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地方創生と大学の役割~「L型大学」に舵を切れ

2014年11月26日 公開

荒田英知(政策シンクタンク PHP総研 主席研究員)

政策シンクタンクPHP総研 研究員コラムより》

 

 秋の臨時国会の目玉とされた、地方創生法案が解散間際に成立しました。今後、国は50年後に総人口1億人を維持するための「長期ビジョン」と、それを実現するための向こう5年間の「総合戦略」を明らかにする予定です。

 そして、来年度には全国の都道府県と市町村に対して「人口ビジョン」と「総合戦略」の策定を努力義務として求めていきます。地域活性化という古くて新しい課題に、今回の地方創生がどれだけ実効をあげることができるかは、地方自治体側の取り組みが本格化するこれからが正念場と言えそうです。

 さて、地方創生は自治体にとって待ったなしの課題であるのと同時に、地域に立地する大学に対しても意識転換を促しています。現在、わが国には国立86校、公立86校、私立603校の775大学がありますが、そのうち約6割は、東京、神奈川、愛知、京都、大阪以外にあります。これらすべての大学がCOE(センター・オブ・エクセレンス)としての研究成果を上げ続けることは現実的ではありません。

 社会変革プラットホーム「変える力」の特集「地方創生はこうして進めよ」(2014/10/9)で、筆者は経営共創基盤CEOの冨山和彦氏と対談しました。冨山氏の持論は、いまや日本企業はG(グローバル)型とL(ローカル)型に峻別が進んでおり、地域経済の活性化にはGDPの7割を占めるL型企業の新陳代謝が欠かせないというものです。

 対談では、GとLのコンセプトについては大学にも適用可能という点で意見が一致しました。今後は、一握りのG型志向の大学を除いては、L型へのシフトを進めるべきで、端的にいえば職業訓練校化するくらいの大転換が求められると冨山氏は言います。学生数の減少が顕在化する「2018年問題」が目の前に迫り、時間の猶予はありません。

 職業訓練校と言いきってしまうと反論も出てきそうですが、すでに一部の大学ではそうした取り組みの端緒も見られます。それを後押ししているのが、文部科学省が平成25年度から始めた「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」です。これは、大学が自治体等と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進めることにより、地域コミュニティの中核的存在(センター・オブ・コミュニティ)として機能強化を図り、地域再生・活性化の拠点になろうというものです。平成25年度には52校、26年度は25校が採択を受けています。

 筆者は2年にわたりその選考委員を務めました。率直な感想を述べれば、地域志向という新しいコンセプトを全学的に共有できているかについては、採択大学の中にも温度差が見られます。しかし中には、「L型大学」に先鞭をつけるような事業も散見されます。

 その1つ、長岡大学(新潟県)では「創造人材養成プログラム」を掲げて、卒業生の6割が実社会で使える専門資格(簿記1、2級、販売士1、2級など)を取得することをカリキュラムに位置づけました。また、弘前大学(青森県)では、「青森ブランドの価値を創る地域人材の育成」をテーマに、地域志向科目の科目数と履修者数を大幅に増加させ、県内就職希望率を現在の37%から50%に上げることを目標にしています。

 これまでも、大学は地域の知的資源として自治体や地場産業との連携が模索されてきましたが、大きな成果を上げたと評価される例はごく一部にとどまっていました。島根大学では、「課題解決型教育による地域協創型人材育成」をテーマに、地元の複数の自治体との連携をこれまでになく深化させようとしており、その成果が注目されます。

 「地(知)の拠点整備事業」は来年度も継続される見込みで、「グローカル化貢献型」「地元とどまり促進型」「地域コミュニティ再生型」など、支援テーマを明確化することで地方創生につなげたい考えです。

 L型大学への転換はまだ緒に就いたばかりですが、大学という知的資源を地域のためにフル活用しない手はありません。地方創生が具体化する中で、新たな取り組みが次々と誕生することを期待したいと思います。

<研究員プロフィール:荒田英知☆外部リンク

 

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