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社会

ソロで生きる力~2035年、日本の人口の半分は独身者

荒川和久

2017年01月28日 公開 2022年03月03日 更新

この事件は、決して対岸の火事ではない。我々の身にいつ起きてもおかしくないことである。結婚したとしても最後はソロに戻るということ、子どもがいたとしてもすべてを依存してしまうことで起こり得る悲劇があるということ、それを忘れてはいけないと思う。

高齢社会で長生きする分だけ、我々自身がその期間の生き続けるコストを知るべきだし、その覚悟が必要だ。

最初の事件の判決の際、裁判官はもうひとつこんな言葉を残している。

「本件で裁かれるのは被告人だけではなく、介護保険や生活保護行政の在り方も問われている。こうして事件に発展した以上は、どう対応すべきだったかを行政の関係者は考え直す余地がある」

もちろん、こうした社会的な矛盾を個人の自己責任論にすり替えてしまう社会は問題がある。しかし、これは行政の関係者だけの問題ではない。人まかせ、子どもまかせ、行政まかせ、社会制度まかせにしてしまってはいけない。我々一人ひとりが考えていく必要があるのだ。

この度出版したPHP新書『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』では、「ソロで生きる」とは決して未婚だけの問題ではないことを書いた。結婚すればバラ色の人生が待ち受けているわけではないことは誰もが承知のはずだが、この未婚化・非婚化の問題に関しては、「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている。そこに私は、違和感とある種の恐怖を感じていた。

離婚の問題もそうである。ネット上では、何の根拠もなく「25歳までの早期結婚が幸せを呼ぶ」などという記事が掲載されているのを目にするが、無責任すぎる。結婚後5年以内の離婚率の高さを知っているのだろうか? できちゃった結婚から数年後に離婚して、結果シングルマザーが増加している事実を知っているのだろうか? シングルマザー世帯の増加に伴う子どもの貧困問題も忘れてはいけない。

未婚化、晩婚化、少子化、高齢化、離婚やシングルマザー増加の問題など、これらは切り離して考えるべき問題ではない。すべて全体として「ソロ社会化」という方向へと連動しているし、つながっている問題として考えないといけないと思う。未婚者だけではなく、結婚しても誰もが「ソロに戻る可能性」があるし、「ソロ社会化」は全員の問題なのだ。だからこそ、一人ひとりが「ソロで生きる力」を身につける必要があるし、それを自分事化して考えるべきなのだ。

 

※本記事はPHP新書『超ソロ社会』より、その一部を抜粋編集したものです。

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