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韓国経済は崩壊寸前だ

《 『Voice』 2008年12月号より》

2次曲線を描くような暴落

 韓国経済が、第2次通貨危機の瀬戸際にまで追い込まれている。本原稿を書いているのは10月初旬だが、本稿が掲載される『Voice』が発売されるまで、はたして韓国が第2次通貨危機突入を回避できているかどうか、正直、まったく自信がもてない。

 2007年の秋まで「ウォン高」により輸出企業が苦しめられていた状況から一転、最近の韓国では逆に過度の「ウォン安」が進んでおり、今度は「韓国経済全体」が危機に陥っているのだ。

 韓国ウォンは2007年10月末に瞬間風速で1ドル900ウォンを切るまで上昇し、ウォン高のピークをつけた。その後は一貫して通貨の下落が続いたが、2008年の夏に至るや否や、ウォンはまるで2次曲線を描くような速度で暴落を始めたのである。

 米大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻し、世界的な金融危機とドルの枯渇が拡大した2008年9月には、韓国ウォンはついに1ドル1200ウォンの壁を突破した。

 さらに10月に入るや否や、ウォンの暴落に明らかに加速がかかり、10月8日の終値はなんと1395ウォン。07年10月末のピークから、韓国ウォンは1年もたたずに55%も下落してしまったのだ。尋常な事態ではない。図1のウォンの対米ドル推移のグラフを見ていただければ、現在の韓国に明らかに通貨危機の兆候が見られるのがご理解いただけると思う。

 いまだ韓国当局に若干の余裕があった2008年初めごろは、ウォンの下落は韓国の輸出製造業を潤すため、かえって都合がいい、などという論調が流行っていた。たしかにウォン安により、それまで通貨高に苦しめられていたサムスン電子や現代自動車などの大手輸出企業が救われた面もある。しかしその直後から畳み掛けるように襲い掛かってきたウォンの下落に折からの世界的な資源高の圧力が加わった。韓国の輸入物価が急上昇を始めるに至り、ついに韓国の中央銀行は手持ちのドルでウォンを買う為替介入、いわゆる為替防衛を大っぴらに開始したのであった。

 2008年7月の韓国の輸入物価上昇率は、対前年比で50.6%にも達したが、これは韓国がアジア通貨危機に苦しんでいた1998年2月以来の高水準である。輸入物価が上昇した結果、韓国は輸入金額の増加率が輸出のそれをつねに上回るようになり、恒常的な貿易赤字状態に陥ってしまった。08年の韓国の貿易収支(通関ベース)は、5月を除くすべての月において赤字である。

 中国やドイツのような輸出大国、貿易立国を志していたはずの韓国において、貿易赤字が続いているのである。韓国経済が何らかの構造的な問題、それもきわめて深刻な問題を抱えているのは明らかであろう。

 韓国経済が抱える問題点は、貿易赤字・経常収支赤字やウォン暴落だけではない。たとえば現在の韓国は、外資による直接投資と証券投資の激減という難題も抱えている。

 9月24日の国連貿易開発会議発表の、2008年版『世界投資報告書』によると、07年の外国人投資家による韓国への直接投資額は26億3000万ドル。対前年比で46.1%もの大幅な減少になってしまった。韓国への直接投資額が減少したのは、じつは05年から3年連続である。

 また証券投資に至っては、激減どころか、外国人投資家による韓国株式市場からの売り逃げ、俗にいう「セル・コリア」現象が起きている。アジア通貨危機によりIMF管理下に置かれて以降、韓国の株式市場における外国人投資家の持ち株比率は上昇を続け、2004年には44%にも達した。しかし07年初め以降、外国人投資家は毎月のように韓国株式の売り越しを続け、07年9月には外国人持ち株比率が30%を割るところまで落ち込んでしまったのである。

 韓国への直接投資の減少にせよ、外国人投資家による「セル・コリア」にせよ、韓国ウォンを下落させる一因になっていることはいうまでもない。

 さらに韓国は「純債務国」転落という、厳しく、同時に大きな問題も抱えている。

 韓国は2000年6月以降、一貫して日本と同様に対外債権が対外債務を上回る純債権国だった。だが韓国の経常収支が赤字化した結果、韓国の対外債権は減少し、同時に対外債務の増大が続いた。08年第2四半期末時点における韓国の純債権額は、わずかに27億1000万ドル。第1四半期末と比較して、100億ドルを超える減少である。

