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「太陽光発電」入門

山下和之(住宅ジャーナリスト)

2011年08月20日 公開 2021年05月31日 更新

「太陽光発電」入門

「脱原発」を望む声が高まる中、太陽光発電への注目が集まっている。太陽光発電はクリーンで枯渇せず、CO2などの汚染物質を出さない。

沢山のメリットが考えられる中で、デメリットはあるのだろうか。太陽光パネル設置を実現させるには何が必要なのか。

※本稿は、『PHPほんとうの時代 Life+』2011年9月号「総力特集:賢い節約生活」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

自立運転、電力不足解消で、より注目度が高まる

このところ、太陽光発電システムを設置する人が急増している。

太陽光発電協会によると、太陽電池パネルの国内出荷量は2003年度から08年度まで年間20万キロワット(以下kW)台だったのが、09年度には60万kW台に増え、10年度には100万kWを突破した。11年度もこの増加傾向が続いている。

一般家庭の設置数も増えており、国の補助金申請件数は6月には2万3千件台に達し、補助金受付がいったん終了する直前の駆け込み需要で急増した09年度末に近づきつつある。

増加の要因としては、次のような点が挙げられる。

(1)クリーンで枯渇しない
太陽光はエネルギー源として無尽蔵であり、発電時にCO2などの汚染物質を発生させない

(2)設置場所を選ばない
規模にかかわらず発電効率は一定。設置場所に合わせて規模を決めることができる

(3)メンテナンスが簡単
構造的にシンプルで、メンテナンスが容易。かつ耐用年数も20年以上と長い

(4)補助金制度が充実
国や自治体の補助金制度が実施され、設置費用のかなりの部分をカバーできる

(5)自家発電で光熱費を削減できる

(6)余剰電力買取制度でさらに削減
自家発電により電力会社からの電力購入が減り、余った電気を売電できるため、光熱費負担を大幅に削減できる

さらに、震災後には、太陽光発電が持つ別のメリットも注目されるようになっている。それが――。

(7)非常時には自立運転可能
万が一の停電時には、自立運転に切り替えれば、一定の範囲で家電製品などの運転が可能になる

(8)電力供給力不足解消に貢献
自家発電によって震災後の電力供給力不足の不安に貢献できる

特に、原子力発電への不安が高まるなか、「脱原発」の決め手のひとつとして、太陽光発電システムへの関心がますます高まり、設置数も増加していくのでないかと期待されている。

 

設置費用は10年間で回収できる

メリットがあればデメリットもある。最大の課題は、設置費用の高さだろう。少し前までは1kWあたり100万円以上かかり、一般家庭向けの標準的なシステム、3~4kWのシステムだと300万円以上の費用がかかった。

しかし、技術革新、量産化、さらに国際競争の激化などで劇的なコストダウンが進行している。その結果、製品価格が抑えられ、最近では、新興国系のメーカーを中心に、40万円台のものも登場している。

しかも、設置後の光熱費の減少、余剰電力の電力会社への売電によって、設置後の光熱費負担を大幅に削減でき、さらに、設置時には各種の補助金を利用できることもあり、資源エネルギー庁の試算では設置費用は10年間で回収できるようになっている。

つまり、10年間で投下資金を回収でき、その後は月々の光熱費削減分だけトクできるようになるわけだ。この期間で回収できるのであれば、シニア世代にとっても十分割に合う投資といえるだろう。

デメリットの第2は、信頼できる業者選びの難しさ。新築時には、住宅メーカーが提携先のパネルメーカーや設置業者をつけてくれるのでさほど心配はいらないが、既存の住宅に設置する場合には、流通ルートが十分に整備されていないため、設置費用や工事内容などに関するトラブルが少なくない。

それでも最近では販売ルートが急速に拡大している。ホームセンターをはじめ、家電量販店、大型ショッピングセンターなどでも太陽光発電システムの窓口を設置するようになっている。消費者としては、各社の商品を比較検討できる機会が多くなり、さまざまなアドバイスを受けることもできるようになっているわけだ。

さらに、第3の問題として、既存住宅に設置する場合には、建物の耐震診断が必要になるという問題がある。以前と比べ軽量化が進んでおり安全性が高まっているとはいえ、特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅については、事前に耐震診断を行ない、状態によって耐震補強しておく必要がある。

ただ、その場合も、自治体の補助金制度を利用すれば、多くの場合には耐震診断は無料となり、耐震補強についても一定の補助金があるので、それらを活用すれば、さほどの負担にはならないはずだ。

なお、既存の住宅に設置するときには、合わせて住まいの高断熱化、高気密化工事を行なうのが効果的。同時に省エネ性能の高い給湯機器、家電製品などに取り替えるなど、大規模なリフォームを行なえば、住まいのエネルギー効率が高まり、太陽光発電システムの設置効果が倍増する。

(補助金、売電、メーカー選びについては、本誌をお読みください:編集部)

 

【PROFILE】山下和之(やました・かずゆき)
1952年生まれ。75年、同志社大学卒業。編集プロダクション勤務後、86年独立、90年株式会社山下事務所を設立。住宅・不動産分野を中心に、専門誌、単行本・ポータルサイトの取材・執筆のほか、各種セミナーなど、幅広く活動。主な著書に、『格安マイホームを手に入れる本』(ぱる出版)、『太陽光発電は本当にトクなのか?』(マイコミ新書)などがある。

 

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