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「mixi」「モンスト」がホームラン級サービスに育った秘訣~笠原健治・ミクシィ会長

マネジメント誌「衆知」

2018年02月06日 公開 2018年02月06日 更新

「mixi」「モンスト」がホームラン級サービスに育った秘訣~笠原健治・ミクシィ会長


 

笠原健治(かさはら・けんじ)
株式会社ミクシィ会長。1975年大阪府生まれ。東京大学経済学部卒。1997年大学在学中に求人情報サイト「Find Job!」の運営を開始。1999年に法人化、代表取締役に就任。2004年ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「mixi」の運営を開始。2006年に株式会社ミクシィへ社名変更し、東証マザーズへの上場を果たす。2013年会長に就任し、現在に至る。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス「mixi」(ミクシィ)によって、ネットにおける新しいコミュニケーションの場を生み出し、数多くのユーザーを獲得した株式会社ミクシィ。続くスマートフォン向けゲーム「モンスター・ストライク」も、4000万人のプレーヤーに愛好され、世界トップのゲームアプリに成長している。時代の主戦場といえる新分野で、次々とホームラン級のサービスを生み出している秘訣とは何か。笠原健治会長に、ユーザーの心をとらえるための考え方をうかがった。

取材・構成:平林謙治
写真撮影:山口結子
 

「ユーザー・サプライズ・ファースト」の姿勢で

「感動を生み出す」という視点から「mixi」というコミュニケーションサービスの事業化をとらえ直すと、「つながる感動」はもちろんのこと、「つながりが深まる感動」をどう創出するかが最も重要な課題であったことは間違いありません。

つながりが深まるのを手助けするために、ユーザー同士がもっと仲よくなれるような、もっとコミュニケーションしやすくなるような機能やサービスの開発・拡充に努めてきたわけですが、一方でSNS市場全体が成長するにつれて、サービスになんらかの目新しさ、つまり新しい付加価値や新鮮なユーザー体験が十分に練り込まれていないと、なかなか使い続けてもらえない、という現実も痛感するようになりました。いくら楽しい、面白い、居心地がよいといっても、そこから生まれる感動は、永遠ではありませんから。

出したものの、なかなかうまくいかなかった「mixi」上のサービスもあります。「mixi」ほどのユーザーボリュームがあれば、流行っている他社のサービスを持ってきて少し焼き直すだけでもある程度成功するだろう、と安易に考えたのが失敗の原因。やはりユーザーからすると、それでは目新しさに乏しく、最初は受けても、飽きられてしまうのが早かったですね。ユーザーの多さにあぐらをかいてはいけないと、思い知らされました。

そこで、2009年には「mixiアプリ」のサービスをスタート。外部のゲーム会社などと連携して、その会社が開発したコミュニケーションサービスやゲームなどを「mixi」上で展開できるようにしました。なかでも、リリースした当初から爆発的な人気を博したのが、牧場育成シミュレーションゲームの「サンシャイン牧場」です。つながっている友達と楽しさを共有することでもっと仲よくなれるツールであり、かつ、ユーザー体験としての新しさも備わっていたからこそ、あれほど多くの人の心をつかむことができたのでしょう。

われわれは、こうした新しい価値やユーザー体験の提供を重視する姿勢を「ユーザー・サプライズ・ファースト」と呼び、現在、社を挙げて徹底しています。ユーザーの希望やニーズに合わせる「ユーザー・ファースト」は当たり前。それを超えて、ユーザー自身が予想さえしていない新しい体験――驚き、喜び、刺激を与え続けようというのが、「ユーザー・サプライズ・ファースト」の考え方です。そのためにサービスのつくり手は、過去の成功体験も捨てて、絶えず新しい手法を試し、挑戦し続けなければなりません。

この「ユーザー・サプライズ・ファースト」のかけ声が最初に上がったのは、トップや経営陣からではなく、実は現場のある1チームからでした。ゲーム・映像コンテンツを統括する事業部門として2015年に新設した「XFLAG スタジオ」。ほかでもない、世界中で4000万人以上のプレーヤーに愛好されているスマートフォン向けゲーム「モンスター・ストライク」(略称「モンスト」)を開発し、運営しているチームです。

「モンスト」は2013年にリリースされて以来、急拡大を遂げ、今や「mixi」に代わる当社の経営の新しい柱となるまでに成長しました。ヒットの要因は、ひとえに「XFLAG スタジオ」の前身である担当チーム、現社長の森田(仁基)や取締役の木村(こうき)らのプロジェクトチームメンバーの頑張りです。それなしに、モンストの立ち上げと成功はありえなかったでしょう。私自身は基本的に見守ってきた立場なので、彼らには本当に感謝と尊敬の気持ちしかありません。

彼らも元々、「mixi」のサービスに長く従事していて、特に先述の「mixiアプリ」の件で非常に苦労した経験を持っています。外部の会社と組んで「mixi」上に出すアプリをつくるにあたり、「mixi」でつながっているユーザー同士がどうすればもっと仲よくなれるのか、どうすればもっと楽しくコミュニケーションできるのか、新しい体験や価値を提供するにはどのようなサービスがいいのか――日夜、とことん考え続けてきたメンバーなのです。SNSの「mixi」で培われたその経験が、「モンスト」というゲームコンテンツの開発にも存分に活かされた結果だと思います。「モンスト」は、従来のスマートフォンゲームとは一線を画すもの。独りで遊ぶのではなく、友達とつながってワイワイ楽しむことにフォーカスしてつくられているからです。「〝つながりが深まる感動〟を生み出す発想 × スマホゲーム」――「モンスト」の挑戦はそこから始まりました。

※本記事は、マネジメント誌「衆知」2017年11・12月号、特集「感動を生み出す」より一部を抜粋編集したものです。

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