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仕事の成功を呼び込む呼吸法

松本幸夫(人材育成コンサルタント)

2013年04月17日 公開 2022年12月21日 更新

『人生がうまくいく「呼吸法」』より》

 

正しい深呼吸で脳の働きを活性化

 脳は、とても多くの酸素を必要とします。一説では、静止時の筋肉の10倍以上もの酸素を脳で消費しているといいます。食については、「断食」のように、食を断っても即生命が危なくなることはありません。私は20代の頃に2週間の断食にチャレンジしましたが、かえって心身ともに爽快になって、感覚も鋭くなりました。

 しかし、脳への酸素断ち、つまり、長期に呼吸を止めることなど、とてもできないでしょう。すでに『万葉集』の時代に記述があるという海人は、海へ潜ることのプロです。脳は、血流が3分間以上止まると危険だといわれますが、海人さんは肺に酸素を貯めて、深い呼吸で血中酸素濃度を高めてから潜るので、3分間以上潜っていても大丈夫なのです。それでも、何時間も潜ることはできません。

 食以上に、呼吸は生命にとって不可欠です。正しい呼吸を行って習慣化していけば、十分な酸素が供給されますから、脳はよく働いてくれます。脳の栄養不足は、酸欠と考えればいいのです。それを防ぐ土台が正しい呼吸にあることを忘れてはなりません。

 まずは、脳の働きをよくするための正しい深呼吸から始めましょう。「ちょっと頭が疲れた」「ボーツとしている」「やる気が起きない」というときに、リフレッシュして、頭を冴えた状態にするには効果絶大です。

 「頭の働きが鈍ってきた」「何かはっきりしない」などというのは、脳からの「もっと酸素をください」というシグナルだと思えばいいのです。

 正しい深呼吸には、次の3つのポイントがあります。

 

(1)「深呼吸する」と意識する

 これは、ほかの呼吸法でもまったく同じです。いま、「○○のための呼吸法をする」「○○に意識が集中している」ということを、始める前にも、行っているあいだも、つねに意識しておくことが大切です。

 たとえば、ただモノを持ち上げるだけでは、筋肉のトレーニングにはなりません。そうではなくて、「自分はこれから持ち上げる」と意識し、さらに持ち上げながら、「いま、上腕に刺激がきている」と感じ取っていくことで筋トレの効果が上がるのです。

 呼吸も同じです。「自分はこれから正しい深呼吸をする」とか、「脳の働きをよくするために呼吸をするぞ」とはじめに意識してください。そのうえで、呼吸中の自分の心身の変化にも目を向け、体の中から余分な空気が出ていっている、体の中へ清浄な空気が流れ込んでいる、と感じ取りましょう。

 

(2)吐く息のほうを長くする

 正しい深呼吸は、腹式呼吸と並んで、呼吸法の基本といえるものです。ここがしっかりとマスターできれば、その応用であるさまざまな呼吸法がやりやすくなります。(1)の始める前や呼吸中に意識することと合わせて、「吐く息を吸う息よりも長くする」というのも、一部の例外を除いて、ほかの呼吸でも同じです。

 深呼吸が正しくできたら、ほかの応用呼吸もスムーズにやれることになりますから、腹式呼吸とともに、ぜひマスターしてください。

 まず、首、肩、腕の力を抜きましょう。これを、余分な力の入らない「虚」の状態といいます。つまり、上半身を虚にするのです。力が入るのは、お腹の中心、おヘソの下の丹田です。これが力の充実した「実」の状態です。“上虚下実”がバランスのとれた好ましい状態なのです。

 この状態で、息を吸うのは自然にまかせ、「吐く息を長く」「吐く息を長く」と心のなかで唱えて、深呼吸をしてみましょう。これ以上は息を吐けないというギリギリのところまで吐くと、あとは自然と入ってくるものです。

 

(3)時間や回数を決める

 初心者のうちはとくにそうですが、あまり長く、回数を多くする必要はありません。「1分間」「5回」くらいのペースで、無理をせずに始めましょう。

 早朝、近くの公園に散歩がてら出かけたときにやるとか、窓を開けて新鮮な大気のなかで行うというように決めて、習慣化してしまうのが理想です。

 また、体調がよくないときには無理をしてはいけません。自分のペースでゆっくり、無理なく、気楽に行うのが呼吸法を身につけるコツです。強く意識し、心を込めてできれば、30秒間とか1回の大きな深呼吸でもかまいません。

 ほかの呼吸法と同じく、深呼吸も長くやりすぎると害になります。短く、時間と回数を区切ってやるということを、深呼吸の基本として押さえておきましょう。

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