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樋口武男 × 安藤忠雄 /厳しい現実から時代の先を読み夢を語ろう

2013年02月27日 公開

樋口武男(大和ハウス工業会長兼CEO)、安藤忠雄(建築家)

『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2013年3・4月号Vol.10 「憂国対談」より》

日本には今、国のあり方を左右するような問題が山積している。原発問題、アジア外交、震災復興……。どれをとっても“待ったなし”の状況である上、方向を間違えれば、日本沈下は免れない。低迷という病にあえぐこの国に、特効薬はあるのか。日本を憂える世界的建築家と住宅業界トップリーダーに語り合ってもらった。

なぜ日本の停滞は終わらないのか

安藤 まず、日本の企業家が発信しなくなりましたね。「面白いからやろう」と言う人が少なくなった。樋口さんを目の前にして言いますが、大阪のマルビルをまるごと壁面緑化して、街のど真ん中に直径30メートルの“大木”をつくろう、という私の発案に、樋口さんは「面白い」と言ってくれて、プロジェクトを進めることを快諾してくださった。こういう人がいなくなると、日本は終わります。

 私はこの対談を引き受けたとき、あらためて松下幸之助さんの言葉をひもといてみたんですが、松下さんの言っていることは正しいですね。信念、行動力、それと発想力・着眼点がないと仕事はうまくいかない。樋口さんも、大和ハウス工業の創業者である石橋信夫さんから「生きていることの面白さ」を学んだとおっしゃいましたよね。それを礎に新しい世界を切り開いていくんだと。

樋口 先般、関西プレスクラブで講演をしてきたんですよ。そこで、こんなことを話してきました。人間、生まれたときはだれでもそう大差はない。持っている細胞の数もそれほど変わらない。揉まれて努力することで初めて能力差がつく。しかし、いくら努力しても運がついてこない人がいる。運と努力がマッチしないと芽は出ない。ならば、運はどうやってつくのか。不義理をするとか、王道を進もうとしない人には、運はついてこないんだ、と。

安藤 人として間違った道はありますよね。王道、つまりまっすぐな道を歩く途中で、失敗したり迷ったりすることはありますが、軸がぶれるとダメですね。

 震災復興の取り組みを見ていて思うんですが、とにかく会議ばっかりやっている。会議をしているうちに疲れてしまって終わり。なぜ日本の企業はこうなってしまったのか。樋口さんはそういうことと闘ってこられたのだと思います。

樋口 会議は「回議」とも書くし「怪議」とも書きます。結論の出ない会議は、ただ回っているだけ。いまのようなスピードの時代に、そんなことをしていても、何も前には進みません。私は「独断」はするけど「独裁」はしないと言っています。組織が大きくなると、会議や協議が多くなって、なかなか物事が決まらなくなる。だから「カン」が大事になる。カンは経験を積まないとなかなか当たりません。当社は株式会社なので、もちろん会議に諮って了解をとるわけですが、「分かった、やろう」と決めたらあとは早いですよ。

安藤 大和ハウスさんは、会議が少ないんですか?

樋口 私はあまりやりませんね。プロジェクト単位ではやっている場合もありますが。経験上、会議はやらないほうが得てしてうまくいきます。部屋の中にこもっていたって、何も新しいものは出てきませんから。会議をするなら、現場に行ってやるべきでしょう。現物を目の前にすれば、話は早く進みますよ。

安藤 最近、ネット会議というのがあるでしょ。あれではたしてうまくいくのか。思うに、コンピュータというのは、決定している人に責任がないようにできている。うまいことなってますねえ。

樋口 責任逃れをする会議なら、しないほうがましです。だれかが責任を持たなければ。
 以前、私がPHP研究所で講演させていただいたとき、松下さんが81歳のときの講演DVDを記念にいただきました。その内容の中で、こんな言葉がありました。「自分はこの年になっても、会社に大きな影響力を持っている。そんな人間が私心私欲に走ったら、会社をつぶす。だから、自分の中に私心私欲が出ないよう毎日葛藤している」。一時間足らずの講演でしたが、この部分だけ、今でも強烈に覚えています。

「豊かさ」が若者を弱体化させた

安藤 さきほど「カン」が大事だとおっしゃいましたが、やはり経験を積まなければ、直感力、カンは働きませんよね。ギリギリの状態に何度も追い込まれた人でないと、直感力は働かない。最近の若い人には優秀な人材がたくさんいますが、ギリギリまで追い詰められたという経験がないから、直感力がないんじゃないかと思います。だから、いざというときに逃げる。どうしようもない。日本は1970年代からずっと豊かですが、豊かさというのは、直感力を奪うんですね。

  ☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の一部分を抜粋したものです。記事全文につきましては下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)
  

■ 樋口武男 (ひぐち・たけお)大和ハウス工業会長兼CEO
1938年兵庫県生まれ。1961年関西学院大学法学部卒業。1963年8月、大和ハウス工業入社。1984年取締役就任後、1989年常務取締役、1991年専務取締役。1993年グループ会社の大和団地代表取締役社長。2001年、大和ハウス工業代表取締役社長就任。2004年代表取締役会長兼CEO。社長就任後、数々の改革を打ち出した。著書に『熱湯経営―「大組織病」に勝つ』『先の先を読め―複眼経営者「石橋信夫」という生き方』(ともに文春新書)がある。

■ 安藤忠雄 (あんどう・ただお)建築家
1941年大阪府生まれ。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。1979年「住吉の長屋」で日本建築学会賞受賞。代表作に「光の教会」「大阪府立近つ飛鳥博物館」など。イエール大学、コロンビア大学、ハーバード大学の客員教授を務め、’97年東京大学教授、2003年から名誉教授。1993年日本芸術院賞、’95年ブリッカー賞、2005年国際建築家連合(UIA)ゴールドメダルなど受賞多数。’10年文化勲章受章。著書に『仕事をつくる』(日本経済新聞出版社)、『建築を語る』(東京大学出版会)がある。


<掲載誌紹介>

『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』
2013年3・4月号Vol.10

2013年2月27日発売

<今号の読みどころ>
 3・4月号の特集は「商いの原点」。松下幸之助は生涯、一商人としての観念を持ち続け、自社の社員に、あるいは系列店の店員に、その心得を説き続けた。お客様に喜んでいただくこと、取引先と共存共栄すること、適正利益をきっちり確保すること、社会にプラスを与えること、みずからが喜びを感じて仕事ができること、そして、新しい商品・新しいサービスを発意し続けること……。では、ITの発達やグローバル取引の活発化など、大きな変貌を遂げつつある現代の商いで大事なことは何だろうか。本特集では、歴史を眺め、あるいは現代日本企業の現場で活躍する人たちの事例を見ながら、商いの原点を考えてみた。
 そのほか、世界的な建築家・安藤忠雄氏と、住宅業界のトップリーダー・大和ハウス工業会長の樋口武男氏の対談は見どころ。

 

BN

 
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