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<お客様の心をつかむ>でんかのヤマグチ 商売とは長く愛され続けること

2015年11月02日 公開

山口勉(でんかのヤマグチ社長)

《隔月刊誌『PHP松下幸之助塾』[特集:お客様の心をつかむ]より》

 

小さな電器店の脱「安売り」経営

 東京都町田市で50年間営業を続ける家電販売店・でんかのヤマグチ。従業員46名の「街の電器屋さん」が、注目を浴びている。大手家電量販店と比べて15パーセント以上も高い粗利率を確保する「高売り」。家電修理のような「表のサービス」以外にも、頼まれればどんなことでもやる「裏サービス」――。お客様と社員のために考え出された特異な戦略と、その背景にある理念について、社長の山口勉氏に聞いた。

山口勉(やまぐち つとむ)
でんかのヤマグチ社長。1942年東京都生まれ。松下通信工業(当時)勤務後、’65年に町田市で「でんかのヤマグチ」を創業。’90年代後半、大手量販店の進出を受け、高付加価値のサービスを提供する経営へ転換。著書に『なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?』(日経BP社)などがある。

〈取材・構成 唐仁原俊博/写真撮影:山口結子〉

 

地域密着で歩んだ50年。量販店の進出が転機に

 私が東京都町田市に、でんかのヤマグチをオープンしたのが1965(昭和40)年のことです。最初は商売についてはまったく分かりませんでしたが、一所懸命働いて、地域のお客様にヤマグチのファンになっていただけるよう、さまざまな工夫をこらしました。

 一目見て分かるように営業車をシマウマ柄にしたのは35年ぐらい前のこと。また、お客様がお店に立ち寄る機会をつくるため、毎週末のイベントを30年以上続けています。小さな工夫を積み重ねた結果、ありがたいことに今年の5月、ヤマグチは創業50周年を迎えました。

 もちろん、その工夫の中には、売値を高く設定する「高売り」と、電器店の仕事の範疇を超えてでも、お客様に望まれることなら何でもする「裏サービス」も含まれます。ちょっとあやしい名前に反して、最近は感動的なエピソードとともに紹介されるようになった「裏サービス」。しかし、これは単なる無償の奉仕ではありません。会社が生き残るために始めたことです。

 それを説明するには、50年の歴史の中でもいちばんの転換点である、1996(平成8)年以降の話をする必要があります。その年から大型電器量販店が続々と町田市に進出してきたのです。私たちの店舗から1キロのところに3店、1.5キロのところに2店、そして車で10分ほどの町田駅前に1店。わずか3年ほどで、周りに6店舗もの量販店が出店。私たちのように規模の小さな家電販売店はどんどん売り上げを落としていきます。

 

「高売り」を決めたのは、社員を守るため

 このままでは商売が続かない。対策を取らなければ。そのとき、近隣の多くの店は、量販店の価格に対抗するように、商品の値段を下げました。流されるように、ヤマグチでも安売りを開始します。

 今でもそうですが、街の電器屋さんは家族経営のところがたくさんあります。そういうお店では安売りをして利益率が下がったとしても、修理や工事をコツコツしたり、社長、つまりお父さんの給料を減らしたりすれば、なんとか対応することができます。しかしそれは一時しのぎにすぎません。めざすべきは、以前と変わらない利益をどうにかして確保することのはず。安売りでそれが可能でしょうか。

 資金力がまるで違う量販店と商品の値段で争っても、小さな販売店が勝てるわけがないのです。量販店進出により、ヤマグチの売り上げは3割以上落ち込むだろうというのが私の予測でした。安売りによって売り上げ減少を多少抑えることができたとして、同じ利益を確保するためには、その分商品を多く売らなければいけません。しかし、それは現実的ではない。

 また、ヤマグチは50名弱の社員を抱えていましたから、家族経営の店のように私の給料をカットすればいいというものでもありません。つまり、現状の売り上げを維持するためには、安売りをしてもだめ。結局、半年も経たないうちに、安売り路線には見切りをつけることになりました。

 では人件費削減のためにリストラを断行したのか。もちろんそんなこともありません。私が考えていたのは、まったく逆のことです。頭の中は、社員を守るということでいっぱいでした。彼らを路頭に迷わすことはできません。それに、社員一人を採用するのに、だいたい100万円以上のお金をかけていました。せっかく来てくれた優秀な人材をリストラすることになれば取り返しがつかない。そもそも規模の小さな会社ですから、うちに来たいと思ってくれる人が大勢いるわけではないという事情もあります。

 どうするべきか悩んだ結果、私は粗利率を上げるという答えを見つけます。売り上げが減少しても、その分粗利率を上げれば、同じだけの利益を確保することができます。20年前、量販店の粗利率は15~16パーセント、街の電器店の粗利率は25~26パーセント程度でした。私はヤマグチを粗利率35パーセントの会社にするという目標を掲げます。

 社員をリストラするつもりはありませんし、仕入れ値を安くできるわけでもありません。そんな状況で粗利率を上げるためには、売値を上げる以外に方法はありません。ヤマグチの代名詞の一つとなる「高売り」を決めた瞬間です。

 

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。以下、「顧客を3分の1に絞りお客様満足を追求」「お客様の幸せが社員の幸せになった」「根強いファンがいても慢心しない理由」などの内容が続きます。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。

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