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日本企業が遅れを取った要因…海外で「ファイナンス部門」が重視される理由

梅澤真由美 (公認会計士、管理会計ラボ株式会社代表取締役)

2020年02月25日 公開 2022年03月04日 更新

 

会計は他人のためのもの、ファイナンスは自分のためのもの

「金額で考える」といっても、「会計」とはまた性質が異なります。
会計は、企業の過去を記録するための方法、人に報告する「他人のため」のものです。

一方、ファイナンスはよりよい未来をつくるための意思決定ツール、つまり「自分のため」のものです。

手元にあるお金が、将来にわたってどれだけのお金を生み出すのか。そのお金は、いつ発生するのか。こうした未来の情報が重要視されます。その未来の情報を元に、何らかの意思決定をするのがファイナンスの目的です。

仕事で最も身近な「予算管理」もファイナンスの一種です。将来の目標としてなんとか達成できそうな水準の予算を作成し、それを実際に達成できるように進捗管理していくからです。

その情報をもとに判断したほうが、勘や経験則や他社例といったあいまいなものだけに頼るよりも、判断にかかる時間も減り、成功の可能性が高くなります。

会計はコミュニケーションツール。
ファイナンスは意思決定のツール。

このような違いがあるのです。

 

会計は見てもファイナンスは見ない日本企業

私は、日本マクドナルド(株)で経理・予算管理など、経営財務分野の業務に携わった後、「将来を変え、事業に貢献できる」ファイナンスのおもしろさに気がつき、ファイナンスの先進企業であるウォルト・ディズニー・ジャパン(株)に転職してファイナンスマネージャーを務めました。現在は、ファイナンスや管理会計専門の公認会計士として活動しています。

ファイナンスが志向する将来の予測数字は、会計で集計された過去からの推移を参考にしてつくるのが必須です。

ディズニー時代の上司だった経営者は、経営を車の運転に例えてこう言いました。

「アカウンティング(会計・経理)はバックミラーで、ファイナンスはヘッドライト」

過ぎ去った後ろの景色を見るためのものがバックミラー。これから進む方向を照らすのがヘッドライト。安全運転には、どちらも欠かせません。両者に優劣はなく、その役割が異なるのです。

そして、ファイナンスを担っていた私は、彼に、

「上手に運転できるよう、ヘッドライトとして前をよく照らしてくれ」

と、何度もいわれました。ファイナンスを知り尽くした経営者の珠玉の名言だと思います。

ウォルト・ディズニー・ジャパンをはじめ、日本でビジネスを展開するアメリカ系の外資系企業は、ビジネスのあらゆる部門に数字を管理するファイナンス部門が寄り添っています。意思決定にはすべてファイナンスの同意を得なければ進みません。

これに対して日本企業は、数字を扱うのは経理・財務や経営企画部だけで、現場との連携は少ないようです。しかも、扱う数字は全社の数字を集計した数字で、部門ごとの数字が現在進行形で顧みられることはあまりありません。

全社を集計した数字ですら、過去の数字は取りまとめますが、将来の数字がどうやったらよくなるかまでは関与しません。会計は見てもファイナンスは見ないのです。

将来の数字を考えるのは、日本企業では経営企画部門です。しかし、そこも比較的定性的な戦略に偏ってしまっているので、将来の数字を担当する部門や人が手薄になっているのが現状です。

この問題を解決するために必要なのが、「事後検証」なのです。

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事後検証はPDCAを回すことを主眼に置く

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