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松下幸之助が考えていた「電話の経営効果」とは

PHP研究所経営理念研究本部

2014年07月09日 公開 2022年12月15日 更新

特設サイト『松下幸之助.com』今月の「松下幸之助」 より一部を抜粋》

 

松下幸之助と電話

LINEなどメッセージアプリの参入により、熾烈な競争を繰り広げつつ、ますます進化し続ける電気通信事業――。松下幸之助が生きた時代の最新の情報伝達手段といえば、固定電話でした。

「オイ、えらいこっちゃぞ、電話で注文がきたぞ」。創業初期の大正9年、ようやく架設された電話の第一鈴の注文を聞いて喜んだ松下幸之助の声です。その頃は、多数に一斉送信できるEメールなどあるはずもなく、最新の情報伝達手段といえば、普及が急速に進みつつあった固定電話でした。電話があるかないかが「店なり工場なりのある程度信用の尺度ともなっていた」時代であり、松下も自社工場に電話を設置できたとき、「これでまったく一人前の工場になった」と思って、電話開設の広告葉書を「威勢よく各取引先へ発送」したといいます。その電話の経営効果について、松下はこう記しています。

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 私が町工場をやっている時分に、電話が引けたのです。それで、それまで仕入先にとんでいったりしていたのが、もう電話ですむようになった、非常に便利になった、ということでよろこんだのです。

 そこで私は考えました。電話が引けたために人ひとりは省けるはずだ。たんに便利がよくなったというだけではいけない。電話一本引くことによって設備費が五百円かかったとすれば、それを活用してそれ以上の利益を上げなければいけない。そうでなければ電話の価値がない、ということを、私はその時考えたのです。電話が引けて便利だからいっぱい注文しようかといって、うどんをとって食べていたのではなんにもならないわけです。そうなると、便利なものがかえって経費を多くするということになってしまいます。極端にいうと、そんなことも考えてやったわけです。電話が三本引けたらいままで以上に利益が上がる、五本になればさらに利益が上がってくる、すべて私はこうなると思うのです。(中略)

 こういう見方で、ものごとを地についてやっていったら、いろいろな点で能率が上がると思うのです。新しい機械を入れる、新しい装置をとりつける、乗り物も便利になった、というふうになれば、無限に利潤と申しますか、そういうものが出てくるわけです。世の中が進めば進むほど賃金が上がって物価が下がっていく。こういうことが原則だと思うのです。ところが、そういう便利なものができ、世の中は進歩しているのに、物価は上がっていく。賃金も上がってはいくが、そう大きな差はないという状態は、機械なり設備なりを効率的に使うことを怠っているからではないかと思うのです。そういうところから、税金も下がらないということになろうかと思うのです。私は、われわれの経営体においても、そういうことがさらに要求される時代が来るだろうと思います。また政治の機構においても、そういうことが考えられるのではないかと思うのです。
(松下幸之助著『一日本人としての私のねがい』より)

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電話一つから経営、さらに政治・経済にまで発想を拡げていくところに松下らしさが感じられます。Eメールやソーシャル・メディアが一般に普及した現代に松下が生きたなら、どんな使い方をし、どのような話をしたのか……、たいへん興味深いところですが、ともあれ、当時の“最新武器”である電話を自らの仕事において最大限活用していたことは間違いありません。会議中に商品について気になる問題を耳にするや否や、その管轄の事業部長に電話する。いなければその下の担当責任者の声を聞こうとする。また、仕事を終えて、夜になっても、気になることが発生すれば、秘書や部下に電話をして確認する。それはせっかちな性分が幾分あったとしても、やはり仕事への真剣さ、熱心さがなせる業だったといえるでしょう。

 

★記事の全文については 特設サイト「松下幸之助.com」でご覧ください。

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