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「婚活なき結婚」はありえない時代

白川桃子(ジャーナリスト/ライター)

2011年05月23日 公開 2022年08月22日 更新

「婚活なき結婚」はありえない時代

「なぜ婚活(結婚活動)しないと結婚できない時代なのか?」

 地方自治体などの依頼で、私がこういったテーマで講演をすると、聴衆の半分は、婚活中の独身の方々ではなく、そのご両親世代です。ご両親世代にとっては、「私たちが当たり前にしてきたことが、なぜ自分の優秀な娘や息子にはできないのか?」と、とても不思議なのです。

 なぜ、「当たり前のこと」ができないのか?

 それは、現代では結婚が「当たり前のこと」ではなくなったからです。

 自分の選択のうえで、結婚したいと思う人は結婚のための努力をする――これが「婚活」の本来の意味です。決して「合コンに参加」したり、「結婚相談所にエントリーする」ということではありません。

「自分の相手は、長い時間をかけて恋愛をしながら、自分で探す」という、欧米では当たり前のことが、いま日本でもやっと始まったのです。

「出会いのシステム」の崩壊

「みなさまはどうやって結婚したのでしょうか。運命の出会いに導かれて? 自然の成り行き?」

 講演のときには必ず、独身の方にはご両親の出会いについて、親御さんには自分の出会いについて、聞いてみます。そうすると、「お見合い」「職場結婚」「学生時代からのつき合い」の三種類がほとんど。身近な縁のなかで結婚されています。

 親世代の若いころは、真面目に働いている人なら、誰かが縁談をもってきてくれました。また職場では、「女性は男性のお嫁さん候補」として採用され、「会社のバス旅行は独身同士が隣り合わせに座るようにされていた」という話も聞くくらい、会社は社内結婚を勧めていました。会社での出会いは一見、恋愛のようにみえて、会社が世話してくれる「集団お見合い」のようなものだったのです。

 つまり、親世代には「設定された出会い」があった。地域が、会社が、結婚の世話を焼いてくれたのです。

 しかし、いまの独身者には、誰も見合い話をもってきてはくれません。会社側も、女性を「お嫁さん候補」としてではなく、男性のライバルにもなりうる「働く女性」として採用します。また、セクハラや、職場の人間関係の問題もあって、男女とも「社内恋愛はイヤ」という人が増えている。過去30年間の初婚率の低下は、約5割が「見合い結婚の減少」によって、約4割近くが「職縁結婚の減少」によって説明できます。

 またかつては、出会いに加えて、結婚への背中を押してくれるいくつかの要因がありました。

 まず、「つき合ったら、必ず結婚するもの」という周囲からのプレッシャーです。とくに社内恋愛は、なるべく秘密に行なっても、どこからかバレてしまうもの。そこで結婚しないと大騒ぎになってしまうほど、「恋愛=結婚」が直結していました。しかしいまは、社内でつき合っても結婚しない人が多い。「恋愛=結婚」の方程式は、もはや成り立ちません。

 また以前は、年齢も背中を押す大きな要因でした。「クリスマスケーキ」「大晦日」――かつては女性の24歳、29歳をこう例えたものです。

 しかしいまや、年齢に押された結婚もほとんどなくなりました。「何歳だから結婚する」というよりも、「理想の相手に出会ったら結婚する」という意識のほうが強い。げんにいま、40代、50代も婚活の第一線にいますし、再婚などのため60代以上の方々の婚活も盛んです。

 かつて結婚が「当たり前」にできたのは、狭い地域や会社という「釣り堀」のなかで糸を垂らしているようなものだったから。「釣り堀」がなくなってしまえば、広い広い大海に出て、釣りをしなくてはいけません。広大な海のなかで自分にピッタリの魚を探すのは、とても難しい。それが現代の結婚の難しさなのです。

 日本に存在した、地域や会社に「のっていけば結婚できる」ベルトコンベアーのような便利なシステムは崩壊してしまった。会社と家の往復だけでも結婚できたのは1980年代まで。結婚したければ自分で動く。これが「婚活時代」なのです。

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