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アドラー心理学に学ぶ 目的志向の経営

2016年12月07日 公開

岩井俊憲(ヒューマン・ギルド代表取締役)

 

思考と行動を変える 実践!アドラー心理学

欧米ではフロイトやユングと並ぶ存在であり、日本でも近年絶大な支持を集めるアドラー心理学は、「勇気づけの心理学」と称される。長年その研究と普及に努める岩井氏が、経営や仕事に活かす実践法をレクチャーする。

岩井俊憲(いわい・としのり)
1947年栃木県生まれ。早稲田大学卒業後、外資系企業の管理者等を経て、’85年有限会社ヒューマン・ギルドを設立、代表取締役に就任。’86年アドラー心理学指導者資格を取得。上級教育カウンセラー。アドラー心理学にもとづくカウンセリングや公開講座、カウンセラー養成を行なうほか、企業や学校から招かれ、研修や講演を多数行なっている。

 

経営に「目的論」を取り入れ、人間性の回復を

私は大学で経営学を学んだ後、外資系企業で13年間働きました。最初の6年半で営業経験を積み、後の6年半で総合企画の仕事に従事し、傍(かたわ)ら2年間ほど人事課長を兼務していました。また、24歳の時に中小企業診断士の資格も取得しています。

その後、サラリーマンを卒業して、1985年からは有限会社ヒューマン・ギルドという資本金1200万円の会社の代表者として、アドラー心理学の普及をしながら、たくさんの企業や経営者とかかわりを持ってきました。

こうした経験からの実感ですが、1990年代の半ば頃から企業の中で人間性が軽視され、生産性ばかりが強調されてきているのではないかと憂えています。

もちろん私は、生産性を否定するわけではありません。企業の中で生産性と人間性は、どちらも欠いてはならない2つの軸です。言わば車の両輪、飛行機の左右の翼です。

ところが、成果主義の導入という生産性重視の施策によって人間性が失われた時代を見届けてきました。その余波が管理の強化であり、組織内でのダメ出しの風潮にもとづく「なぜ、どうして」の横行でした。

日本企業には、伝統的に信頼・親密に彩られた共同体(ゲマインシャフト)的な要素がかなりありました。お互いが助け合い、公私の分け隔てのない雰囲気があったのです。

しかし、新自由主義的な発想による競争関係強化によって、企業本来の機能体(ゲゼルシャフト)的な要素が強まっていきました。仲間がライバルになり、人間性軽視・生産性重視の片翼飛行のような風潮が見られるようになったのです。これはアドラー心理学が説く「共同体感覚」に反するものでした。

過度の生産性重視によって、失敗、不良発生、業績不振などのマイナス・ファクターに対し「なぜ、どうして」(Why)を尋問調で繰り返すと、次のような傾向が生まれやすくなっていきます。

●上司の心証を悪くしないためのウソの報告をするようになる
●あまり厳しく追及されるのがわかると、隠すようになる
●人格否定につながり、上司・部下の信頼関係が損なわれる
●原状回復、再発防止に向かってのモチベーションが下がる

現象・出来事に対して原因を探るために、協力的な姿勢で「なぜ、どうして」と問いかけることは否定しませんが、人間行動に関しての「なぜ、どうして」には、かなり疑問に思われるものもあります。

また、過去の複雑な原因に対して、「なぜ、どうして」と徹底的に追及する場合、答えとしてはいくらでも説明材料は出てきますが、解決の道筋があまり見えず、生産性につながらないこともあります。そして、何よりも恐ろしいのは、どこが悪いか、誰が悪いかの行き着く先が、「犯人探し」につながることです。

それよりも、「どこに向かって」「どうやって」と、未来志向の問いを発するほうが、焦点が定まり、解決の道筋が見えてくるものです。過去の複雑な原因を探ることに労力をかけるよりも、未来の目的・目標に目を向けたほうが、問題をシンプルにとらえることができ、より生産的になるでしょう。

もちろん、企業の中で生産性を高めるためには、徹底的に原因追求をして生産性を妨(さまた)げる要因を明らかにする努力は必要です。しかし、同時に、人間性を重視し、経営者としての想いを浸透させることも忘れてはいけません。

「何のために」を表す経営の理念と使命を明らかにした上で、「どこに向かって」にあたる目標を定め、「どうやって」具体的な計画・実行レベルへと落とし込むか。こうした目的志向の経営を進めることによって、企業の活力を回復しなければならない時代に入っているのではないでしょうか。

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年9・10月号「実践!アドラー心理学」第4回より、一部を抜粋して掲載したものです。

経営・マネジメント誌「衆知」

2017年7-8月号 特集「先見力を磨く」

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発売日:
価格(税込):1,000円

iyashi

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