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「部下に会わずに育てる」には? テレワークで変わる「人材育成」

古谷治子(マネジメントサポートグループ代表)

2020年09月10日 公開

「部下に会わずに育てる」には? テレワークで変わる「人材育成」

働き方改革の推進に加え、コロナ禍によって、テレワーク(リモートワーク)を取り入れる企業が急速に増えている。しかし、出勤しての仕事とは色々と異なるため、仕事の進め方や相手への気遣いの仕方に関して戸惑う声も。

そこでテレワーク時代の新しいビジネス作法について、「品格」「モチベーション」「スキル」をベースとする三位一体教育の第一人者である古谷治子氏にアドバイスをいただく(取材・構成 塚田有香)。

※本稿は『THE21』2020年10月号より一部抜粋・編集したものです。

 

丁寧な質問と声かけで部下の課題を把握する

テレワークの導入で社内のコミュニケーションが非対面になり、「情報が伝わりにくい」「人間関係が希薄になった」などの課題を抱えるリーダー層が増えています。特に新人や若手の部下がいる場合、リモートでどのように人材育成すればいいのかと悩む上司は多いようです。

非対面で部下を育てるには、「いちいち、しつこく、はっきりと」がコミュニケーションのポイントです。対面のとき以上にコミュニケーションの頻度を高め、指示は明確かつ具体的に伝えることが重要となります。

私の会社ではテレワークの開始以降、少人数のグループごとに週に一度オンラインミーティングを行なっています。

これは社内のコミュニケーションの量を増やすことと、メンバーの仕事の手順と成果を確認することが目的です。もし成果を出せていないメンバーがいたら、仕事を進める手順に何らかのムダや間違いがあるはずなので、リーダーが「このプロセスはどうやっているの?」「仕事で滞っているものはない?」などと質問を投げかけて、相手の答えを引き出しながら原因を把握します。

ここで大事なのは、上の立場の人間が先に質問すること。「何か困っていることやわからないことがあれば質問して」と言われても、部下は「こんなことを聞いたら頭が悪いと思われるのではないか」などと考えて発言をためらうので、上司から丁寧に質問して相手の言葉を引き出すように心がけましょう。

こうしたこまめなミーティングに加え、日頃からチャットなどで上司から部下に積極的な声かけをすることが重要です。

 

指示出しは5W2H報告は数字で明確に

部下にメールで指示を出すときは、5W2Hで具体的に伝えてください。中でも重要なのが「What(何を)」と「When(いつまでに)」です。 前者については、「何をどこまでやるのか」という「終わり」を明確に示します。

それが曖昧だと、やらなくていいことまでやり続けてしまいます。後者については、「今日中に」「朝イチで」などの表現はNG。「明日の朝9時半まで」などと日時をはっきり伝えます。

上司はよく「部下が指示通りに動かない」と言いますが、それは上司の指示がわかりにくいから。そもそも組織での立場上、部下が得られる情報量は上司より少ないのですから、指示を出す際は上司が必要な情報をきちんと渡すことが大切です。

部下に報告させる際も、数字で明確に伝えることをルールとします。「だいたいできています」といった曖昧な表現ではなく、「今週の達成率は目標値の65%です」などと数字で会話することをチーム全体で習慣化するといいでしょう。

ただし、期待通りの成果を出せない部下がいても、決して相手を否定しないこと。

「なぜできないんだ」「前も同じことを言っただろう」などの発言は、部下の成長を阻害するだけでなく、場合によってはパワハラと受け取られかねません。特にチャットやメールではお互いの顔が見えないので、否定語は非常に冷たく感じられます。

部下の成長を望むなら、できるだけ相手を褒めるように意識しましょう。その際も、「何がよかったのか」を明確に伝えること。すると本人もそのやり方を再現できますし、他の部下も真似できるので、チーム全体で成長することができます。

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