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社会

G7で最悪の水準…日本で自殺者がこれほど多い2つの理由

河西千秋(精神科医)

2020年07月21日 公開 2023年09月12日 更新

 

企業内で敬遠されるメンタルヘルス

一方で、抜本的なメンタルへルス対策まではなされておらず、具体的な対策、たとえば精神疾患の早期発見・早期受診のための啓発や、教育制度改革(一般、医療従事者)、精神医療や精神障碍者の支援体制の充実は決して進んではいない。

以前より、勤労者の過労自殺が問題になっているが、自殺総合対策大綱においても勤労者の自殺予防は課題とされている。そもそも、労働安全衛生法では、企業が社員の心の健康を保つことが義務付けられ、さまざまな指針などが通達されてきた。

実際に、心身に支障をきたした社員が現れた場合、手続き的には、企業(雇用者)側の産業医が対応し、休職・復職制度も利用される。しかしほとんどの場合、事務的な流れに沿って対応されるに過ぎない。

たまたまメンタルヘルスを重要視する文化をもつ企業であったり、親身になってくれる上司や産業医、嘱託精神科医との幸福なめぐり合わせでもないかぎり、無事に復職できたとしても、再休職することなく就業を継続できるかどうかはわからない。

私が多くの企業に携わった経験からいえば、多くの実態では、メンタルへルス不調者の話題は社内で嫌われ、大半の上司はその対応に苦手意識を感じていた。産業医ですら、不調をきたした社員は、早晩、辞めるしかない、と考えている者も少なくなかった。

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