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【出世のコツ】 三度の飯より「自分を好き」になる

高嶋ちほ子(キャリアコンサルタント)

2013年04月03日 公開 2013年04月09日 更新

『1日5分で「できる人」になれる! 出世ドリル』より》

 

出世したかったら、自分を好きになりなさい

 著名人の取材を続けてきて一番衝撃的だったのが、「この世には、こんなに自分が好きな人たちがいるんだ」ということでした。

 私自身、自分のことを“嫌い”とまでは思っていませんでしたが、そんな比じゃありません。「三度の飯より自分が好き」のレベルなのです。

 成功談を話すのが好きなのは、誰だってそうです。どんな人でも自分が成功したことはみんなに話したいと思うものです。しかし、一流であればあるほど、挫折で苦しんだ過去、コンプレックスなども、こちらが求めれば熱心に、そして真摯に話してくださいます。

 また、彼らは自分の写真を撮られるのも大好きです。当時、容姿に自信がなく、写真を撮られるのが嫌いだった私は、取材のときにうれしそうに写真を撮られている著名人の方々を見て、とても不思議に思っていました。もちろん取材するのは、ハンサムな俳優ばかりではありません。失礼ながら、お世辞にも容姿端麗とは言いづらい方でも、なぜかウキウキして写真を振られている。このことが私には驚きだったのです。

 そんなとき、明石家さんまさんをテレビで目にして、「自分が出演しているドラマを見るのが大好きで、繰り返し家で見て楽しんでいる」と楽しそうに語っていたことを思い出しました。もしかしたら、そこに“出世できる人とできない人の違い”があるのではないか――。

 そう言えば、取材した方々の多くは、自分が掲載された記事をいつでも見られるように、大事に保存していらっしゃいます。取材のときはその方の事務所に伺うことが多いのですが、本棚に過去の記事がファイルに入ってきれいに並べられ、いつでもすぐに取り出せる状態になっているのです。

 一方、私はと言うと、自分が編集した記事だけでなく、自分が取材を受けた記事でさえも、一度見たら段ボールに入れ、そのまま放置していました。

 整理するのがめんどうくさかったというのもありますが、ダメな自分の姿を見るのが恐ろしく、開く勇気がなかったのです。

 そんなある日、リクルートエグゼクティブエージェントのカリスマコンサルタント・森本千賀子氏に取材させていただく機会がありました。彼女は取材の後、出版された本に加え、ご自身で自分の経歴や強みを分析された“独自の職務経歴書”をくださいました。

 「これを渡すと、どれだけ自分が好きなんだ! とみんなから言われちゃうんですけどね」と笑いながらおっしゃっていたのですが、その笑顔の中に底知れぬパワーを感じ、この人はもしかしたら有名になるかもしれないと思ったものです。実際、彼女はその数年後、NHK『プロフェッショナルの流儀』に出演されるなど、活躍の場を広げています。

 森本さんに感じたそのパワーは、これまで取材してきた一流の人たちと同じものでした。彼女と私の違いは何だろう。同じリクルートで働いているのに、何が違っているのだろう……。答えは、森本さんの言葉の中にありました。

 一流になる人は、「自分がとても好き」なんです。もっと言うと、過去の自分もひっくるめて全部好き、なんです。

 誰だって挫折や失敗はあります。消去したくなるような恥ずかしい過去もたくさんあります。でも、そんな自分も全部含めて、自分が好き。だから著名人の方たちは、自分の作品を楽しく何度でも見ることができるのです。

 やはり自分が好きな人は出世する。私がいつまで経ってもうだつが上がらないのは、過去の自分を飲み込めないからだ――。

 

出世の第一歩は、ダメな自分を許すこと

 自分が好きな人は出世する。逆に言うと、自分が好きになれないかぎりは、努力しても出世できない。そう確信した私は、自分のことがさほど好きではない理由を分析してみました。答えは簡単。自分をそのまま受け入れていなかったんです。

 「自分をそのまま受け入れる」ということは、過去の自分を認めてあげるということです。ダメだった自分を許してあげるということです。

 自分で言うのも何ですが、もともとひどい怠け者にもかかわらず、仕事にはかなり熱心に取り組んでいたつもりです。残業はとても多かったと思いますし、休日が全くない編集部もありました。でも、どれだけやっても“理想の自分”には程遠かった。

 就職活動に失敗し、小さな出版社でヘアヌード写真集や成人向け男性誌の編集からスタートした私は、キャリアに関してコンプレックスを持っていました。大手マスコミに入って活躍している友人と自分を比べ、「自分はカッコ悪いなあ、恥ずかしいなあ」と、ずっと自分にダメ出しばかりしていたのです。

