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富士そば、カフェ・ベローチェ、ルノアール~栄枯盛衰の飲食店、その立地戦略とは

2017年04月26日 公開

榎本篤史(株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ取締役社長)

独自の出店でニーズに応える

どうしてここに? 富士そばとカフェ・ベローチェの絶妙立地

都内を中心に113店舗を展開している「名代 富士そば」は、低価格のそばをメインに丼物も扱っていて、スピーディーに提供されるのがウリのお店です。1人でサッと食事を済ませたいときにぴったりで、創業者・会長の丹道夫氏のこだわりで、店内では演歌が必ず流れています。

個人的な印象ですが、富士そばは、「すごくいい立地」にあるわけではありません。人通りの多い立地にしっかり出店しているな、という印象ではないのです。

が、「困ったときに富士そばがある!」と感じます。たとえば初めてやって来たような場所で、「このあたりは食べ物屋はないようだ。昼飯は諦めるか……」と途方に暮れて覚悟を決めたそのとき、富士そばがあった、という感じです。

飲食店が軒を連ねるような商店街にあるというよりは、その商店街を通り抜けてすぐに曲がった道や、商店街なかほどから1本横の路地に入ったところ、あるいは地下鉄を降りてお店もまばらな土地で、もう少しで住宅街に入りそうな一歩手前の交差点……そういった「この店しかなければ、ここで食べるだろう」という場所にひっそりとお店があるイメージなのです。

味で本格そば屋と勝負する店ではありません。普通のおそばを、スピーディーに出す富士そばです。

富士そばは、創業者で会長の丹氏が出店場所を決めていると聞きます。丹氏は富士そばを創業する前は不動産会社で成功した方で、物件については一家言あるのだそうです。

そんな不動産に詳しい創業者が見つけてくる物件です。いうなれば、「お客様が『助かった!』『富士そばがあってよかった!』と思える場所」にしっかり出店している。絶妙の立地戦略を感じます。

同じように、不思議な場所にあって重宝するのが「カフェ・ベローチェ」です。ベローチェは「コーヒーハウス・シャノアール」の別業態で、都内を中心に174店舗あります。ブレンドコーヒーが1杯200円と手頃な価格で、ちょっとした休憩にはピッタリです。

コーヒーチェーンのドトールコーヒーなどは、駅を降りてすぐのところ、駅前からわかりやすい場所に出店していることが多いです。駅の近くで時間を潰そうとしたり、駅周辺で待ち合わせをするとき、ぱっと目に入って便利な場所です。

一方で、ベローチェは駅の真正面にある、というわけではありません。駅から近いことは近いのですが、1本横道に逸れたところや大通りに面している店舗の裏側など、王道とは少し外れたところにあります。

しかし、その周辺に住んでいる人、その周辺で働いている人たちはベローチェがそこにあることを知っていて、利用者が多くいます。ベローチェのホームページには、「お客様が毎日気軽に利用できるよう、分かりやすく、立ち寄りやすい場所に立地しています」と書かれていますが、これは「その場所を毎日訪れるような人が、覚えやすく、使いやすい場所にある」ということではないでしょうか。

王道からすれば少しわかりにくい場所ということもあり、おそらく賃料もそんなに高くはないはず。その代わり、1店舗の面積は広めのところが多いです。駅の目の前ではなく、気づかない人もいるので、たいてい座れる印象です。駅前に行列をつくっているようなカフェとは違い、ゆったり過ごすにはもってこいのカフェなのです。

富士そばやベローチェは、「ここに出店するなんて、わかってるな!」とお客様に一目置かれるような場所に出店できれば、経営はしっかり成り立つという好例でしょう。都内で飲食店に困ったときは、付近に富士そばやベローチェがないか探してみてください。

 

都内のカフェ、それぞれの立地事情

飲食店の激戦区、東京都。そして中でも、その闘いが過熱し続けているのがコーヒーチェーンです。スターバックスにタリーズ、ドトール、ベローチェ、椿屋珈琲店、猿田彦珈琲、上島珈琲店、珈琲茶館 集……ここでは挙げきれない数の店が、しのぎを削っています。

そんな東京のコーヒーショップの事例にも、ユニークな戦略が見られます。

たとえば1964年に創業した「喫茶室ルノアール」は、昭和の喫茶店の香りを残した店内が年配の方を中心に人気の喫茶店です。現在も東京を中心に系列店を含めて140店舗が存在し、140店舗中125店舗が都内にあります。

落ち着いた雰囲気のルノアールでは、スーツ姿で打ち合わせをしている人をよく見かけます。ある意味、街中の会議室のような位置付けと捉えられるかもしれません。確かに静かな場所を求めてルノアールに入れば、中で若者が騒いでいるという光景にはまずお目にかかりません。喫煙席がしっかりつくられていることも、愛煙家が行く理由になります。

立地的には、駅前というよりは駅から少し離れた場所にあります。主に「その場所を知っている人」が利用する印象ですが、最近は、ビルの2階に出店されていることも増えています。一度覚えたら忘れられない趣のある看板をしっかり出していることが多く、「あ、ルノアールがあるんだ。ちょっと疲れたし寄っていこうかな」と足を止める人もいるでしょう。

また、同じルノアールの別事業に、「マイ・スペース」があります。26店舗と数は多くありませんが、ここでは予約制で会議室を使うことができます。レンタルスペースに近いかたちで営業しているので、ビジネスマンを中心に人気があります。店舗併設の場合は、ルノアールのメニューを頼むこともできるので、コーヒーを飲みながらの打ち合わせにはピッタリです。

「会議室レンタルで使われるコーヒーショップには他にも、カフェ・ミヤマ(Cafe Miyama)があるな」と思い出された方、「カフェ・ミヤマ」も、ルノアールの系列です。このように、同じコーヒーショップ+会議室というサービスでも、複数の店名でそれぞれの雰囲気を用意し、お客様に選択肢を提供しているのです。

コーヒーチェーンはまさにレッドオーシャンの市場です。その中でどうやって他チェーンと差別化し、生き残っていくのか。今後の動向でポイントとなるのが、立地だと私は考えています。

なお、アメリカのサンフランシスコからやってきた「ブルーボトルコーヒー」は、2015年2月に日本第1号店を都内の江東区、清澄白河にオープンさせました。「コーヒー業界のアップル」といわれるほど強いこだわりを持ったコーヒーチェーンですが、銀座や新宿といった人が多く、ブランド力の高い街ではなく、アットホームな雰囲気が漂う住宅街の清澄白河に店を出したのです。この意外性のある立地は話題になりました。

ブルーボトルコーヒーは、日本第1号店をどこにするか、相当なリサーチを重ねたうえで清澄白河に決めたそうです。決め手は本社のあるカリフォルニア州オークランドに環境が似ていたからだといいます。

実は、清澄白河は古い日本の喫茶店が多く残っている街でもあります。そこに、新しいコーヒー店も続々とお店を出しているため、コーヒー店が地域に根付きやすい土壌を持っているのです。その後も急激に店舗を増やすようなことはせず、意外性のある1号店を落ち着けたあとは、青山、六本木、新宿、品川、中目黒とある意味「いかにも」な場所に出店し、順調な売れ行きだといいます。

 

※本記事は榎本篤史著『すごい立地戦略』(PHPビジネス新書)より、一部を抜粋編集したものです。
iyashi

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