 第3四半期末の統計はまだ発表されていないが、韓国は今年の8月、もしくは9月に純債務国に転落した可能性がきわめて高いのだ。

 純債務国ということは、要は海外への借金の額が貸付額よりも多いわけだ。そして韓国の対外債務は、基本的に外貨(とくにドル)建てである。最近の韓国ウォンの暴落は、韓国の対外債務のウォン建て額面を増大させ、韓国を刻一刻とデフォルト(債務不履行)へと追い込みつつあるのである。

 韓国経済が抱える問題、「貿易収支・経常収支の赤字化」「ウォンの暴落」「直接投資・証券投資の激減」「純債務国化」は互いに関連し、マイナスの影響を与え合っている。要は韓国経済は構造的に「悪循環」に嵌まり込んでしまっており、そこから抜け出せずにもがきつづけているのである。

「日本頼み」経済構造の末路

 一時は飛ぶ鳥を落とす勢いに見えた韓国経済が、なぜかくも惨めな有り様に陥ってしまったのであろうか。筆者はここで、韓国経済の基本構造を解き明かし、なぜ韓国が悪循環に嵌まってしまったのかを解説したい。

 そもそも、韓国経済の特徴を一言で表すと「外需依存国家」となる。

 外需依存ということであれば、日本と同じと思えるかもしれないが、それは大変な誤解である。じつは日本が「外需依存国家」という表現、レッテルは、一部の大手経済紙などが広めたでたらめ、すなわちミスリードなのだ。

 実際の外需依存度、すなわち輸出対GDP比率を見てみると、日本の外需は諸外国に比べてむしろ小さい組に所属する。すでに製造業の多くが衰退してしまったイギリスと比較してさえ、日本の外需依存度は小さいのである(2007年の外需依存度は、日本が15.4%、イギリスが15.9%。図2)。

 世界最大の内需国家であるアメリカに比べれば、たしかに日本の外需依存度は大きい。だが、主要国では外需依存度が下から2番目の日本を「外需依存国家」と呼ぶのは、さすがに無理がある。日本はむしろ、相対的な内需依存国家である。

 それでは韓国はどうかと見てみると、2007年の外需依存度は38.3%。中国(外需依存度37.43%)やドイツ(同40%)などと並び、正真正銘の外需依存国であることがわかる。

 ところが「輸出対GDP比率(外需依存度)」ではなく「貿易黒字対GDP比率」で韓国を他国と比較してみると、きわめて興味深いことがわかる。代表的な外需依存国であるドイツや中国の「貿易黒字対GDP比率」が共に8%を超えているのに対し、韓国はわずかに1.52%と比率が極端に低い。「内需依存国」である日本と比較してさえ、韓国の「貿易黒字対GDP比率」は低いのである(日本の「貿易黒字対GDP比率」は2.4%)。

 先述したとおり、2008年の韓国はほとんどの月で貿易赤字を続けている。今年の韓国の「貿易黒字対GDP比率」はマイナスの領域に落ち込むであろうことが、現時点でほぼ確定的である。「内需依存国家」日本よりも「貿易黒字対GDP比率」が低いのであるから、韓国がいかに効率の悪い貿易をしているか、別の言い方をすれば韓国の輸出産業の付加価値がいかに低いかがわかる。

 基本的に、サムスン電子や現代自動車、現代重工業などに代表される韓国の輸出製造業のビジネスモデルは、「日本部品」のアッセンブル(組み立て)工場である。日本から資本財(鉄鋼材などの原材料や、部品など)の輸入がないことには、韓国の輸出製造業は成り立たない構造になっているのである。

 結果、必然的に韓国は日本に対して毎年、莫大な貿易赤字を献上しつづけている。2007年の韓国の貿易黒字総額1150億ドル程度に対し、対日貿易赤字はなんと299億ドルにも達したのだ。韓国は毎年毎年、懸命に日本に貿易赤字を貢ぎながら、輸出規模から見ると過小ともいえる、わずかな額の貿易黒字を稼ぎつづけていたのである。そして、そのわずかな貿易黒字さえも、08年からは稼げない可能性がきわめて高い。

 アジア通貨危機以前の朴正煕の時代から、この「日本頼み」経済構造については問題視されていた。要は製造業の裾野があまりにも狭すぎ、日本からの資本財輸入なしでは産業が成り立たない構造になっているのである。

