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セブン‒イレブン、なぜ沖縄進出が最後だったか~その最強の立地戦略を探る!

榎本篤史(ディー・アイ・コンサルタンツ取締役社長)

2017年04月17日 公開 2023年11月27日 更新

表参道の裏路地に出店したのは誰だ!? 

2016年2月期の各コンビニチェーンの1店舗あたりの1日平均売上高は、セブン‒イレブンが65万円、ローソンが54万円、ファミリーマートが51万円です(2016年8月31日付朝日新聞)。セブン‒イレブンとその他のコンビニチェーンでは、1日の売上で10万円も差がついています。

なぜ同じコンビニなのに、10万円も差がついてしまうのでしょうか。

それには、ブランド力やそれぞれの店舗力の差というのもあると思いますが、立地戦略も多分に影響しています。

セブン‒イレブンは、「このエリアに出店する」と決めたエリア内で、近くに他のチェーンのコンビニがあっても臆することなく、堂々と出店してきます。

道路を挟んだ向かいや、数軒の家を挟んだ同じ通りなど、本当に真横のような場所に出店することさえあります。他のチェーンの場合は、他のコンビニのすぐ横に出店するかどうかは躊躇します。

セブン‒イレブンの出店は、さながら「ここにセブン‒イレブンがあるべきだ。今そこに、何が建っていようと」というような出店の仕方です。

1日10万円の日販差は伊達ではありません。セブン‒イレブンには「どこのコンビニの横に出店しても勝てる」、その根拠となる数字がしっかりあるので、自分たちの分析に自信を持って出店していけるのです。

さて、最近オープンしたセブン‒イレブンで、個人的にとても気になる立地の店舗がありました。表参道の路地にあるセブン‒イレブン北青山3丁目店です。

たまたま通りかかって見つけたときは、「よくここに出したな」と驚きました。そのくらい、裏路地のような細い通りにあって、観光客などが通らないような場所です。

どうしてこんなところに出店したのか、その理由が気になったため、何度か店まで足を運び、人の流れや周辺の様子をチェックしました。

現地調査のチェックポイントは主に3点あります。まずは歩道幅です。通常、お店の前の歩道の幅は、人がストレスなくすれ違える1~2メートルぐらいがベストです。幅が狭いと歩く人の速度は速くなるので、お店に気づいてもらえない可能性があるからです。

ふたつ目が、通行人の歩く速さ、「歩速」です。何時にどこに行くといった時間的制約や、どこで何をするという目的が決まっている場合、歩くスピードは速くなります。

最後が店の前の通行人の様子です。服装や持ち物から、ビジネスマンなのか、学生なのか、観光客なのか、近隣住民なのか推測し、どういった属性の人が多く通っているのかチェックします。この3点を意識して、セブン‒イレブン周辺を観察してみました。

明治神宮へと続く表参道と青山通り、その大きな通り周辺に、ショッピングビルが並び、大勢の人が行き交います。ところが、その大きな通りから1本裏の横道に入ると、オフィスの入っているようなビルや低層階のマンション、アパート、住宅などが建ち並んでいて、働いている人やそのあたりに住んでいる人だけが行き交う通りになります。穴場的なカフェやお店もあるにはありますが、知っている人しか通らないようなところです。

まさにそんな、車も1台しか通れず、歩道も狭くなっている細い道に、そのセブン‒イレブンはあります。ただ、一本道ではなく、ちょうど十字路になっている角地で、四方から人がひっきりなしにやって来ているため、お店は繁盛しているようです。

通行人やお客様は足早に歩く人が多く、買い物や観光で表参道に来たというよりは、通い慣れた様子のオフィスワーカーや近隣の住民のような方がほとんどでした。

そう、ここは、普段から周辺で働いている人、近隣に住んでいる人からすれば、「よくぞここに出してくれた!」と思われるような立地だったのです。

徹底的にエリアを調べ、ニーズがある場所を見つけ出し、確実に出店する。セブン‒イレブンの立地の目の付けどころは、一見すると「そんなところで儲かるの?」ですが、採算がとれると踏んだ場所を着実に選んでいるのです。

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