ホーム » 経営・リーダー » 「丸見え経営」が価値観の共有を生んだ

「丸見え経営」が価値観の共有を生んだ

2013年09月02日 公開

平本 清 (21〈トゥーワン〉相談役)

《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2013年9・10月号 特集 「打てば響く組織」への挑戦 より》

 

――管理職も部署もなくした「人事破壊」が意味するもの

どんなに実績をあげようとも、年収の上限は一定。昇給は30歳でストップ。自分の給与やボーナスの額を社員全員が知っている。何年勤めても、絶対に店長にもなれなければ部長にもなれない。そんな「理不尽」な会社にもかかわらず、5年間の入社3年以内退職者がわずかに1名だという。
家族経営の零細企業の話ではない。社員170名、店舗数120を数える企業である。
社員が意欲を持って働き、画期的な商品を提案し続けるチェーン店「メガネ21〈トゥーワン〉」の共同創業者である平本清氏に、その経営哲学を聞いた。
<取材・構成:森末祐二/写真撮影:石田貴大>

 

ないないづくしの〝非常識〟な会社

 当社は〝非常識〟な会社です。

 肩書がまずない。2013年7月時点で170名の社員がいますが、専務も常務も部長も課長も係長もいません。社長はいちおういますが、あくまで対外的な肩書で、しかも4年の任期付き。社内ではだれも「社長」なんて呼びませんし、仕事は店舗での接客やメガネの調整など、ほかの社員と同じ仕事をしています。またルール上、社長より社員のほうが年収が高くなるケースもあります(後述)。

 社長以外には、現在の私のような “相談役” がいますが、これもおおぜいいるので、決して特別な存在ではありません。月給だって14万円前後ですから。

 肩書だけでなく、部署もありません。人事部、経理部、総務部、広報部……いずれも当社にはなく、本社的な業務はすべて、「21本部」のわずか8名の女性社員がこなしています。少人数でいくつもの役割を担っているからといって、コマネズミのように立ち働いているということはありません。出勤時間はフレックスで自由。連絡はほとんど電子メールですから、電話もめったに鳴りません。実にゆったりとした様子で仕事をしています。

 「チェーン展開をしているのだから、店長ぐらいいるだろう」と思われるでしょう。たしかに、店舗の責任者の役割を果たす人はいます。しかし店長はいません。店舗責任者は、万が一クレームが発生したときに矢面に立つ係であって、その店でいちばん〝偉い〟わけではないのです。

 社員たちにはノルマもありません。各店舗は売上予測は立てますが、それはあくまで予測であって、達成すべき目標ではないのです。だからといって、ぐうたら社員は皆無。皆、一所懸命に働いています。

 こうした “ないないづくし” の非常識な会社ですが、社員たちはモチベーション高く働いてくれているようです。2012年までの直近5年間の入社3年以内退職者がわずか1名のみ、という事実が、そのことを示していると思います。

 

あらゆる情報を “丸見え” に

 非常識ぶりは、まだ続きます。

 21では、ありとあらゆる情報をオープンにしています。もちろん社内向け、社外向けという一定の区分はありますが、社内向けに関しては、「21Network」という名称の社内ウェブを最大限活用して、ほんとうに何もかも “丸見え” にしているのです。会社の財務状況はもちろん、各店舗の損益、出店計画の進捗など、いま会社がどのような状態にあるのか、社員はすべて知ることができます。

 入社希望者や取引先、各メーカー、マスコミといった外部の方々との電子メールのやり取りについても、社内で共有すべき内容があるものは社内ウェブに掲載します。これにより、たとえばある社員が休んでいるあいだに、その人が担当する案件で問い合わせがあっても、他の社員がウェブを見て対応できます。これだけでもかなり業務の効率化が図れます。

 当社には稟議書もありません。重要事項を含むあらゆる提案は社内ウェブに書き込みます。反対意見があればだれでもそこに書き込めますが、特に反対の理由がなければ何も書きません。反対がないイコール賛成とみなして、その提案は提案者によって実行に移されるのです。いちいち会議を開く必要もないので、手間も時間も費用も省かれ、話が早い。「何日間反対がなかったらOK」といった決まりはありませんが、そのあたりは阿吽の呼吸で臨機応変に判断します。緊急の案件なら事後報告でもかまいません。

