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東京一極集中「上り経済」から地方回帰の「下り経済」へ

2016年09月02日 公開

牧野知弘

PHPビジネス新書『老いる東京、甦る地方』より

東京

 

「上り経済」の終わりの始まり

2016年(平成28年)3月26日、北海道新幹線「新青森」駅から「新函館北斗」駅間約149キロが開通しました。

1964年(昭和39年)、東海道新幹線が開通してから52年の時を経て、新幹線は本州を軸に、北海道函館から九州鹿児島までがつながり、さらに秋田、山形、新潟、金沢までに広がる日本の大動脈を形成するに至っています。

その長さ(営業キロ)たるや総計で3000キロを超え、駅の数は100に及んでいます。新幹線に乗って誰しも気軽に日本中を旅することが可能になったということが、日本の国土の発展に及ぼす影響には絶大なものがあります。

 

駅は単なる通過点にすぎない!?

さて、毎日ビジネス客、観光客、帰省客など大勢の乗客で賑わう新幹線ですが、果たしてこの100の駅のうち、みなさんの印象に残る駅はどのくらいあるでしょうか。私自身、職業柄、国内の移動が多く、東海道新幹線や東北新幹線などは頻繁に利用していますが、たとえば眠っていてふと目を覚まし、停車している駅を見て、即座に駅の名前が浮かんでくるような「印象的な」駅は思い浮かびません。

どちらかといえば新幹線の駅はどこも無味乾燥な、機能的な「ハコ」でしかなく、旅人がそこで降りてその地方を感じる「匂い」や「気配」を感じることは稀なのです。

新幹線を降りて駅のホームに立つ。そして階段またはエスカレーターやエレベーターを使って改札へ、スムーズな移動には何の問題もありません。

改札付近にはお土産店が並び、地元の特産品も並んでいます。このあたりになるとようやく地方の香りを感じ始めますが、ただ品物を並べているだけのお店が多いようです。

駅前ロータリーはどうでしょうか。どの駅も構造はほぼ一緒です。タクシーやバスの乗り場があり、ありふれた光景の中に地方色を感じることは少ないのです。

機能性にすぐれていることは、旅で移動するには不可欠の要素ですが、新幹線の駅に「感動」することは少なく、駅は単なる「通過点」にしかすぎない、これが多くの新幹線の駅およびその周辺の現状です。

日本は、新幹線に代表されるように国中に鉄道網が張り巡らされていますが、それでは国内にはいくつの空港が存在するかご存じでしょうか。

実は国内には現在、97もの空港が存在します。47 の都道府県がある中に97の空港です。

いくら日本が南北に長く、山岳の多い国だとはいえ、この数の多さには驚かされます。空港の「つくりすぎ」は公共投資の「無駄遣い」としてマスメディアからも随分と批判されてきました。

 

東京へと向かうことだけが重要視された時代

さてこの97の空港のうち、みなさんの印象に残っている空港はどれほどあるでしょうか。飛行機から降り立った時に旅の「ときめき」を感じる空港はありますか。

空港を考える場合、どちらかといえば、多くの方は市街地へのアクセスが良いかとか、中心地への距離と、そこに向かうリムジンバスの時刻表で頭の中はいっぱい、というのが実態ではないでしょうか。

日本の多くの空港は福岡空港などの一部を除き、空港が市街地からは「かなり」離れていて、せっかく飛行機を利用しても飛行機に乗る前後にかかる時間を含めて考えると効率的とはいえず、鉄道利用とあまり差を感じないところも多くあります。

日本は高度成長期から現代に至るまで、「経済優先」を掲げ、国内移動の手段として新幹線や航空路線を整備し、その離発着点として、駅や空港を位置付けてきました。経済の中心は、あくまでも東京、つまり常に東京が日本の中心であることを大前提に設置されてきました。したがって、いかにして地方から東京に向かうアクセスが良くなるのか、新幹線や航空機によって、地方と首都・東京とを結び付けていくことが国土発展の要だったのです。

新幹線も航空路線もすべてが東京への「上り」を中心に考えてきたともいえるのです。

東京につながった多くの地方では、実際に若い世代を中心にして、東京に出てそのまま地方には戻ってこなくなるという「ストロー現象」が発生しました。地方の人口は減少し、今や日本の総人口の4分の1が東京を中心とした首都圏に集中する事態となっていることに、新幹線と航空機が果たした役割は大きなものがありました。

翻って現代。日本はかつてのような経済成長は望むべくもない状況にあります。人口減少だけでなく人口構成の高齢化は激しく、今は多くの人口を集めている首都圏ですら、これから激しい高齢化社会を迎えるといわれています。

日本創成会議は2014年5月、このままの状態を放置すると、2040年には現在の地方自治体の約半数にあたる896の自治体が「消滅」する危機にあるという衝撃的な発表を行いました。

経済の「量的拡大」は今後の日本ではあまり期待できないものとなっています。量を拡大するためにこれまでは「効率」や「機能」を重視してきました。その結果として現在の新幹線の駅や空港がつくられてきたのです。

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著者紹介

牧野知弘(まきの・ともひろ)

オラガ総研株式会社代表取締役社長

1983年、東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループ、三井不動産を経て、2006年、J‐REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在はオラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や執筆・講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『インバウンドの衝撃』(以上、祥伝社新書)、2020年マンション大崩壊』(文春新書)、『不動産投資の超基本』(東洋経済新報社)など多数。

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