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問題解決力を高める「空・雨・傘」の思考パターン

2012年01月23日 公開

株式会社 HRインスティテュート

《 『30代までに身につけておきたい「課題解決」の技術』より》

◎ 空・雨・傘で考えよう

 問題を解決する力を高めるために何をすればいいでしょうか。
 まず、真っ先にお薦めしたいのは徹底した「空・雨・傘」の反復トレーニングの実践です。これはマッキンゼーをはじめとするコンサルティングファームが用いる代表的なフレームワークです。

 空・雨・傘とは次のようなフレームを指します。

  空―「空は曇っている」(事実認識)
  雨―「ひと雨きそうだ」(解釈)
  傘―「傘を持っていこう」(判断)

 この3段階の思考パターンを定着させることが、問題を解決する力の強化につながります。

 まず入り口は「空」。
 自分の目で空を確かめるように、正しい事実認識を行うことです。外出する前に、空を見て、空が曇っているのか、晴れているのか、という事実認識を持ちます。この認識を誤ると、その後の手段も誤ってしまいかねません。空を見ずに、傘を持つか持たないかを判断したり、「人がそう言っているから......」と、判断材料を人に委ねたりするのではなく、事実を自分の目でも確かめる習慣が大切です。
 ここでは思い込みにとらわれず、自分が見えている情報だけで判断せずに、全体を俯瞰(ふかん)し、冷静に事実を認識する力が求められます。問題に気づくためにも、まずは常日頃から事実を見る習慣を持つことが大切です。

 次に「雨」。
 認識した事実に基づいて解釈を行うことを指します。「空が曇っている。だから、ひと雨きそうだ」と解釈することを意味しています。注意すべきは、事実からの解釈は幾通りにも分かれるということです。曇っている空を見て、「ひと雨きそうだ」と捉えるのか、「いや、雨はふらない」と捉えるのか、人によって違いが生じます。この解釈の仕方一つで、その後の対策が変わってきます。
 したがって、常に偏らず、全体を踏まえ、あらゆる可能性の中から最も納得のいく解釈を導くことが求められます。解釈の方向性を1つに限定しない習慣を持つことが大切です。常に、事実から3つ程度の解釈を導き、その中で最も理にかなっているど思う解釈を選ぶ習慣が必要です。

 そして最後に「傘」。
 最終的な判断として、導かれた解釈に基づいて何をするのか、ということです。「ひと雨きそうだ」という解釈から、「傘を持っていく」という判断が導かれます。しかし、他にも「合羽(かっぱ)を着る」というように別の手段を選んだり、そもそも外出をやめて「自宅に待機する」ということも考えられます。ここでも目的を踏まえ、解釈から導かれる対策を柔軟に複数挙げたうえで、最も合理的な選択に絞ることが求められます。

 問題解決の思考パターンを身につけるには、こうした空・雨・傘の流れで考える習慣を持つことが大切です。事実を正しく認識し、そこから解釈の道筋をたて、最も合理的と考えられる対策を選びます。
 俗に言う「勘がいい」とは、この空・雨・傘の展開力に優れていることをいいます。また、この3つのうち、どこが抜けても問題解決のプロセスは成立しません。「空」が抜けた場合は事実に基づかない、あてにならない解釈となります。「雨」が抜けると、事実と判断の間のつながりが見えず、周囲に分かりにくい印象を与えるばかりか、解釈の部分の客観性に乏しいので判断が間違ったまま進むリスクもあります。「傘」が抜けると、「で、結局何をすれば」という疑問が残り、具体的な行動につながりません。

 世の中には他人が加工した情報や人づての話があふれています。人の意見に耳を貸し、人づての話をもとに判断を下すことも大切です。しかし、最も重要なことは、自ら観察し、自ら情報を集め、自ら事実を捉え、そして自ら解釈を導き、判断することです。これらの作業を総合して「自分で考える」といいます。

 全ての問題解決は「自分で考える」ことから始まります。
 事実を自分の目で確かめる習慣をつけましょう。そして、自ら得た情報や事実をもとに、空・雨・傘を展開し、次に述べるように、問題を課題に置き換え、手段を講じていくのです。問題解決力の弱い人の多くが「自分で考える」ことをせずに、他人に依存してしまっています。

 

野口吉昭(のぐち よしあき) 野口吉昭

(のぐち よしあき)

横浜国立大学工学部大学院工学研究科修了。現在、株式会社HRインスティテュート(HRInstitute)の代表。中京大学経済学部・総合政策学部講師。NPO法人「師範塾」副理事長。FMヨコハマで「Yokohama Social Cafe」のDJも務める。
主な著書・編書に『遺伝子経営』(日本経済新聞社)『戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ』『コンサルタントの「質問力」』『コンサルタントの「ひと言」力』(以上、PHP研究所)『チームリーダーに必要なたった1つの力』(かんき出版)など多数。

◇著者紹介:HRインスティテュート(執筆者一覧)◇

・三坂 健(みさか・けん)
課題解決コンサルティングチームリーダー。
大手保険会社での法人営業を経て、HRインスティテュートに参画。国内での活動の他、海外事業としてベトナム法人、韓国法人の事業支援を中心に行っており、日本とアジアの往復を繰り返している。早稲田大学エクステンションセンター講師。

・染谷文香(そめや・あやか)
チーフ・コンサルタント。
2児の母親。家事とコンサルタントとを両立させて活躍中。大手エレクトロニクスメーカーでの日欧米向け新商品開発業務の経験を活かし、企業のビジョン&戦略策定、新規事業(商品)立ち上げ、デジタルコンテンツ開発などをサポートしつつ、人材育成&トレーニングにおいても活動している。

・守屋智敬(もりや・ともたか)
チーフ・コンサルタント。
元、都市開発エンジニア。現在は「かものはしプロジェクト」をはじめとしたNPO団体への支援を積極的に行いつつ、企業のコンサルティングに従事している。スマートな佇まいから繰り出される、意外にも軽妙な語り口にファンが多い。

・国友秀基(くにとも・ひでき)
チーフ・コンサルタント。
国内大手消費財メーカーをはじめ、様々な業界において長年にわたるコンサルティング、トレーニング実績を有する。クライアントと向き合う真摯な姿勢が支持されリピートも多い。以前は大手クレジットカード会社の人材開発部門に在籍。中京大学経済学部講師。

・東 嗣了(あずま・ひであき)
チーフ・コンサルタント。
フィールドエンジニアとしてセキュリティシステムの計画、実施を経験。その後、GIS(地理情報システム)のコンサルティング営業に従事。社会起業家とのつながりも多く、ソーシャル活動を自らも実践。米国MBA経験から、グローバルネットワークも有している。中京大学総合政策学部講師。

・清宮ユミ(せいみや・ゆみ)
コンサルタント。
ロンドン大学教育研究所修士課程を経て、英語教材を活用した研修の営業、企画、運営に携わる。現在、米国人トレーナーと共に、国内における企業・社員のグローバル化を教育の観点から支援している。


◇書籍紹介◇

30代までに身につけておきたい「課題解決」の技術

30代までに身につけておきたい「課題解決」の技術

野口吉昭 監修 / HRインスティテュート 著
本体価格1,400円

理論を学んでも実践で使えなければ意味がない。本書は、課題解決に奔走する主人公"マキ"が登場するストーリーを軸に、現場でぶつかる「壁のパターン」を分析し、それを解決する考え方を解説。現場で役立つ「課題解決」のノウハウを図とストーリーでわかりやすく示します。2色刷り。

 

iyashi

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