 あるとき、私は新店舗に適した約2億円の土地を見つけました。土地の取得を社内ウェブで提案したところ、特に反対意見が出なかったので、すんなり購入に至ったことがあります。当社の規模で2億円の投資は、経営に大きな影響を与える金額ですから、もし問題があれば、必ずだれかが反対意見を述べるはずですし、以前にはそうした例もありました。

 会社の経営方針も、社員からの提案も、いつでもだれでも書き込むことができ、だれでも反対意見を述べられる。あいだに中間管理職のような人を介さないので、全社員が即座に、かつ正確に情報を共有し、決定までのスピードも、周知徹底も、とにかく速い。「打てば響く」と言えば、これほど響きが感じられる会社は、そう多くはないのではないでしょうか。

 

全員の給与や賞与も〝丸見え〟

 丸見えにするのは会社の状況だけではありません。社員一人ひとりの評価(人事考課)のほか、給与や賞与をだれがいくらもらっているのかといったことまで、よほどプライバシーに関わることでないかぎり、すべて社内ウェブに掲載され、社員ならだれでも閲覧できます。

 

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。以下、「利益はすべて社員とお客様に還元」「社員がオーナー経営者になる」「あえてつくった『第二創業期』」「価値観が共有できているか」などの内容が続きます。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)


<掲載誌紹介>

 『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』
 2013年9・10月号Vol.13

<読みどころ>
9・10月号の特集は「『打てば響く組織』への挑戦」。 「打てば響く」という句は、もともと太鼓や鉦(かね)をたたけばすぐに音がするように、反応のよい利発な“人”を形容する表現であったが、今では組織の評価を示す際にも一般的に使われる。風通しやコミュニケーションがよく、目標達成に向け統制された行動が取れている組織が、「打てば響く」組織と言えよう。
 本特集では、(1)モチベーション研究のスペシャリスト、(2)弱小高校サッカー部をインターハイ優勝校に育て上げた公立高校の監督、(3)徹底したガラス張り経営で業績を伸ばす経営者――など、さまざまな分野で実績を上げている組織づくりのプロから、そのヒントを学ぶ。
 そのほか、タイで出家した日本人僧が綴る「ほほえみの国 タイから」が連載開始!ぜひお読みいただきたい。

☆おしらせ☆ 当サイトの『PHPビジネスレビュー』紹介ページで、最新号の特集に掲載された全ての記事の冒頭部分をお読みいただけます。ぜひご覧ください。

 

 

BN

iyashi

著者紹介

平本 清(ひらもと・きよし)

21 〈トゥーワン〉 相談役

1950年広島県呉市生まれ。高校卒業後、広島大手のメガネチェーン店に入社し、抜群の売上成績を収める。26歳で本店の副店長に抜擢され、その後商品部長、電算室長などを歴任。やがて社長交代劇に巻き込まれる形で解雇され、86年2月、同時期に退職した先輩社員とともに株式会社メガネの21(現株式会社21)を設立。これまで広島を中心に全国約120店舗を展開。ツルなしメガネ「Fit-mini」や鼻の上に浮くメガネ「Fit-NoPad」、補聴機能付き聴こえるメガネ「Fit-Sound」(開発中)などを自身で開発するとともに、常識では考えられない経営改革を次々と成功させている。

関連記事

編集部のおすすめ

“自立した個”が強いチームをつくる  安芸南高校サッカー部監督 畑喜美夫の挑戦

レポート: 森末祐二 (編集創房・森末企画)

フラット組織に問題あり!  まずはコミュニケーション効率化から

小笹芳央(リンクアンドモチベーション会長)

「成長スイッチ」をONにすれば、すべてがパンッと変わり始める!

古川武士(習慣化コンサルタント)

チーム全員が定時に帰れて結果も出る“リーダーの良い習慣”

佐々木常夫(東レ経営研究所特別顧問)


WEB特別企画<PR>

WEB連載

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

WEB連載

iyashi
  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする

ホーム » 経営・リーダー » 「丸見え経営」が価値観の共有を生んだ