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子どものための発達トレーニングで大切なこと

2017年05月21日 公開

岡田尊司(精神科医)

「不注意で見落としが多い」「忘れやすい」「聞き取りが弱い」「言葉の遅れ」「運動が不得意」「コミュニケーションが一方通行」「人前で話せない」「漢字や図形が苦手」「感情や行動が制御できない」「パニックになる」「計画が苦手」「イライラしがち」……。岡田尊司著『子どものための発達トレーニング』(PHP新書)では、発達の課題を克服するためのトレーニングを紹介しています。本書で岡田氏は、トレーニングに取り組むうえでは、診断名ではなく、子ども一人ひとりが抱えている特性や課題を把握することが大切と指摘しています。
 

※以下は本書より、一部を抜粋編集したものです。

 

診断よりも個々の特性が大事

少し専門的な話になりますが、大事なところなので、少し頑張ってお読みください。

発達のトレーニングに取り組んでみようという方やその方法に関心があるのは、教師や発達の専門家の方だけではないでしょう。何と言っても一番多いのは、ご自身の子どもさんが「発達障害」と診断されたり、その傾向があると言われている方ではないでしょうか。まだ、診断や検査を受けたことはないけれど、少し気になる点があるという方もいらっしゃることでしょう。

特に診断を受けているという方について、気をつけていただかねばならないことは、診断名がすべてを表しているわけではないということです。診断名は、その子の一番課題となる部分だけを反映しているということが多いのですが、中には、その子の現実の課題に、あまりぴったりとは言えない診断名がついてしまっているという場合もあります。

診断名も、次々と変わったりして、かなり混乱しているという現状もあります。発達の課題のあるお子さんについて、今日よく使われる診断名としては、「自閉スペクトラム症」(「広汎性発達障害」や「自閉症スペクトラム障害」「アスペルガー症候群」なども使われてきた)「ADHD」「学習障害(LD)」「知的障害」が多いかと思います。

しかし、同じ診断名でも、その子の抱えている課題は、一人ひとりかなり違います。診断名という縦割りのカテゴリー(分類)とは関係なく、課題がまたがっていることの方が普通です。

発達のトレーニングを行う場合に大事なのは、診断名ではなく、子ども一人ひとりが抱えている特性や課題です。ですので、診断名ごとにトレーニングを考えるというのは、その子の実態に即していないのです。ベースにある課題を、もっと細かく丁寧に把握し、それに応じたプログラムに取り組んでいくことが求められるわけです。

例えば、自閉スペクトラム症と診断されている子どもさんでも、表情の読み取りが比較的問題なくできる子もいれば、まったくできない子もいます。ADHDという診断名がついている子でも、表情の読み取りが悪い子も少なくありません。そういう子では、怒っていない普通の顔を見ても、怒っているように受け止めてしまうということが起きやすいと言えます。一方、虐待やイジメの被害に遭っているお子さんでは、診断名に関係なく、表情の読み取りに課題が認められやすいのです。

自閉スペクトラム症と診断されているケースでも、注意力の低下している子もいれば、逆に優れている子もいます。言語理解、視覚・空間認知、ワーキングメモリー(作動記憶)、処理速度など、ばらつき方は一人ひとり違います。

学習障害(最近は「学習症」とも)という診断についても同じです。耳から聞いて覚えるのは問題ないけれど、読んで覚えることができない子もいれば、読んで理解することは得意だけど、文字を書くことが極めて苦手という場合もあります。計算は得意だけど、文章題がまったくできない子もいれば、一問一答式や選択式の問題なら答えられるのに、文章を自由に書いて答える感想文は死ぬほど嫌いという子もいます。

こうした課題を改善するためには、その子がどの情報処理の部分に困難を抱えているのか、さらにベースの部分の課題を把握する必要があるわけです。学習障害の原因が、ワーキングメモリーが低いために起きている場合もあれば、目と手をうまく協応させて使いこなすことが苦手で、文字を書くといったことに困難がある場合もあります。図や形を覚えることが苦手なために、困難が起きている場合もあります。

ベースにある原因を突き止めることで、はじめて必要なトレーニングも見えてくるわけです。闇雲にトレーニングすればいいというものではなく、きちんと課題を把握するためのアセスメントも大切なのです。

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