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肩こり、腰痛、頭痛…それは「食いしばり」が原因かも?!

吉野敏明(歯科医)

2017年07月17日 公開 2022年09月05日 更新

肩こり、腰痛、頭痛…それは「食いしばり」が原因かも?!


(写真:PIXTA)
 

健康でいたいなら10秒間口を開けなさい

心と口はつながっている

頭痛、肩こり、眼精疲労、ストレス過多、腰痛、生理痛、耳鳴り、めまい……。今、こんな病気や症状で悩んでいる方が多いのではないでしょうか? もしかすると、「はい、そうです、ここにある全ての病気で悩んでいます。なんとか、助けてください!」という人もいらっしゃるかもしれません。いったいどうしてこんなことになっているのでしょう?

現代医学は、「縦割り」なのはもちろんのこと、臓器別の治療まで行われています。

頭痛は頭痛外来、肩こりは整形外科、眼精疲労は眼科、ストレス過多は心療内科、腰痛は接骨院、生理痛は婦人科、耳鳴りやめまいは耳鼻科など。現代人は忙しいのに、行かなければならないクリニックが多すぎます。治療費も馬鹿になりませんし、何より時間がもったいない! でも、本当にこれが正しい治療法、解決方法なのでしょうか?

たとえば、背中の痛みは、筋肉痛ではなくて初期の膵炎(すいえん)が原因であることがあります。初期の膵炎では、血液検査をしてもアミラーゼ、リパーゼといった病気のマーカーが検出されないことがあります。なので、ただの筋肉痛と間違えてしまうのです。ちなみにこうした痛みは、食事療法をするだけで治ってしまうことがあります。

また、左肩のこりが異様にひどくなり、痛んだり胸のほうまで及んできた場合は、狭心症や心筋梗塞の疑いがあります。逆に右肩の場合は、肝炎や胆石という可能性もあります。たんなる肩こりと片付けないで、注意する必要があります。

同じように、聴力は正常、MRIや脳波では異常が認められないにもかかわらず耳鳴りが止まらないことがあり、そうした場合、ストレス性の食いしばりが原因であることがよくあります。

食いしばりがあると、あごの関節の位置がずれ、下あごの骨の関節の頭(関節頭といいます)が、受け手の耳のすぐ前関節(関節窩)を圧迫してしまうのです。すると、聴覚の骨である耳小骨や、平衡感覚をつかさどる三半規管や蝸牛などの組織を強く圧迫してしまうのです。

このようなときは、翳風(えいふう)という耳の後ろのツボに鍼治療をします。すると、あごの関節円板の位置が一瞬で元に戻り、これによってあごの関節の位置もその場で戻りますから、耳小骨や三半規管などは圧迫からすぐに解放されます。そして、この動いた下あごに対してほんのちょっとだけ歯のかみ合わせの治療をすると、瞬時に耳鳴りが治せるのです。翳風は、耳鳴りやめまいのツボでもありますが、心包系といって、心、すなわち精神にもつながるツボです。ストレスの回避にもつながるツボですので、押すと耳鳴りと同時に原因であるストレスの治療もできる。つまり、一石二鳥というわけです。

体は全てつながっています。血管や神経、リンパ系なども全ての臓器につながっているのです。同じように、心も体とつながっています。たとえば、緊張すると「手に汗握る」状態になりますよね。いつの間にか、手に汗をかき、手をギュッと握りしめているのです。緊張という感情が、手の汗腺と手の筋肉・関節とつながっていることがわかるでしょう。

また、緊張すると「のどが渇き」ます。怖いときは、あごを「震わせる」といい、歯をカチカチ鳴らします。お化け屋敷に入ったら、そんな感じになりますよね?

中学高校の運動部では、顧問の先生が「歯を食いしばって頑張れ!」と生徒を励ましますし、聖書にすら、忍耐するときや悔しいときに歯を食いしばる、という表現が繰り返し出てきます。

つまり、心の状態とのどを含めた口の中の状態とは、切っても切れない関係なのです。あくびをするなど、リラックスしているときを除き、緊張・恐怖・不安・怒り・不平不満・忍耐などストレスが多いとき、人は歯と歯を合わせる、つまり食いしばりをするのです。

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