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社会

9億人分の食料が足りない…コロナ禍の陰で危機的な食料問題

井出留美(食品ロス問題ジャーナリスト)

2020年12月25日 公開 2022年10月25日 更新

井出留美

極度の食料不安を抱える人は2億7000万人

国連WFPが2020年11月17日に行った会見によると、極度の食料不安を抱える人は約2億7000万人で、新型コロナウイルスのパンデミック前より8割増えたという。

別の国連WFPの発表によると、COVID-19以前の極度の飢餓人口は推定1億4900万人であり、1億2100万人増えたことになる。

11月17日時点での新型コロナウイルスの感染者、5550万人(回復者3560万人)の4倍以上となっている。

 

SDGsが掲げる理想には、まだまだ程遠い

「食料危機に対するグローバルネットワーク」が2020年4月21日に発表したニュースリリースによれば、2019年末、急性で深刻な食料不安(IPC/CHフェーズ3以上)を経験していた人は55の国と地域で1億3500万人。

これは国連の年次報告書で毎年報告されている慢性的・構造的な飢餓と同じではなく、極度の飢餓であり、より深刻な状況を指す。危機的状況にある人の増加は、過去4年間で最も高かった。

2018年と2019年を比較すると、1100万人増加している。これは、コンゴ民主共和国や南スーダンなど、情勢の悪化や、ハイチ・パキスタン・ジンバブエなどにおける旱魃や経済危機の深刻化が要因となっている。

"2020-Global Report on Food Crises" によれば、2019年に170万人の子どもが急性栄養不足による消耗症、7500万人の子どもが慢性的な栄養不足のために発育阻害に陥っていた。

要因としては紛争・極度な気象・経済の混乱などがあり、紛争では7700万人、極端な気象で3400万人、経済の混乱で2400万人が極度の食料不安に陥っている。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の考え方は、「誰ひとり取り残さない(No one will be left behind)」である。

こうして見てみると、地球上に極度の飢餓状態の人が2億7000万人いて、食料不安を抱えている人が9億4000万人も存在している。SDGsが掲げる理想には、まだまだ程遠いと言わざるをえない。

 

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