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“サッカー深夜観戦”を乗り切る夜更かしのコツとは

2014年06月11日 公開

梶村尚史(医学博士)

『THE21』2014年6月号より》

医者が教えてくれる「上手な夜更かし術」

2月の冬季オリンピックが記憶に新しいが、もうすぐサッカーのワールドカップが開幕する。国際試合で大変なのが、時差のためリアルタイムで観ようとすると深夜のテレビ観戦になることが多いこと。
そこで、睡眠医学が専門の梶村尚史先生に、なるべく身体に負担をかけずにテレビ観戦と睡眠を両立する秘訣をうかがった。

<取材・構成:前田はるみ/LLUSTRATION:勝山英幸>

 

睡眠のリズムが眠りの質を決める

 いよいよサッカーのワールドカップが始まります。サッカー好きにとっては楽しみな1カ月であると同時に、深夜のテレビ観戦が続く1カ月をどう乗り切ろうかと思案している読者も多いのではないでしょうか。

 ワールドカップに限らず、国際試合における深夜観戦の難しい点は、試合がある日もあればない日もあり、また観戦したい試合の開始時間もバラバラであることです。不親則な睡眠リズムと、慢性的な睡眠不足に陥りやすくなるため、昼間の仕事にも支障が生じかねません。

 では、どのように睡眠を取ればダメージを最小限に抑え、身体に負担をかけずに済むのか。これについてはマニュアルはありませんが、短い睡眠時間でも睡眠の質を高めるには、「睡眠リズムを守る」ことが重要なポイントになるでしょう。

 世の中では、8時間睡眠や早寝早起きが理想の睡眠と言われていたり、また、最近では夜10時~深夜2時の間に睡眠を取らないと成長ホルモンが分泌されず身体が回復しないと言われていますが、これらは個人差もあり必ずしも正しくありません。睡眠の長さや時間帯よりも、重視すべきなのは「眠りの質」です。そして、眠りの質を最も高めるコツが、「何時に起きて、何時に寝る」という睡眠リズムを一定に保つことなのです。

 たとえば、普段は夜11時に寝て7時に起きる人が、ある日、仕事で遅くなり、深夜2時に寝て朝9時に起きたとします。いつもと同じように7時間睡眠を確保したのに、朝起きたとき「まだ寝足りない」と感じるはずです。それは、急に睡眠の時間帯が変わると、他の生理機能のリズムがついていけないからです。

 眠気をもたらすホルモンである「メラトニン」は、朝日を浴びてから約14時間後に分泌され始めます。それと同じタイミングで、体内の熟の発散により「深部体温」(身体の内部の温度)がぐんと下がります。この1、2時間後に眠くなるため、このタイミングでふとんに入ることが深く眠るためには大切です。就寝時間が後ろにずれると、これらのリズムがかみ合わなくなり、深い眠りを得ることができなくなるのです。

 いったんリズムが崩れると、元に戻すことは容易ではありません。翌日またいつものように夜11時に寝ようとしても、難しいのです。

 と言うのも、先ほどもお話ししたとおり、眠くなる時間は朝日を浴びた時間、つまり起床時間で決まります。いつもより遅く起きた日は、いつもの時間にふとんに入ってもすぐに

眠ることはできません。しかも、寝る前の2~3時間は最も覚醒度が高く、眠りにつきにくい時間帯。そういう時間帯に早く寝ようと思っても、逆に目がさえて、寝られないのです。その結果、翌日もスッキリ起きられず、頭がぼんやりして、効率の悪い一日を過ごすことになりかねません。

 それでは、睡眠リズムを崩さないようにするにはどうすればいいのでしょうか。コツは、「起床時間を一定に保つ」ことです。

 仕事で遅くなり、深夜2時に就寝時間がずれ込んだとしても、翌日はいつもどおり7時に起きるようにします。それによって、リズムのズレは軌道修正されます。その日は多少の睡眠不足を感じるかもしれませんが、昼間に仮眠を取るなどしてなんとか乗り切ります。そうすれば、夜はいつもと同じ時間、あるいは少し前に眠気が訪れて、深い眠りにつくことができます。この夜ぐっすり眠ることで、睡眠不足は一気に解消されるでしょう。睡眠で重要なのは長さではなく深さです。「深い眠り」こそ、疲労を溜めず睡眠リズムを守るために大切となります。

 