 私は、思い切って押し入れの奥に放置していた段ボールを開けてみることにしました。

 ……パンドラの箱よろしく、そこからはやはり、見たくない仕事がたくさん出てきました。でも、思ったほど嫌じゃない。以前はまともに見られなかったのですが、十数年経って意外と楽しく見られるようになっていたのです。

 どうしてだろう。不思議に思いつつ段ボールをあさっていたら、ある色紙に目が留まりました。10年間在籍した転職情報誌『B-ing』を離れるとき、編集部の人たちがくれた色紙です。そこには、「雑誌の“看板”をつくってくれてありがとう。『プロ論。』は、あなたにしかできない仕事だと、本当にそう思っています」と書かれていました。

 もう、自分を許してあげよう。そのとき、つくづく思いました。「ダメな自分がいたからこそ、残せた仕事があったのだから」と。

 

働く意味を知りたかったら、人に感謝するといい

 「どんなにひどく寂しい状況だったとしても、出会いに目を見開いておけ。次の人生を決めるような出会いは必ずある」と教えてくださったのは、映画監督の堤幸彦氏でした。

 監督のおっしゃる通り、ヘアヌード写真集や成人向け男性誌の制作であっても、運命を変えるような素晴らしい出会いはたくさんありました。写真家の荒木経惟氏など、超一流の方々とお仕事をさせていただいたことはとても貴重な経験でしたし、将来役に立つようにと、いろんなパーティーや地方ロケにも同席させてもらいました。メジャーな雑誌に移ってからも、取材先探しなど困ったときに助けてくださったのは、そのとき一緒に働いていた編集部の人たちでした。

 私はそんな恩も忘れ、過去を封印しようとしていたのです。人に感謝できない人が出世するはずはありません。なぜなら人は、感謝することで、働く意味を知るからです。

 周囲の人に感謝すると、自分は生かされていると感じるようになります。それが高じて、自らの“使命”に気づくのです。

 そんな大切なことがわかったのも、ダメな自分がいたからです。やはり苦しい過去は貴重だということです。

 

誰も認めてくれなければ、自分自身でほめればいい

 「不器用ですから」

 これは高倉健さんの口ぐせですが、健さんだけでなく、多くの成功者が自分のことを不器用だと言っています。そして、「器用な人よりも、不器用な人のほうが一流になる」とも。

 それは、早いうちからたくさんの壁を乗り越えていた方が、後々大きな壁にぶつかってもよじ登っていく力があるから、という理由です。最初から順風満帆で行ってしまったら、大成せずに終わる。胆力がないのに、いきなり大きな壁にぶつかるからです。

 最初からできる人よりも、なかなか思う通りの人生を歩めなかった人のほうが、努力する方法と楽しさを知っている。その力こそが偉大だということです。

 そう考えると、ダメだった自分を許せるような気がします。

 だって、「成果が出なくて苦しんだこと」「回り道ばっかりしてきたこと」が、ほかの人にはない、ものすごい財産なのですから。

 「自分はダメだなあ……」。つい、そんな風に言ってしまいそうになったら、「いや、自分は高倉健だ、一流になる」と思えばいいんです。だってその通りなんですから。

 これまでの自分を認めてあげる。自分自身が、自分の最大の理解者になる。一流への道は、まずそれがスタートなのです。

 

高嶋ちほ子

(たかしま・ちほこ)

キャリアカウンセラー、フリーエディター

上智大学文学部哲学科卒業。放送作家として活躍後、KKベストセラーズで写真集の制作に従事。角川書店『東京ウオーカー』編集部、リクルート『B-ing』『リクナビNEXT』編集部などに在籍し、料理人、クリエイター、作家、経営者、スポーツ選手など1000人以上の業界のトップに取材。編集・執筆に携わった著名人インタビュー『プロ論。』(徳間書店)は累計40万部のベストセラーに。その他、代表作は『業界のセオリー』『最高齢プロフェッショナルの教え』(ともに共著、徳間書店)『世界一しあわせな国 ブータン人の幸福論』(共著、監修:福永正明、徳間書店)など。リクルート「リクナビNEXT」で「プロ論。」の連載を13年間続けている。小説の審査員、書籍編集者としても活躍。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。


<書籍紹介>

1日5分で「できる人」になれる!
出世ドリル

高嶋ちほ子 著
本体価格 1,200円   

ベストセラー『プロ論』を通して出会った成功者に共通するちょっとした考え方。そのセオリーを14日間で楽しく身につけられるドリル。

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