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哲学者・ロックの名著が説く「自由、民主主義の根幹」とは?

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年07月27日 公開

 

『市民政府論』に見る企業を長く繁栄させる方法

会社における統治を考えてみます。株式会社の前提で考えると、執行権を担う人を決める票を握るのは、本来的には株主です。ただ、一般株主が会社の内情を詳しく理解することは難しいので、ほとんどの会社では取締役会から出された原案通りに、株主総会で経営者が選任されています。

問題は経営者が、純粋に株主や従業員などの公益のために判断できているか、ということだと思います。これは能力の問題ではなく、個人の動機付けやインセンティブの問題にもなります。

今世界や日本を見渡すと、創業経営者が健在の会社に勢いがあるように見えます。アップルやマイクロソフトはすでに代替わりをしていますが、メタ、アルファベット、テスラなどのアメリカ企業や、日本でもソフトバンク、楽天などが該当します。

創業経営者は大株主でもあることが多く、会社の発展が個人の利益につながりやすい構造ができています。ただ、カリスマとも言える創業者が関与しなくなったときに、これらの会社がどう変わっていくかは注目すべきでしょう。

日本には世界でも類のないほど、超長寿企業が多く存在しています。世界の創業100年以上の企業のうち、半数近くが日本企業だといいます。そのような企業は過度なリスクを取らない行動規範とともに、「実力主義」により経営者を決めているという原則があるようです。

その実力主義を貫く規律が制度により保たれれば、他の会社よりも長く繁栄できそうです。

『市民政府論』は国家の統治制度を考えきって紡ぎ出した本と言えるでしょう。その普遍性ゆえに次の国の統治形態や他組織の統治形態を考えるための起点にもなりえます。

不確実で不安定な時代を生きていく私たちにとって、本書はこの時代のルーツとなる1冊であり、読み解く価値のあるものです。

 

著者紹介

フライヤー(flier)

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