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野蛮な世界で、日本はどう生き抜いていけばよいのか―『国際法で読み解く戦後史の真実』

2017年10月16日 公開

倉山満(憲政史研究家)

※本記事は、PHP新書、倉山満著『国際法で読み解く戦後史の真実』《はじめに》より、一部を抜粋編集したものです。

国際法で読み解く戦後史の真実

文明の近代、野蛮な現代

最初に断言しておきます。

日本人は、全人類に対する罪を自覚すべきです。

もし日本があそこまで愚かなことをしなければ、世界がここまで野蛮になることはなかったでしょう。愚かなこととは何か。大東亜戦争のことです。

かの大戦において、大日本帝国は、ソヴィエト連邦の片手間の、中華民国の片手間の、大英帝国の片手間に、アメリカ合衆国と戦争をし、そして滅亡してしまいました。その結果、どうなったか。

大戦後、米ソ中仏英が世界の五大国となり、日本は地球の秩序に何の責任も持てない立場に叩き落とされました。その後、米ソ両国を盟主として、冷戦がはじまります。冷戦とは、自由主義と共産主義のイデオロギー対決、どちらの思想が正しいかの争いです。

自由主義とは、「人を理由もなく殺してはいけない。人間ならば誰もが等しく、理由もなく殺されないで生きていく権利がある」とする思想です。何を当たり前のことを、と思うのは日本人くらいです。たったこれだけの主張が人類の多数派になるのに、人類は何百年もおびただしい量の血を流し続けたのですから。

それに対して共産主義とは、「世界中の政府を暴力で転覆し、地球上の金持ちを皆殺しにすれば、全人類が幸せになれる」という思想です。思想と呼ぶのも恥ずかしい幼稚な主張ですが、一時は世界の半分が共産主義者に支配されてしまいました。

共産主義の盟主であるソ連こそ滅びましたが、中国共産党による一党支配は健在です。チベットでの民族浄化は新疆ウイグルにも及び、周辺諸国に脅威を与え続けています。

また、いまのロシアが、グルジアやウクライナなどで行なっているヨーロッパへの侵略の数々は、ソ連の昔と変わりません。

では、自由主義陣営の盟主を気取るアメリカが地球の秩序に責任を持てるかというと、極めて怪しい。シリアやイラクを中心とした中東の動乱は収まる気配も見せません。また、北朝鮮もどうなるか。

それもこれも、すべて日本が大戦に負け、滅んでしまったことが原因です。

日本の罪とは何か。世界が野蛮になっていくのを止められなかったことです。大東亜戦争において国策を愚かに誤り、世界を野蛮にしてしまった罪です。

本書においては、この日本の大罪について語りたいと思います。

本書は私が現代史について真正面から取り組む最初の本になるのに気が重いですが、仕方ありません。わが国が未来へ進むには、現実を冷徹に見据えなければなりませんから。

満洲事変が起こった1931年、間違いなく大日本帝国は無敵の国でした。日本が中華民国で何をしようが、アメリカもソ連も大英帝国も、何もできませんでした。よほどの愚かなことをしない限り、滅びようがない国、それが大日本帝国でした。ところが満洲事変から、たった15年で滅びてしまいました。

つまり日本人が、よほどの愚か者だったということです。

私は、昭和初期の日本が悪い国だったとは思いません。また、中華民国などアジアの周辺諸国を侵略し、増長したのでアメリカとソ連に制裁されたという意味で愚かだったとの歴史観には、異を唱えます。

日本はアメリカだの、ソ連だの、中華民国だのにとやかくいわれるような悪い国では断じてありません。道徳において、連中には何一ついわれる筋合いはない。

しかし、道徳的にまったく悪くないのに、悪者呼ばわりされている。これが愚かでなくて何でしょうか。はたして、その自覚がどれほどの日本人にあったか。

日本は悪い国だと罵倒するのが左派、日本は悪い国ではないと弁護するのを右派としましょう。左右両派とも、日本の愚かさから目を背けている点では、同じ穴のムジナなのです。

3年前、『歴史問題は解決しない日本がこれからも敗戦国でありつづける理由』(PHP研究所、2014年、文庫版タイトル『日本人だけが知らない「本当の世界史」』PHP研究所、2016年)で、アメリカ・中国・ロシアといった世界の三大国がどれほど野蛮であるかを書きました。そして、その三大国の前に、いまの日本がいかに無力であるかを。