 資源国ではない韓国は、対日に加えて中東諸国に対しても大きな貿易赤字を献上しつづけている。原油を全面的に中東からの輸入に頼っている以上、当然ではあるのだが、この歪んだ構造をもつ韓国経済に対し、容赦なく資源高、エネルギー費高騰が襲い掛かってきたわけだ。

 2007年から今年にかけた資源価格や原材料価格の上昇、さらにはサブプライムローン問題に端を発する金融危機により、ウォンの暴落までもが一度に発生してしまった。輸入物価が対前年比で50%を超える上昇を見せるなか、世界的な外需縮小で輸出が頭打ちになってしまった結果、韓国は貿易赤字国に転落したのである。

バブルにすぎなかったウォン高

 ところで、貿易収支は経常収支の1項目である。経常収支は4つの項目から成り立っているが、残りの3つ、貿易収支以外の3つの収支をご存じだろうか。

 正解は「サービス収支」「所得収支」「経常移転収支」である。韓国は海外旅行や留学などの収支であるサービス収支が毎年大赤字を繰り返し、経常収支の足を引っ張りつづけてきた。また韓国は海外への配当金や利払いが多いため、所得収支もけっして良好とはいえず、さらに海外送金(留学している家族などへの)が膨れ上がった結果、経常移転収支までも赤字から抜けられない状況にあった(図3)。

 この状況で貿易収支までもが急速に悪化したわけであるから、韓国の経常収支全体が一気に赤字化したのも当たり前である。そして経常収支が赤字化した結果、対外債権の減少が始まり、ついに韓国は純債務国に転落してしまったのだ。

 また、経常収支が赤字ということは、海外からの収入よりも、海外への支払いが多いことを意味する。海外への支払いが多ければ、それだけ多くのウォンがドルに両替されることになる。韓国ウォンの下落に拍車が掛かっても、むしろ当たり前の話なのだ。

 前述したように、韓国ウォンの下落は輸入物価を高騰させ、貿易収支の赤字を悪化させる。そして貿易収支の赤字が拡大すれば、それだけ海外への支払いが膨らみ、ウォンの下落が加速していく。

 見事なまでの、悪循環である。

 ところで、経常収支悪化などを主因とする韓国の通貨下落が顕著になったのは、2008年に入ってからであるが、経常収支そのものは2006年前半から月によっては赤字化していた。韓国は06年、07年と2年連続で、上半期の経常収支赤字を下半期に挽回することを繰り返していたのである。

 ところが経常収支の赤字が続いていた06年上半期、07年上半期においても、韓国ウォンはほぼ一貫して上昇を続けていたのだ。また、同時期に韓国国内では株式バブルと不動産バブルが発生していた。通貨が上昇し、株式や不動産価格が高騰しているのであるから、この時期の韓国は一見、景気が良いように見えた。これはいったい、なぜだろうか?

 じつは、この時期はいまだ世界的な金融バブルの真っ最中で、韓国に対しても膨大な投機マネー、フェイクマネー(レバレッジにより膨らまされた架空のマネー)が流れ込んでいたのだ。海外からなだれ込んだマネーはウォンの需要を拡大し、歪んだ通貨高を引き起こした。そしてウォンに両替されたマネーが株式市場と不動産市場に流れ込み、バブルを引き起こしていただけなのである。

 これはなにも韓国だけの問題ではなく、世界の新興経済諸国の多くに見られた現象である。

 要するに韓国の07年までのウォン高は、必ずしも韓国の経済が好調だったためではなく、海外からの投機マネーに依存するところが多かったのである。その後はご存じのとおり、07年夏にサブプライムローン関連の株式・不動産バブルが世界各国で破裂し、世界的な金融収縮が起きた。

 韓国に投下されていた投機マネーについても、一斉に引き揚げが始まった。これが先述の韓国への直接投資と証券投資の激減につながるわけである。

 韓国からのマネーの引き揚げは、ドルなどの外貨への需要を高め、ウォン安の一因となる。韓国の現在のウォン安には、経常収支赤字拡大、貿易収支赤字化のみならず、世界的な金融危機も大きく影響しているのだ。

