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スマホを落とすだけで謝礼が必要?意外と知らない日本の法律

山崎聡一郎(教育研究者)

2022年09月01日 公開

 

労働基準法は、働く人を守るための法律

例えばみなさんがアルバイトをするようになると、「ブラックバイト」といったことが問題になるかもしれません。

これは、最初に約束した以上のシフトに入ることを無理強いしたり、試験期間中に休ませないなど、学生生活に支障が出るような状態で働かせることです。

同じバイトを長く続けていると、「いつもお世話になっているから、店長を助けてあげたい」という気持ちが湧いてきたりします。そのような人情や優しい気持ちを持つこと自体は悪いことではありませんが、そういうことが重なって、「もうこれ以上働けない!」となることがあります。

「労働基準法」という法律では、すべての労働者が最低限度の生活を送るためのルールが定められています。これは正社員だけではなく、アルバイトにも適用されます。

どんな働き方をしていても、働く人の権利は法律が守ってくれるのです。働き出したら「自分は法律で守られている」ということを知っておくことは、とても大切なことです。

 

弁護士気分で「法律の考え方」を学んでみる

学校生活を送る中でも、「ああ言ったのにこうしてくれない」といった困りごとはよくあるはずです。そんなちょっとした事件があったときに、相手に事情があるからなのか、それともわざとなのか、1個1個のケースごとに判断していかなければなりません。

それには法律の考え方が役に立ちます。いじめも同じです。例えば誰かにいじめられたとき、周りの大人が「いじめられるあなたにも原因がある」と言うかもしれません。

そして自分自身も「そうかもしれない」と思い、「自分はいじめられても仕方ない人間なんだ」と泣き寝入りしてしまうことがあります。いじめの被害者が、いじめられたことによって自分自身を責める。そんなことがあってはなりません。

法律ではこのような状況を、明確に否定しています。法律におけるいじめの定義は、「被害者がいやだと思ったらいじめ」というもの。たとえ何らかの非が、いじめられた側にあったとしても、「いやだ」と感じたらいじめは成立するわけです。

このようないじめの定義を知っておくだけでも、いじめに対する周りの対応は変わりますし、自信をもって声を上げることができるようになるはずです。

そもそも法というものは、社会で皆が平和に暮らせるようにつくられたものです。異なった文化的な背景を持つ人々が多く暮らす外国で、法律が発展してきたのはそのためです。

日本も最近では、さまざまなルーツや価値観を持つ人が増えていますから、法律の考え方が求められる場面が増えていますし、これからもっと増えていくでしょう。

価値観が多様化すると、どうしても争い事が増えてしまいます。対立が起きたときに、暴力に頼ったり、諦めたりするのではなく、法律を使って考えることができればずっと生きやすい社会になるはずです。

法律はあなたを守ってくれる見えない盾と矛のようなものです。そして「自分は法律に守られている」と知ることは、あなたの気持ちを何倍も強くしてくれることになるのです。

(構成:黒坂真由子)

 

【山崎 聡一郎 PROFILE】
1993年東京都生まれ。教育研究者、写真家、俳優。合同会社Art&Arts代表。慶應義塾大学総合政策学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。2019年、自身の学生時代の研究プロジェクトをもとに『こども六法』(弘文堂)を刊行。「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究や講演を行いながら、ミュージカル俳優・声楽家としても活動中。

 

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