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ランキング情報に頼らない病院選び

小林修三(湘南鎌倉総合病院院長代行/昭和音楽大学客員教授)

2015年06月25日 公開 2023年02月02日 更新

ランキング情報に頼らない病院選び

※本稿は、小林修三 著『間違いだらけの病院選び』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

ランキングは患者にとって有用な情報か

医療というのは、不確実な上にやり直しがきかない。だからこそ、入院や手術を必要とするような大きな病気にかかったときの病院選び、医師選びは、非常に重要だ。

巷には「いい病院」のランキングを紹介する書籍や雑誌、主な病気ごとのおすすめの医師を紹介する書籍などが溢れている。毎年のように更新されているので、手にしたことがある人は多いだろう。しかし、これらは本当に有用なのだろうか。

私自身も病院経営を考える立場として、そうした情報には一応目を通す。自分の病院がどう評価されているのか、同じ地域の同じような機能の病院ではどこが高く評価されているのかはやはり気になるし、どんな項目で評価しているのかも気になるからだ。

おそらく医療関係者はみなそうだろうと思うが、細かい評価項目を見ると、「なるほど」と思うものもあれば、「うーん」と首を傾かしげたくなるものもある。

 

医師自身がかかりたいと思う名医

ランキング形式で病院を紹介する本とは別に、『医師がすすめる○○な病院』『医師がすすめる名医』など、医師にアンケートを取って評判の良い病院や医師を紹介する本もある。

医師に「あなたやあなたの家族が病気になったら、どこを紹介しますか?」と聞いて、結果を集計し、複数の票が入った病院、医師を掲載するというもの。医師同士であれば、「心臓の手術は○○先生だな」「腎臓病といえば、△△病院の□□先生だな」と、わかっているものだ。

病院ランキングは、施設としての評価だが、こうした「医師がすすめる~」タイプの本は、医師から評判の良い医師を探すのに役立つ。両方を見比べると、いいだろう。

また、同じようなアンケートを自分でしてみるという手もある。

つまり、かかりつけ医に、「心臓の手術を受けることになったんですけれど、この地域で評判のいい病院ってどこですか?」「一度専門医にかかりたいんですけれど、いい先生をご存知ですか?」などと聞いてみるということ。

地域の開業医の先生方は、普段から患者さんを専門医に紹介しているし、地域の医療事情には詳しいはずだから。

 

メディアで活躍する“有名な先生”の落とし穴

そのほか、主な病気ごとに"名医"を紹介する書籍や、「名医に聞く○○治療」などと銘打って、各領域の"名医"が登場する書籍もある。また最近では、テレビをつけると毎日のように健康や医療に関する番組をやっていて、そこにも「名医」「スーパードクター」「神の手」と称される医師たちが登場する。

そうしたメディア情報を頼りに、「あの雑誌で紹介されていた△△先生にかかりたい」「テレビに出ていたあの先生に手術してほしい」という患者さんも多いだろう。

そうした有名な先生たちというのは、本当にその領域の「名医」なのだろうか?

テレビによく登場する先生というのは、いくつかの共通点がある。まず、話がうまいということ。テレビという限られた枠のなかで、コンパクトにわかりやすい説明をできるか。とっさに気の利き、いた返しができる瞬発力を持っているか。

また、当たり前の話ではなく、視聴者の興味をそそるようなユニークな話を持っているかどうかも、テレビでは求められるだろう。書いた書籍がベストセラーになって、テレビにも引っ張りだこという先生もいる。

さらに、テレビの健康・医療番組を見ていると、よく見かける先生たちが同じ大学、あるいは同じ病院だったりする。じつは、広報がうまい大学、病院というのもある。

テレビに登場すればやはり反響が大きいので、イメージアップのために広報に力を入れている大学、病院では、「こんな先生がいますよ」「こんな最先端の治療をやっていますよ」と、コンスタントに情報を提供していることがある。だから、テレビに呼ばれやすい。

と、ここまでは民放各局の話で、NHKはというと、セレクトの方法がちょっと違う。NHKの番組で医師を登場させるときには、じつは学会を通じて呼ぶことが多い。学会の広報に頼んで、学会の理事や広報委員会の先生に登場してもらう。

NHKらしい、まっとうな方法だけれども、果たして、学会がその領域において特に長たけている先生を選んでくるかどうかはわからない。でも、学会を代表して登場しているわけだから、間違いのない人選と思われる。

というふうに、民放のテレビ番組にしてもNHKの番組にしても、テレビによく出ているからといって、必ずしもその領域でトップレベルの医師とは限らないし、その先生にかかれば最高の医療が受けられるという保証もない。

かといって、メディアへの露出が多い先生のなかにも、優れた先生がいることも確か。結局のところ、テレビを見て病院や医師を選ぶというのは、いいとも悪いとも言いがたいというのが本音だ。

ちなみに、有名人が集まる病院というのもあるが、「有名人が行っているから、いい病院」とは限らない。有名人をたくさん集めることで、名を知られるようになった病院もある。

そのなかには、有名になった段階では、中身は伴っていなかったものの、有名になったことをきっかけに改善して、今ではいい医療をするようになった病院もあれば、「有名人が来る」ということにあぐらをかいて、改善しようという努力をしない病院もある。

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「肩書き」と「腕の良さ」は比例しない

著者紹介

小林修三(こばやし・しゅうぞう)

内科医、医学博士、湘南鎌倉総合病院副院長、腎臓病総合医療センター長

1955年、大阪市生まれ。1980年、浜松医科大学卒業(一期生)。同大学第一内科入局。1981年、浜松赤十字病院勤務。1987年、文部教官第一内科助手。1988年、テキサス大学サンアントニオ校 病理学客員講師。1990年、浜松医科大学第一内科助手に復職。1992年、NTT伊豆逓信病院内科部長。1998年、防衛医科大学校第2内科講師。1999年より現職。
著書に『ベートーベン・ブラームス・モーツァルト その音楽と病』(医薬ジャーナル社)などがある。

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