観戦パターン別 深夜観戦を乗り切る方法

 それでは、「睡眠リズムを崩さない」という考え方をもとに、不規則な日程の探夜のテレビ観戦を乗り切る方法を考えてみます。

 今回のワールドカップの試合日程を見ると、最も注目を集める日本戦は5日に1度行なわれ、さらに比較的観やすい時間です。「とにかく日本戦だけは観たい」という人は、5日に1度のこの日だけ乗り切ればいいことになります。一方で、「他の試合も観たい」「決勝トーナメントはすべて観たい」という人は、ある程度の長丁場の観戦にどう対応するかを考えなければなりません。

 ここでは、「一日対応型」と「長丁場対応型」に分けて、社会人の平均的な睡眠時間帯である「夜11時半就寝、朝6時半起床」のパターンで解説していきます(図3)。また、今回のワールドカップだけでなく、他の国際試合での深夜観戦にも参考になるように、さまざまな時間帯の試合を想定してみました。

 

一日対応型~普段の睡眠時間帯に眠る

 「夜11時半に寝て、朝6時半に起きる」という普段の睡眠リズムを守るために、この時間帯に睡眠を取るようにします。つまり、試合開始前、あるいは終了後にある程度まとまった睡眠時間が取れそうな場合、その時間に眠るようにします。反対に、ひと眠りするには時間が短い場合は、そのまま起きていることをお勧めします。たとえば深夜1時からの試合の場合、11時半にふとんに入ったとしても、試合前の興奮や寝すごす不安などから、すんなり寝つけるとは思えません。このような場合は、試合終了まで起きているのが得策です。もし眠気があれば2時間程度早めに寝てもいいですが、通常、睡眠時間の前倒しは難しいので夜の仮眠が無難でしょう。

 就寝時間が何時になっても、あるいはほとんど眠れなかったとしても、翌日は6時半に起きます。これは必ず守ってください。翌日は昼間に仮眠を取るなどして一日を乗り切り、夜はいつもどおり11時半に就寝。前日の睡眠不足から深い眠りを得られるので疲労の回復も早く、翌日からまた普段のリズムで生活することができます。

 深夜観戦が3~4日連続して続く場合も、「一日対応型」を日数分繰り返すことで乗り切ることができるでしょう。睡眠不足が連続して続いた週の週末は、普段の起床時間から2時間までなら寝坊も問題ありません。ただし、それ以上長く眠ると、睡眠リズムがずれて休み明けがつらくなるため注意が必要です。

 深夜の観戦で眠れなかった日の翌日、半休を取って午前中に寝ようと考える人がいるかもしれませんが、これはお勧めできません。昼まで眠るとその日の夜が眠れなくなり、睡眠リズムが崩れたまま抜け出せなくなります。あくまで起床時間を一定に保つことが大切です。

 

長丁場対応型~睡眠時間帯を大幅にシフト

 深夜観戦が1週間以上続く場合は、睡眠時間を大幅にシフトさせ、観戦期間中はその睡眠リズムを守るという方法がお勧めです。

 深夜から朝にかけて不規則なスケジュールで試合がある場合、就寝時間を普段よりぐんと早め、たとえば夜7時に寝て深夜1時に起きる生活に変えます。試合開始時間が何時でも、また試合がなくても、この睡眠リズムは守り、寝坊は週2回程度にとどめること。そうすることで、ひどい睡眠不足や疲労を感じることなく深夜観戦を続けられるでしょう。

 睡眠時間帯は、試合が始まるおよそ1週間前から段階的に早めていきます。うまくシフトさせるには、起床時間を早めていけば無理なくリズムを変えることができます。通常の6時半から始まって、5時半、4時半……と1時間ずつ早めていけば、1週間後には深夜1時起床のリズムに持っていくことができるでしょう。

 また、試合期間が終わって通常のリズムに戻す場合は、就寝時間を遅らせていけば、比較的楽に元に戻すことができます。

 「睡眠リズムを守る」ことが身体に負担をかけないための基本。自分なりの睡眠リズムを作り、試合観戦を存分に楽しんでください。

 

梶村尚史

(かじむら・なおふみ)

医学博士

1955年、宮崎県生まれ。1981年、山口大学医学部卒業。1990年より、国立精神・神経センター武蔵病院勤務。アメリカ国立精神保鍵研究所(NIMH)への留学を経て、国立精神神経センター武蔵病院精神科医長。2003年、むさしクリニック開院,同年より杏林大学医学部非常勤講師。専門は精神医学、睡眠医学、時間生物学。睡眠医療認定医。

著書に、『「朝がつらい」がなくなる本』(三笠書房)、『快眠ハンドブックj(PHP研究所)、『毎朝スッキリ起きる技術』(監修・光文社)など。

iyashi

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