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部下に仕事を振って“暇”になった管理職…目を向けるべきは「自分の成長」

山本真司(経営コンサルタント)

2012年10月10日 公開 2022年11月14日 更新

 

本当にやるべきは、自分が成長し続けるための活動

最後の結論は、「部下のできない仕事をする」という次元を超えた、もっと抽象度の高いものになった。若干格好良過ぎるが、「自分が成長を続けること」というのが、自分の追い求めているものであることがわかってきた。

だから、その時々でどんなテーマを選んでも良い。業界経験も長くなってきてシニアの仲間入りをした私だったが、知らないこと、わからないこと、新しく、面白いと思ったこと、そして、自分の成長に資することは、何でもやろうとした。

いまでも私は、時間が余る方法を毎日模索している。自分が学び、成長できそうな面白いことが世の中には、ゴマンとあることがわかったからだ。

手がけたものもたくさんあった。自分の経営観を文章にまとめて、業界誌に発表することも意識的に多くするようにした。昔からこういう記事書きには関心があって、合間を見てやっていたが、「仕組み」仕事術を確立するまでは、ドッシリと取り組むことはできなかった。

こうした経験が、だんだん、私に文章を書くという新しいスキルを身につけさせてくれ、そこそこの冊数を書いてしまった。

こういう経験は、部下に語る新しい素材として還流する。起承転結の修練を編集者さんから徹底的に鍛えられ、まえがきの意味、あとがきの目的まで、手取り足取り教えてもらった。

だから同じように、部下の記事、論文書きを指導できた。また、自分で請け負ってきた記事・論文の寄稿を、部下と一緒に発表するようになってきた。自分の仕事で一緒に取り組んでいる分野について、すこし目を離して斜めに見る体験は、明らかに私と部下の目線を変えていってくれた。

だんだんと、部下達と定期的に合宿の勉強会をしたり、通常仕事にアドオンして、講演会、寄稿、出版などをやるようになってきた。手伝ってくれる部下のやる気がみなぎるのは、見ていてわかった。それだけでなく、部下が能力的にも一段上にシフトするのを感じた。

「これだ」と思った。部下は私が休みなく成長していこうという姿勢を見ている。私が本当に伝えるべきは、そのことなんだな、と思った。だからそれ以来、一見スットンキョウな目標をぶちあげて、ドン・キホーテさながらに、良くわからないものに立ち向かってみたりもした。

それが、自分の部下の、そして組織の成長のためになるという確信をもつに至った。目が内に向かない。外に向く。いろいろな人が新しい視点を、それも外からうけた刺激を持ち寄る。

私も、そういう声に接するたびに、「まだ修行が足りない」という思いを強くした。そしてまた、新しい分野の勉強に邁進した。自分を成長させるために。「永続的自己成長」のマインドが芽生えたのである。

 

【PROFILE】山本真司(やまもと・しんじ)

経営戦略コンサルタント。1958年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、株式会社東京銀行入行、シカゴ大学経営大学院にて修士号(MBA wit honors、全米成績優秀者協会会員)取得。1990年、ボストン・コンサルティング・グループ東京事務所入社。A.T.カーニー東京事務所マネージング・ディレクター・極東アジア共同代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを歴任。20年以上の経営戦略コンサルティング経験。現在、株式会社山本真司事務所代表取締役、立命館大学経営大学院客員教授(戦略コンサルティング論)、静岡県サッカー協会評議員、慶應義塾大学大学院・早稲田大学大学院(スポーツ・ビジネス論)非常勤講師などとして活動中。

 

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