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ブランドビジョンの実現を目指して~橋本雅博・住友生命保険社長

『衆知』編集部

2016年09月14日 公開 2023年01月19日 更新

住友生命

「生活保険」の開発という新しい挑戦

このように、ブランドビジョンを変えることはありません。その一方で、生命保険をはじめとする保険商品の開発は、多種多様な「お客様のニーズ」にしっかりと応えるために変えていくことが重要になります。

当社ではブランドビジョンとあわせて、「悲しみとともに貧しさが訪れないように」という言葉も社内に広く浸透しています。これは、松下幸之助さんとも親交があり、当社の名誉会長を務めた新井正明の言葉で、生命保険の本質や存在価値をうまく言い表しています。

一家の稼ぎ手である世帯主が不幸にも病気になられたり、お亡くなりになられたとしても、家族が路頭に迷うことなく生きていけるように、というのが生命保険の第一義です。これは今も変わりません。

しかし、現在では50歳になるまで一度も結婚しない男性が5人に1人いて、離婚も増えています。独身者が増加すると、「家族のために、万が一に備えて保険に入る」というニーズは減少します。

また、共働き世帯も増え、5割を超えました。専業主婦世帯をモデルにしていた生命保険は、この点でもニーズが減少しています。

人口構成や社会の変化、価値観の変化をとらえ、それに合わせて商品を開発する。これはどんな商品開発でも同じだと思いますが、保険も例外ではないのです。

昨年9月に発売した「未来デザイン1UP(ワンアップ)」は、こうした世の中の変化にキャッチアップし、働けなくなるリスクをカバーした、強く生きていくための「生活保険」です。

生活保険というのは耳慣れない言葉だと思いますが、「病気やけがで働けなくなるリスク」に備え、お客様とその家族の生活を守るための就労不能保険のことで、私たちがつくった言葉です。

こうした潜在ニーズがあることは数年前からわかっていたのですが、なかなか商品というかたちにすることができませんでした。これまでは、介護保障を死亡保障に組み込んで、セットで販売していました。そのため、生きている間の生前保障と、亡くなった時の死亡保障を「分ける」ことが難しかったのです。

様々な課題を一つひとつ解決し、3年弱の年月をかけて、「1UP」の商品化が実現しました。働けなくなった時に、サポートが必要なのはどのくらいの期間で、いくら必要なのか。そのリスクに対して必要な保障額を知り、それに見合った保険料を支払う。これなら、お客様も納得して保険に入ることができます。

嬉しいことに、これまで生命保険をお薦めしても、あまり関心を示さなかった方たちにも、「それなら話を聞いてみようか」と、多くの人に興味を持っていただいています。

病気やけがで障害年金を受け取る人の数は、この10年で1.5倍に増えています。また、私たちが行なったアンケート調査では、「病気やけがで働けなくなるリスク」に備える就労不能保険の必要性について、20代、30代では男女とも80パーセント以上の人が必要と答え、40代、50代でも70パーセント以上の人が必要と答えました。年代、性別を問わず、就労不能保険へのニーズが高いことがわかります。

こうしたお客様の求める保険商品を新たに開発していくことも、私たちの大切な社会的使命です。当社はこれまでも業界に先駆けて、いろいろな新商品を開発してきました。「不可能かもしれないけれど、チャレンジしてみようか」という意識は、商品開発に携わる職員だけでなく、多くの職員が持っています。何か新しいことをやりたいと言い出した人を、押さえつけるようなことはしません。そこから、アグレッシブな社内風土が根づいているのだと思います。

こうした私たちの強みを活かすためにも、お客様のニーズに応える新商品を、これからも積極的に開発していきたいと考えています。

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年9-10月号 特集「ビジョンを実現する力」より、その一部を抜粋して掲載したものです。

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