自らを「貧しく」できるか

 今後、韓国ウォンがどこまで下落していくかは誰にも予想がつかないが、1つだけ確実なことがある。

 それは、現在の韓国の経済構造では、世界的な金融収縮を潜り抜けられないのはもちろん、それ以降の世界においても順調な経済成長路線など望めないということだ。

 なぜならば、韓国は「日本の資本財依存」「日本部品のアッセンブル工場」という構造的な問題を抱えているのに加え、ここ数年の国内の人件費高騰により、かつては持ち合わせていた「安価」という競争力までをも失ってしまったからである。

 暴力的な労働組合が跋扈し、暴動じみた労働争議が相次いだ結果、最近の韓国の人件費は留まるところを知らないように急騰を続けていた。いまや韓国の大手企業の初任給は、日本大手企業のそれをも上回るのである。むろん、韓国の国民所得はいまだに日本の半分以下であるから、これがいかに異常な事態であるか、おわかりいただけると思う。

 韓国経済は21世紀初頭の数年間で、自らの競争力の根源を、1つ、また1つと失っていった。結果的に、韓国で生み出される付加価値が激減し、貿易収支までもが赤字化した状態でサブプライムローン問題に端を発する金融危機、世界的な需要の収縮を迎える羽目になったのである。

 もはや経済成長以前に、通貨危機の可能性さえも差し迫る状況にもかかわらず、2008年9月末、李明博大統領が率いる韓国政府は「2012年に経済成長率が7%に高まる」などという見通しを発表した。正直、国家としての競争力を失ってしまった韓国が年に7%経済成長するなど、通貨危機によりGDPが激減したあとでもなければ、ちょっと考えられない。

 2008年10月に入り、ようやく事態をのみ込めたと見え、第2次通貨危機に怯える韓国当局が、いきなりドルの確保に血眼になりはじめた。

 外貨準備高が枯渇したのか、あるいは手持ちの外貨を使用したくないのかは不明だが、韓国政府は民間の大手輸出企業に対し、いきなり各企業の手持ちのドルを為替市場で売却するように要請した。また与党ハンナラ党のパク・ヒテ代表は、韓国国民にドルを提供させるために「金庫や箪笥のなかにあるドルを差し出すことが、愛国心の発揮につながる」と発言している。

 まさに1997年の再来である。

 先述したように、現在進行形で拡大する金融危機やドル枯渇の猛威を潜り抜けたとしても、韓国経済が順調に経済成長していくことは、いまとなってはほぼ不可能だ。韓国が経常収支赤字と対外債務を積み上げ、ウォン下落により輸入物価が押し上げられ、物価上昇が貿易収支赤字を拡大し、さらなる経常収支の赤字拡大を招く悪循環から抜け出せない以上、当然である。

 逆にいえば、この悪循環を断ち切ることさえできれば、韓国経済は危機から脱することも可能となる。

 そのためには大幅なウォン安を許容し、国内の給与水準を下げることで人件費を大幅に削減し、輸出製造業の競争力を回復させるしかない。韓国国内の最大の問題ともいえる人件費高騰が解消されれば、韓国への直接投資も、増加基調を取り戻せるかもしれない。

 輸出製造業の競争力を回復させると同時に、外貨浪費の最大の原因である海外旅行や海外留学を制限する必要がある。さらに国民生活を豊かにする奢侈品の輸入を減らし、貿易収支を黒字化させる、一種の「重商主義」的な戦略を採ることが望ましい。

 海外旅行・留学が減少することでサービス収支の赤字が縮小し、貿易収支が黒字路線を回復すれば、韓国の経常収支全体が黒字化する。経常収支を黒字化することができれば、いずれ純債務国から脱することも叶うだろう。

 しかしウォンの大幅な下落は、むろん国内のインフレーションを悪化させる。物価上昇のなかで労働者の給与水準を下げるのであるから、韓国の社会情勢は不安定にならざるをえないであろう。

 要するに韓国経済への処方箋は、韓国国民に対し、自分たちの生活レベルを下げ、より「貧しく」なることを求めるのである。中国や東南アジア諸国など、より人件費の安い国から激しい追い上げを食らっているにもかかわらず、自国技術がまったく育っていない以上、韓国の選択肢は残念ながら他にありえない。

 だが、いくら国家経済の危機とはいえ、自分たちに「貧しくなれ」という施策を「あの」激しい気性の韓国人たちが、はたして素直に受け入れるだろうか。筆者には、甚だしく疑問に思えるのである。

 ※図は割愛させていただきます。

http://shuchi.php.co.jp/

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