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脳番地で脳力強化(2)脳番地を鍛えるトレーニング

加藤俊徳(脳内科医/医学博士)

2014年07月10日 公開 2023年01月12日 更新

運動系脳番地トレーニング

階段を1段とばしで下りてみる
普段の何気ない運動に変化をつけることでも、運動系脳番地を鍛えることができる。たとえば階段を上がる際、「1段とばし」で上がると、普段は使わない注意力が必要になるため、脳が新鮮な刺激を受ける。また、1段とばしで下りるのはさらに効果的。下りる際にはより注意が必要なので、そのぶん多くの運動系脳番地を働かせることになる。

利き手と反対の手で歯磨きをする
運動系脳番地では、手や足、口など体の各部分の動きをつかさどる番地が分かれている。手の器用さや足腰の強さは個別に鍛えれば強化できるが、意外と忘れがちなのが、口と舌の動き。そこで取り入れたいのが、利き手と反対の手で歯磨きをするというトレーニング。手と口の番地を同時に使い、脳に新鮮な刺激を与えることができる。

 

聴覚系脳番地トレーニング

ニュースを見ながらアナウンサーの言葉を繰り返す
聴いたことを正確に反芻することで、聴覚系脳番地への刺激になる。初めはうまくいかなくても、回数をこなすうちに、一度聴いただけで正確にリピートできるようになるはず。この作業を繰り返していると、やがて「聴いた内容を正確に覚える」という行為が脳のなかで習慣化されていき、一度聴いただけでも自然と人の話が覚えられる回路ができてくる。

あいづちのバリエーションを増やす
ワンパターンになりがちなあいづちを、意識的に使い分ける。たとえば、相手に同意する際に、「そうですね!」と全面的に賛成のニュアンスと、「まあ、そうですね……」と腑に落ちない感じを使い分けたりしてみる。そのためには、相手の話にきちんと耳を傾け、話の細部まで理解する必要がある。相手の話に集中する意識が、聴覚系脳番地を活性化する。

 

視覚系脳番地トレーニング

電車の中から外の看板を見て、数字の「5」を探す
視覚系脳番地を鍛えるには、電車のなかから外の景色を眺めるのが効果的。動体視力を養うことにもなる。ただ単に窓の外を眺めるだけでは飽きてしまうので、「看板のなかから数字の「5」を見つけよう」というようにテーマを設定するとよい。目的を設定することで、脳は外の景色から何とか「5」を探し出そうとするので、視覚系脳番地の機能強化につながる。

オセロの対戦中に白と黒を交代する
オセロの対戦途中で「攻め」と「守り」を変える、つまり「白」と「黒」を入れ替えることで、脳は自分が新たに置かれた状況を必死で把握し、打つ手を探そうとする。これにより、目で見た状況を分析し、適切な判断を下す能力を養うことができる。この訓練は、もちろん思考系脳番地への刺激にもなるが、目で見た情報をいかに処理するかという点で、視覚系の思考を鍛えることにつながるのだ。

 

記憶系脳番地トレーニング

お互いに無関係な知り合いの「共通点」を探す
知人や友人のなかから無作為に2人を選び、その人たちの共通点を探る。なるべく2人の類似点を少なくするために、自分と関わった場所や時期が異なる人を選ぶとよい。血液型や出身地、年齢、性格、好みなど、2人の記憶をたぐり寄せながら、さまざまな項目を比較していく。このプロセスが記憶系脳番地を大いに刺激することになるのだ。

その日の「ベスト発言/ワースト発言」を選んでみる
1日の終わりに記憶をたどって、その日の自分の発言から「ベスト発言」と「ワースト発言」を選ぶ。ランクづけすることで、自分がその日どんな発言をしたのか改めて確認することができる。また、発言したときの相手の反応も合わせて思い出すことで、言葉の記憶だけでなく映像記憶も呼び出すことになり、記憶系脳番地がいっそう活性化される。

 

加藤俊徳
かとう・としのり
医師・医学博士、「脳の学校」代表
1961年、新潟県生まれ。加藤プラチナクリニック院長。14歳のときに。「脳を鍛える方法」を探そうと、医学部への進学を決意する。昭和大学医学部、同大大学院を卒業後、1991年、国立精神・神経センターにて脳機能を光計測するNIRS原理を発見。1995年より、アメリカ・ミネソタ大学放射線科MR研究センターに研究員として在籍。臨床珍療の経験を生かし、胎児から100歳を超えるお年寄りまで1万人以上の脳画像を分析してきた。帰国後慶應義塾大学、東京大学などで脳の研究に従事しながら、MRI脳画像珍断のスペシャリストとして活躍。2006年、(株)「脳の学校」を立ち上げ、脳酸素を計測するCOEやMRI技術を使って脳の「個性」の鑑定を行なっている。著書に『脳の強化書』(あさ出版)など。


<掲載誌紹介>

2014年7月号

「知っているか、知らないか」ではなく、「考えられるか、考えられないか」。答えが用意されていないビジネスの世界で求められるのは、自ら問いを立てて、アイデアを考えたり、判断することです。そして、そのベースになるのが“地頭の良さ”です。
今月号では、どうすれば地頭が鍛えられるのかについて、実績あるプロフェッショナルに教えていただきました。

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