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業績拡大を続ける名物社長の働き方改革実践メソッド

小山昇(株式会社武蔵野社長)

2019年02月26日 公開 2022年12月27日 更新

小山昇

「早帰り」の風土をつくる

「早く帰りなさい」と指示を出しても、実際には上司が見ていないところで残業するという可能性があります。

その対策として全営業所に導入したのが「ネットワークカメラ」です。これによって、管理職は携帯しているタブレット端末から営業所内の様子をいつでもモニタリングできるようになりました。遅くまで残っている社員がいれば、出張先からでも帰宅を促すことができます。

実際には上司は見ていなくても、「見られているかもしれない」と思うだけで、おのずと社員は早く帰ろうとします。ネットワークカメラは、設置するだけで残業の抑止力になります。

また、全社的な取り組みとして、「早帰り推進チーム」をつくりました。

これは部門を横断して改善を進める社内プロジェクトの一つで、抜本的に就業時間を見直し、社内に「早帰りの風土」を根付かせるという使命を帯びて発足しました。

彼らに対して、私は「売上は下がってもいいから、残業時間を減らせ」と指示しました。それは、今早帰りに取り組めば、短期的に売上が下がったとしても、人が辞めないので長期的には有利になると考えたからです。

ところが、真面目で優秀なチームのメンバーたちは、次のように考えて、みずから取り組んでくれました。

「残業時間を減らすためなら仕事を投げ出してもいい、ということではない。簡単なことではないけれども、仕事のレベルを落とさず、残業時間を減らす方策を考えよう」と。

彼らは「早く帰る人」と「遅くまで会社に残る人」を比較・分析し、「成績がよい人ほど早く帰り、悪い人ほど遅くまで会社に残っている」という事実を突き止めました。

そして「成績がよくて早く帰る社員」の仕事のやり方を一般化して横展開することで、全社的な残業削減に結びつけました。

 

人手不足の時代を中小企業が生き残るには

私が「売上は下がってもいいから、残業時間を減らせ」と指示したのには理由があります。それは、世の中のトレンドが変わったからです。

日本の人口は2008年にピークを迎え、2011年以降は減少局面に入りました。

そして、政府は赤字国債を減らすといって消費税を5パーセントから8パーセントに上げましたが、実際には株価を上げるためにお金を使っています。2020年の東京オリンピックに向けて公共事業を増やしている。最低賃金も引き上げた。

つまり、仕事は増えるけど、人が集まらないという状況になった。なかでも中小企業の人手不足が深刻になることは目に見えていました。

こういう時代に、若い人に入社してもらい、働き続けてもらわなければならない。では、当の若い人たちは、働くことについてどう考えているのか。

ひと昔前までは、「給料がいい会社がいい」と答える若者が多かった。今は違います。「給料はそこそこでいいから、ちゃんと休みが取れる会社がいい」と答えます。

残業や休日出勤の多い会社は人気が出ません。仮に入社しても、休みが取れなければすぐに辞めてしまいます。

「ちゃんと手当を出すんだから」「働いたら働いた分だけ、やりがいも大きいんだから」などという話は、もはや通用しないのです。いつまでも過去の感覚で物事を考えていると、中小企業は生き残っていけません。

若者の価値観は変わった。だとすれば、若者の変化に合わせて、会社をつくり替えないといけません。それに気がついたことで、武蔵野は全く別の会社になりました。

【小山 昇(こやま・のぼる)】株式会社 武蔵野 代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒業後、1976年に株式会社武蔵野の前身である日本サービスマーチャンダイザー株式会社に入社。一時独立するが、復帰して1989年より代表取締役社長に就任。赤字続きの会社を増収を続ける優良企業に育て、日本で初めて「日本経営品質賞」を2度受賞(2000年度、2010年度)。同社の経営の仕組みを紹介する経営サポート事業を展開し、700社以上の会員企業を指導、うち400社は過去最高益を出している。「経済産業大臣賞」(2001年度)、「IT経営百選最優秀賞」(2004年度)受賞。

 

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