸法になります)。4~6はセロトニン神経を活性化します。

7、家族団らん。
8、夫婦、恋人とのふれあい。
9、感情を素直にあらわす。
10、親切を心がける。
7~10はオキシトシン分泌を促し、セロトニン神経も活性化させます。この7~10の行動から人間関係がうまくいき、気分よく生活することでオキシトシンが分泌されることがわかると思います。オキシトシンが十分に分泌されると、脳の疲れがとれるだけでなく、体をも健康にするのです。

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「幸福ホルモン」として注目されはじめたオキシトシン

著者紹介

有田秀穂(ありた・ひでほ)

東邦大学医学部統合生理学教授

1948年、東京生まれ。東京大学医学部卒業。現在、東邦大学医学部統合生理学教授。東海大学医学部にて呼吸の臨床にたずさわり、筑波大学基礎医学系にて呼吸の脳生理学の研究を行なう。その間ニューヨーク州立大学に留学。
著書に『セロトニン欠乏脳』(NHK出版)『共感する脳』(PHP研究所)『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)『歩けば脳が活性化する』(ワック)などがある。

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