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カリスマ経営者がやっている「全体思考法」とは

2015年07月07日 公開

山本真司(コンサルタント)

《PHPビジネス新書『実力派たちの成長戦略』より》

全体を見て直観で考える

 

カリスマ経営者の思考法

 論理的思考の対極に、カリスマ的な経営者の思考法がある。彼らは、本当に強い会社を作り、成長させ続けている。そういう経営者は独自の経営哲学を打ちたて、経験を積み重ね、その検証を行なうことで進化させ、かつ社員の心をつかんで動かす経営を貫く。ITバブル崩壊、リーマン・ショックにも耐えた。

 典型的なカリスマ経営者の思考方式とはどういったものだろうか? 私も数人のカリスマ経営者とおつき合いがある。そういう経営者に共通する特性は、(1)徹底した現場主義、現場を観察しようという強い意欲と行動、(2)常に全体を考える広角思考、多面的に考えるための好奇心の強さ、(3)社員へのコミュニケーションを可能にする強烈で際立った個性という3つであるように思う。

 

全体思考法のススメ=全体を全体のまま観察し、直観で考える

 科学的合理主義では、全体を全体のままに観察することが妨げられる。全体を部分に分けて、その部分を検討するのである。機械や物質の世界にはこの考え方を適用できる。

 しかし、人間の精神を部分に分けることはできない。どんな部分を切り出しても、その部分はその部分だけでなく、全体ともかかわりをもっている。かつ、その連関のルートは明確ではない。どんな科学も、そのルートを明らかにする原理を発見してはいない。

 したがって、人間がかかわる経営やビジネス、ましてや自分の人生については、全体を切り分けないで、ありのままに観察する必要がある。そのためには、現場を生の姿で観察しなければ意味がない。そして論理、すなわち因数分解と因果関係の手順によらず、直観で課題を発見する。

 全体を見て直観で考える思考法を「全体思考法」と名づける。それはカリスマ経営者、熟練の神職人の思考法である。

 

全体思考法の欠点

 全体思考法は強力な思考法ではあるものの、欠点も多い思考法である。

 第一に、自然体で全体思考法をマスターできる人間は稀にしか現れない。また、そういう人間をシステマティックに育てる技法も確立していない。そういう定型化しにくい思考法であるがゆえに、人々に伝播しにくい。カリスマ職人の引退で混乱する生産現場の話を思い出してほしい。

 もう1つの大きな欠点は、なぜそういう結論に至ったかを他人に説明できないことである。だからカリスマでなければならないのだ。こういうリーダーの直観的結論に理屈抜きで反応してくれる信者が必要なのである。「なぜ?」という疑問は差し挟んではならない。差し挟んだとしても納得できる答えは得られない。出てきた答えがピンとくるかどうかだけの判断を求められる。

 手法のみならず、思考のプロセスも伝播できず、結論しか伝えられない。したがって、そういうリーダーには、理屈抜きでコミュニケーションできる環境を醸成する強烈な個性が求められるのである。そしてカリスマ経営者は、結果としてワンマンにならざるを得ないというリスクを抱える。

 つまるところ、法則性が明らかにならないところに全体思考法の欠点があるのだ。

 

全体思考法のすごみ

 しかし、全体思考法の優位な点は数多い。(1)有能な人の手にかかれば、論理的思考法よりもはるかに正しく現実的な回答が得られる、(2)創造的な回答が得られる、(3)他人と自分の心に訴える回答を導き出せる、というように論理的思考法の限界をことごとく打ち破る利点を有している。

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iyashi

著者紹介

山本真司(やまもと・しんじ)

経営コンサルタント、〔株〕山本真司事務所代表取締役

1958 年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)勤務。シカゴ大学経営大学院(ブースビジネススクール)修士。名誉MBA (MBA with honors) 取得、ベータ・ガンマ・シグマ(全米成績優秀者協会)会員。1990 年にボストン・コンサルティング・グループ東京事務所に転じる。以降、A.T. カーニーマネージング・ディレクター極東アジア共同代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを経て2009 年に独立。現在、株式会社山本真司事務所、パッション・アンド・エナジー・パートナーズ株式会社代表取締役、立命館大学経営大学院客員教授、慶應義塾大学健康マネジメント大学院非常勤講師などを務める。
著書に、『会社を変える戦略』(講談社)、『儲かる銀行をつくる』(東洋経済新報社)、『40 歳からの仕事術』(新潮社)、『35 歳からの「脱・頑張り」仕事術』(PHP研究所)、共著に『ビジネスで大事なことはマンチェスター・ユナイテッドが教えてくれる』(広瀬一郎氏との共著、近代セールス社)など多数。

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