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戦後体制から脱却する「新しい日本人」

日下公人(評論家/日本財団特別顧問)

2017年01月12日 公開 2022年10月13日 更新

安倍晋三氏には“新しい国連”の発想がある

国連加盟の主要国の分担金について触れておくと、上位は次のとおりである(2014年度)。

・アメリカ 22%
・日本   10.833%
・ドイツ  7.141%
・フランス 5.593%
・イギリス 5.179%
・中国   5.148%

ちなみにロシアは全体の11位で2.438%、国連事務総長を出している韓国は13位で1.994%でしかない。しかも韓国は長年滞納を続け、一時は滞納の割合が65%にも及んでいた。アメリカ、ドイツ、フランス、中国、イタリアなども滞納があり、滞納総額が当該国の国連分担金の2年分を超えると投票権を喪失するので、それを避けるために滞納の期間を調整して支払いをしているのが各国の実情である。ここでもきちんと支払っている主要な分担国は日本しかない。

潘基文事務総長が米下院外交委員会のメンバーとの会合で、国連分担金を滞納している米国を「最大の踏み倒し屋だ」と発言し、議員側から猛反発を受けたのは2009年3月だったが、まさに自国の責任は棚上げして他国を非難という“韓国病”が露呈していた。韓国が「国連分担金債務者」の立場から脱け出したのはようやく2013年になってからのことで、次のような報道があった。

〈韓国が古くからの宿題だった「国連分担金債務者」の立場から抜け出した。(中略)韓国の国連正規分担金は年間約5500万ドル(2012年基準)で、全体加盟国の中で11位だ。正規分担金と共に納付が義務付けられているPKO予算分担金は、紛争地域の状況やPKO活動範囲次第で毎年規模が違ってくるが、韓国の滞納額は11年末基準で1億7000万ドルに達した。

国連事務局は分担金を滞納した加盟国のリストを潘基文事務総長に報告するたびに、韓国の滞納項目に蛍光ペンで印をつけていたという。「国連事務総長の故国が国連に税金(分担金)を適時に納めなくてもいいのか」というメッセージだったと、外交部の関係者は伝えた〉(《国連分担金滞納分を完納、PKO分担金1億7000万ドル》2013年3月19日付『東亜日報』)

日本はいい加減、自分のお金を自分のために、自分の裁量で使う国になっていかねばならない。国連に協力するのはよいが、主目的は日本の名誉と国益の保持で、ただの摩擦回避や善人面をするための財布はないとはっきり決めればよい。

国連の本質を見極めたうえで外交の舵取りをしているのが安倍晋三首相である。

かつて私が会長を務めていた東京財団で、小泉内閣の官房長官時代の安倍氏を招いて外交問題の研究会を行ったことがある。若手の国際政治学者がそれぞれの持論を安倍氏にぶつけたのだが、安倍氏はそれに対し、「それはすでに自民党で議論を行い、このような前提が解決したら実現させる話です」と、すべての質問に対して前向きの回答を持っていた。

私が「常任理事国になって国連改革を主導し、新しい世界秩序を打ち立てるという日本の主張が通らなければ、国連に見切りをつけて“新しい国連”をつくればよい。名称は『第二国連』でも『経済国連』でも『東京国連』でもかまわない。この指止まれと言って東京に戻れば、現在の国連加盟国のうちの130カ国くらいはついてくると思うが」と問いかけると、安倍氏は「アメリカもついてくる」と即座に応じた。

私はこのとき、安倍氏には“新しい国連”についての構想もあるのだなと感じた。こういう外交センスのある政治家が、「戦後体制」の中にいるマスメディアと野党の総攻撃を受けながら、二度目の総理大臣を務めていることは、明らかに戦後日本の政治潮流の変化である。

「新しい日本人」の出現と、彼らによる「新しい日本」の時代が始まっているのに、マスメディアも野党政治家も完全に周回遅れとなって旧態依然の非難しかできない。

また、日本の敗戦と戦後の国際秩序によって権益を手にしている内外の利得者たちは、それを改めようとする安倍氏をどうしても封じ込めたいと画策することになる。

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「戦後派が災前派」になり、「戦前派が災後派」になる

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