昨年、『国際法で読み解く世界史の真実』(PHP研究所、2016年)で、とかく誤解されがちな国際法とは何かを説き、文明とは国際法のことであり、日本こそが世界史で最も国際法を守った国であるのみならず、名前こそ「国際」と冠されていたにもかかわらず、しょせんはヨーロッパ公法にすぎなかった国際法を、真の意味での国際法にした国こそが大日本帝国であることを明らかにしました。

わが国はヨーロッパ列強に「お前たちは文明国ではない」と不平等条約を押しつけられ、狂おしいほどに努力しました。富国強兵で経済力を蓄えて、帝国陸海軍を育て上げ、日清・日露戦争で有無をいわせない大勝利を獲ました。それも、ただ勝つだけではなく、誰よりも国際法を守り文明的に振る舞ったという意味で、有無をいわせず。

第一次世界大戦後にヨーロッパは没落し、近代史において初めて、欧州以外の国が世界の大国となります。アメリカと日本のことです。そして、国際紛争を解決する普遍的国際機関であると謳った国際連盟も設立されます。

しかし、アメリカは世界の秩序に責任を持つことを放棄しました。自ら設立を提唱した国際連盟にも加盟しないという無責任さです。仮にアメリカが連盟に参加したとしても、国際紛争を解決する能力はなかったでしょう。アメリカは、国際法を理解できる文明国ではないのですから。

もちろん、アメリカは「人を殺してはならない」という価値観を共有できる国ではありますが、アメリカ人にも色々います。悲劇的だったのは、アメリカが世界の大国に躍り出た時の大統領がウッドロー・ウィルソンだったことです。ウィルソンの悪行については、私は多くの著書で述べてきたので一言だけ述べます。現在の人類の不幸は、控えめにいって、9割がウィルソンに原因があります。

第一次世界大戦後の秩序を担ったのは、大日本帝国でした。旧大国の英仏は、世界中の恨みを買っています。だから、国際法の模範生である日本が、国際連盟に持ち込まれる紛争を処理し、二つの世界大戦間のかりそめの平和を維持していたのです。

ところが満洲事変で日本と国際連盟が衝突し、不幸な決裂を迎えました。これが世界の不幸につながります。

当時、世界は野蛮な国であふれていました。そして第二次世界大戦において、三人の野蛮な指導者が世界を不幸のどん底に叩き落としました。

1人目が、ナチス・ドイツを率いたアドルフ・ヒトラー。ナチスを率いるヒトラーは、「ユダヤ人を皆殺しにすればドイツ人は幸せになれる」などと唱え、第二次世界大戦を引き起こします。愚かにも大日本帝国は、ナチス・ドイツと同盟を結んでしまいます。では、なぜそんな愚かなことをしたのか。日本の隣には、ナチスよりも悪い国があったからです。共産主義の盟主であるソ連です。

2人目が、ヨシフ・スターリン。ソ連の独裁者です。スターリンは、ドイツとイギリス、日本とアメリカを闘わせ共倒れにさせようと、あらゆる謀略を駆使しました。

イギリスやアメリカは、ナチスと戦うためにソ連と組みます。また英米は、アジアでは中華民国を支援し、日本との対立を深めます。そして米英ソ中は、ナチスと日本を相手に世界大戦を戦います。スターリンの思う壺です。しかし、謀略は相手が錯誤をしてくれて初めて、功を奏します。

3人目が、フランクリン・D・ローズベルト。アメリカの大統領です。三選禁止の不文律を破り、四選を果たした人物です。この人物は、ナチスと大日本帝国を敵視し続けました。

そして、日米戦争を引き起こし、英独戦争に介入しました。

結果、どうなったか。ナチスが消えたのは良いとしましょう。しかし、大英帝国も世界中のすべての植民地を失い、名ばかり大国に転落しました。アメリカとて、無傷で手に入る世界の覇権だったはずが、半分をソ連に渡してしまいました。

そして、現代。

冷戦は終わりましたが、それはヨーロッパでの話です。今日も、北朝鮮の核開発をめぐり、アメリカと中露両国がにらみ合っています。

国際法を理解しているのか怪しい、アメリカ。

国際法を理解したうえで破る、ロシア。

そもそも法を理解できない、中国。

そもそも人の道を理解できない、北朝鮮。

そうした国々に囲まれて、「日本」は国名ではなく地名にすぎなくなっています。周辺諸国が核兵器を手に激しく火花を散らす中、右往左往するばかりです。

これが文明の姿か。

本書では、国際法を通じて現代史を振り返りながら、いまの野蛮な世界でどのようにわが国が生き残ればいいのか、考えていきたいと思います。
 

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