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グーグル、アップルも注目した「マインドフルネス」とは

2017年06月27日 公開

マインドフルネスとは「今ここ」に集中すること

なぜ、ビジネスパーソンにはブッディズムが必要か

働く人のマインドフルネス本書『働く人のマインドフルネス』は、外資系会計事務所を経て、自らコンサルティング会社を経営するかたわら、複数社の社外取締役をやったり、産業再生機構の設立に関与するなど、幅広い領域にちょっかいを出し、現在も企業の成長支援・再生支援などを手掛ける企業のパートナーとして40年近くビジネスの現場にいて、20年ほど前から仏教に関わらざるを得なくなった60歳を過ぎたコンサルタント(菱田)と、大学卒業後すぐさまネパールのチベット僧院に入り、10年以上厳しい修行をした後帰国し、寺には属さずに修行を続けている40過ぎのミドル(牧野)との共著です。

バリバリのビジネスマンで一見仏教とは関係なさそうなシニア(爺)とバリバリの修行者で一見ビジネスとは無関係そうなミドル(中年)ではありますが、ある思いを共有しています。

それは、厳しい環境で仕事をされているビジネスパーソンの方々に仏教(仏教的思考方法やマインドフルネスも含めた方法論)を理解してもらえれば、もう少し楽に上手に生きられるだろうということです。そのため今回、出版の機会を得、本書を共に著わすに至った次第です。

さて、仏教とビジネスのつながりといえば、随分前から企業研修の一環としての禅寺での座禅というものが見受けられますが、一般の方の座禅に対するイメージは、あまりポジティブなものではないようです。

たしかに、「足は痛いし、腰や背中は張るし、姿勢が崩れると堅い棒で叩かれるし、とにかくつらかった」という研修経験者の発言を聞いていたら、「つらい忍耐力のトレーニング」というイメージを持つ人が多数出てくることは否めません。その所為か、今現在、座禅は企業研修でポピュラーな地位を占めるには至っておりません。

しかし、最近では同じ仏教的瞑想をベースとした「マインドフルネス」というものが、米国だけでなく我が国でもブームとなっています。

「マインドフルネス」という言葉自体は、20世紀の終盤にマサチューセッツ大学のジョン・カバットジン氏が認知療法に瞑想を組み入れた「マインドフルネスストレス低減法」( MBSR : Mindfulness-based Stress Reduction)を始めたことにより、米国で定着していったようですが、それがポピュラーとなったのは、2007年にグーグルが「マインドフルネス」に基づいたリーダーシップ研修プログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ」(Search Inside Yourself)を導入し注目を浴びたことによります。

その後、「マインドフルネス」を採用する米国有名企業が増えることで、ますますポピュラーとなり、我が国でも2010年あたりから「マインドフルネス」に基づいたワークショップが行なわれたり、学会ができたりして、一大ブームとなっています。

「マインドフルネス」については、ストレスの低減・集中力の向上・感情をコントロールする力の向上・認識力の向上・免疫機能の改善等個人の効用にとどまらず、企業組織としての効率性の向上などさまざまな効用にスポットを当てて説明されたり、脳科学との対比で説明されたりすることが多々あります。

 

マインドフルネスは方法論である

しかし、その定義は何かと問われると、なかなかわかりやすく短く定義することが難しいためか、これといったものはありません。「マインドフルネス」という言葉はそもそもパーリ語のサティ(sati)の英訳ですので、日本語でいうと「気づき」、仏教的にいうと「念」ということになるのでしょうが、これを一般の人が聞いてもイメージは湧かないでしょう。

仏教では「苦」を滅して幸せになる(解脱する)ためには、自分自身にとどまらず周辺環境等今の状況を客観的にとらえ、客観的に原因分析をしなければならないと説いています。そして客観的に物事を見たり、客観的論理的に落ち着いて物事を考えたりするためのトレーニング方法として瞑想をあげています。その一つがヴィパサナー瞑想といわれるもので、「今ここ」で起こっている(呼吸や身体感覚や感情など)瞬間の事実のみに集中して観察するというものです。

「瞬間」「瞬間」を見ることになるので、自己の感情的評価はせずに(している暇がない)物事を見ることにより、自分を介在させてきた(自分が勝手につくっていた)真実が実は本当の真実ではないことに気づいていくことになるというものです。

このトレーニングの結果(過程でも)先ほど述べたような効用が現れることに着目し、このヴィパサナー瞑想などを中心にしてつくられたのが、マインドフルネスというプログラムといってもよいでしょう。そのような意味からするとマインドフルネスはその効用自体が目的化されているともいえ、真の仏教的瞑想よりは射程が短く、「マインドフルネス=仏教の瞑想」という直線的な図式にはなりません(仏教的瞑想の射程は人間の一番よい状態〈悟り〉まで行くわけですから)。

それでも、仏教的瞑想にしてもマインドフルネスにしても何かをするための方法論であるということに違いはありません。それらが方法論であるのであれば、そのベースとなる考え方や要素を知っておいたほうが、利用の仕方がより洗練される可能性が高く、また、そのベースの考え方がわかれば、瞑想するまでもなく(マインドフルネスという方法を使うまでもなく)、解決できることが増えていく可能性もあります。

現に、どのような見方をすべきかをアドバイスされただけで、かなり物事を客観視できるようになる人も存在します。このような意味からも本書では、そのベースとなる考え方や何を見るべきかなどにも言及するつもりです。

また、なぜこのようなトレーニングをしなければ、客観的真実が見えてこないのかといえば、我々は先天的にも後天的にも見方や考え方に癖(偏見や思い込み等も含め)があるからです。

例をあげるとすれば、先天的なものの代表格は我々人間が獲得し、今も持っている動物としての本能です。我々は昔々、種としての生き残り戦略のために脳を発達させてきたところがあります。我々は危険(大きい動物や蛇等)にはすばやく反応しますが、それ以外のことにはあまり反応しません。他のことに気を取られ、その隙に肉食獣に食われてしまったり、毒蛇に咬まれてしまったりしていては生き残れないからです。

しかし、今の世の中で起こっている事柄は危険以外のものが大半で、その大半の事柄で現代社会が動いているのに、そのことには意識が向きにくく、あまり認識できていないといえます。

また、我々の心は彷徨いやすく、とくに不安になるととんでもないところまで心が彷徨うことがあります。これも、明日の食糧があてにならない時代にはさまざまなシミュレーションを行ない、獲物や食料などを手に入れる確率を上げることに役立っていたといえますが、今の時代には思考の妨げになることが多いといえるでしょう。

このように、我々が持っている「本能という脳の癖」と「現代社会での生き方」がミスマッチを起こしていることに起因して、さまざまな不都合が生じています。さらには、先天的なものだけでなく、後天的な癖なども自分では気がつきにくいものです。  

したがって、そのようなことがあるということを知っていれば、客観的認識への早道を見つけられる可能性があります。

本書を読むことで、読者の方々が、日々の仕事や自分自身のことを、今よりも客観視できるようになり、そのことによって課題や問題の解決策をすばやく見つけられるようになることを願っています。

※本記事は、菱田哲也、牧野宗永著『働く人のマインドフルネス』はじめに より、その一部を抜粋編集したものです。

iyashi

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