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「自分が盾になって撃たれるつもりだった」…自衛官の心意気

2017年05月26日 公開

桜林美佐(防衛ジャーナリスト)

桜林美佐

「超法規的な行動」をとれば自衛官は罪に問われる

何年か前のある休日、北海道の広い道を、私服姿の若い自衛官の運転で走ったことがある。

「○○くん、もうちょっとスピード出せないかな……」

助手席の男性が速度を上げるように促すが、ペースは一向に変わらない。後続の車はしびれを切らして、対向車線からビュンビュンと追い越していく。

「わかった、わかった。自衛隊の人に、そんなことを言ったらいけなかったね。でも、このままじゃ飛行機に間に合わなくなるから、運転、ちょっと代わってもいいかなあ?」

かくしてドライバーは、車の持ち主ではない人に代わることになった。この日は、北海道を訪れた私を、地元の隊員さんと主催関係者の方が空港に行く前に観光案内をしてくれたのだが、一般の人の感覚では15分くらいと見込んでいた道に、倍の時間がかかってしまった。

法定速度を見れば、あくまでも彼(自衛官)が正しい。世の中のほとんどのドライバーは道路交通法など守っていないのかもしれないが、自衛官にとっては、法はあくまでも法。自衛官はどんなときでも違反にならない、いわゆる「自衛隊走行」。「融通がきかない」と思う人もいるかもしれないが、それが自衛隊なのである。

日本人の多くは「法に従って行動する自衛隊」という本質の部分を、あまりよく理解していないのではないか─と私は感じることが多々ある。だからこそ平和安全法制(安保法)の議論も、自衛官の直面する現実とあまりにもかけ離れていたのではないだろうか。

「いざとなれば、自衛隊はやってくれるんだろう?」

こんなふうに、実際のところ、少なからぬ人々が期待しているのではないか。

「憲法も変えないほうがいいような気がするし、集団的自衛権の行使も戦争に巻き込まれるかもしれないのでやめたほうがいいだろう」などと言いながら、本当に国民が危機に陥るような場面になったら、きっと助けてくれるのだろうと思っているとしたら、これはとんでもない誤解だ。

たとえ国民の命を守るためとはいえ、もし「超法規的」な行動をとれば、自衛官が個人的に罪に問われることになる。そんなことを平気でさせようというのだろうか。

「法を守れ」「法治国家だ」と言いながら、日本人が皆100%国内法を守っているとはとうてい思えない。それゆえ、一般国民は自衛隊に対しても本当は「それほど厳密に法を守らなくてもいいのではないか」と思っているのではないか?

この漠然とした期待が、安保法という非常に抑制的な法整備すら、スムーズに進めさせなかった要因になっているような気がしてならない。

言うまでもなく、この認識は間違っている。もし、自衛官に、「ここは広い道路だし、他に車もいないのだから、もう少し速度を上げてほしい」と思うなら、道路交通法を変えることを考えるべきだろうし、同じように、海外で危ない目に遭ったときに、近くを通った自衛隊に助けてもらいたければ、根拠となる法を変えておかなくてはならないのだ。

つまるところ、多くの日本人にとって法律とは、「ある程度、守っていればいい」くらいのものなのではないか。そうであれば、その日本人が自衛隊の行動に対して「違法性」や「法の安定性」云々を問う資格はないだろう。

自衛官に違法行為をさせるわけにはいかない。

だから法を整えなければならない。

それだけのことだ。

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