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日本はゴジラの東京湾上陸を阻止できるか?

未来防衛研究所

2016年09月08日 公開 2016年09月13日 更新

日本はゴジラの東京湾上陸を阻止できるか?

災害大国ニッポンにおける守りのかなめ「自衛隊」。彼らは日本を守るため、日々鍛練と技術革新に挑んでいる。そんな彼らが守る首都・東京に、もしゴジラのような“怪獣”が襲い掛かったら……。
本書『自衛隊対ゴジラ』(高橋信之企画、未来防衛研究所著)は、こうした危機的状況を想定し、自衛隊の防衛力を徹底的にシミュレートした戦略防衛解説書である。ここでは、もしゴジラのような怪獣が東京湾に上陸してきたらどうなるのかを、本書から抜粋編集して紹介する。

 

東京湾内における要撃

怪獣が、東京上陸コースを取り始めたら? それがどこにいる時点で、人間に敵として認知されるか? それがどこにいる時点から捕捉され、追尾が開始されるか? この2つの要素次第で、対応のあり方は微妙に変化する。ここで重大なのは、東京湾の安全確保が、日本国、さらには全世界の人々の生活の安定にまでもつながっているということである。輸出入大国である日本。貿易の大部分は海上交通に依存している。日本で最大規模の港湾である東京湾の安全確保。このこと次第では、世界経済にも、重大な影響を及ぼしかねない。経済に影響が及ぶということは、すなわち、人間生活全般に影響が及ぶということに他ならない。

対応を誤れば、東京湾に侵入した一体の怪獣のせいで、どこかの国で餓死者が増える結果にもつながりかねないのだ。

なお、ここでいう東京湾とは、浦賀水道以北を示すこととする。

さて、怪獣の存在が明確な事実として認識されている場合、その対処への前段階として以下のパターンが考えられる。

 

怪獣が敵として認知された場合

敵としての認知が先で、捕捉、追尾の開始が後である場合。あるいは、捕捉、追尾が開始されてから、敵として認知された場合。どちらの場合にしても、人間の意識の中で、怪獣はすでに撃破すべき《敵》である。《怪獣撃滅作戦》が発動し、その一環として、上陸阻止作戦の実行が検討されることとなる。

捕捉、追尾の開始が遅れていれば遅れているほど、対処は厄介になっていく。

 

怪獣が敵として認知されていない場合

捕捉され、追尾が開始されているが、敵として認知されていない場合。怪獣の東京への接近が明白になってから、初めて、それが陸に上がった場合、あるいは東京湾内で行動が開始された場合の脅威が問題とされることとなる。東京湾周辺海域及び地域における緊張状態は、怪獣が接近してくるにつれて高まっていく。この場合の問題は、《怪獣がどこにいる時点から脅威として認知されるか》に絞られる。

 

怪獣が敵として認知されているが、捕捉・追尾が開始されていない場合

人間の意識の中で、怪獣は撃破すべき《敵》である。怪獣撃滅作戦が発動する。ただし、攻撃をかける前に怪獣の捕捉が行われる。捕捉及び追尾に成功した時点から、東京湾周辺海域及び地域における緊張状態は高まっていく。この場合の問題は、《怪獣がどこにいる時点で捕捉され、追尾が開始されるか》に絞られる。

ここで、東京湾を出入りする大型水上物体(船舶)の、平時における監視状況について、述べておきたい。

浦賀水道を通って東京湾を出入りする船舶は、観音崎にある東京湾海上交通センターによって、基本的には管理されている。水上レーダー網によって、東京湾(及びその近辺)の海上を航行する船舶の動向は、常時捉えられている。従って、怪獣が海面上に姿を現して浦賀水道に侵入した場合は、海面上に露出している部分の大きさにもよるが、船と同様に、レーダーによる発見・捕捉・追尾は可能だろう。しかし、怪獣が海面下深く、海底近くを通って進んできたら?

浦賀水道の水深は、最深部で600メートルにまで達する。レーダー網をくぐり抜けて侵入する可能性は十分考えられる。だが、東京湾の方へ向かうに従って水深は急激に浅くなっていく。

浦賀水道と東京湾との境目、三浦半島の観音崎と房総半島の富津岬とを結ぶラインの海底は、最深部でわずか水深60メートルにすぎない。

東京湾に入ってしまえば、平均水深約17メートル、最深部でもわずか50メートルである。しかも、当然のことながら、沿岸に近づくに従って水深は浅くなっていく。このように、湾の奥の方まで進んでくれば、巨大生物を発見することは逆に容易である。しかし、このことは逆に怪獣の行動によって、船舶への被害が非常に発生しやすくなる、ということでもある。

東京湾岸の防衛施設

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怪獣が敵として認知されておらず、捕捉・追尾が開始されていない場合

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