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「年輪経営」が世界を変える~塚越寛・伊那食品工業会長

2017年01月10日 公開

マネジメント誌「衆知」 PHP言志録

 

どうすれば「年輪経営」ができるのか

「どんな局面でも、1年1年着実に『年輪』を刻んでいくことです」。トヨタ自動車の2014年3月期決算発表の時の豊田章男社長の言葉です。急成長の歪みを指摘し、「持続的成長」の大切さをお話しされました。長年、「年輪経営」を唱え、長きにわたって増収増益の経営を実践してきた私にとって、「わが意を得たり」の心境となる言葉でした。

木は寒さや暑さ、干ばつなどの環境によって成長の幅は変わりますが、前年よりも必ず太くなります。決して成長を止めず、確実に年輪を一つずつ増やしていきます。これこそが企業のあるべき成長の姿ではないかと思っています。

では、どうすれば「年輪経営」ができるのでしょうか。

「遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」という二宮尊徳翁の言葉があります。この言葉は、目先の利益にとらわれることなく、長期的視点で課題を解決していく姿勢の大切さを教えてくれます。

当社の主力商品である寒天はもともと冬の限られた時間の中で農家の副産物として生産されてきたため、天候次第で生産量が激しく増減する典型的な相場商品でした。そこで当社はきれいな海と良質な原料の海藻を求めて世界中の産地を調査した結果、韓国、チリ、インドネシア、モロッコに生産ネットワークを構築し、安定供給を図ってきました。おかげさまで現在、国内の寒天シェアの八割を占めるまでになり、売上の1割を研究開発にあて、寒天の研究、生産技術の確立、新しい商品開発に取り組んでいます。

当社の社是は、「いい会社をつくりましょう」です。いい会社とは、単に経営上の数字がいいというだけではなく、社員、取引先、お客様、地域社会から「いい会社だね」と言っていただけることが重要です。それは決して簡単なことではありませんが、伊那食品の経営を通じて、それが実現できることを証明したいと思っています。

資本主義の本場であるアメリカでも、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEОの、「会社は株主だけでなく顧客、従業員、取引先、地域社会の共同体、そして地球まで含めた『ステークホルダー』のためにある」という考えが、シリコンバレーを中心に広がっていると『日本経済新聞』が報じていました。

本来、人は幸せを追求するものとすれば、会社は構成する人々の幸せの増大のために存在すべきです。その本質に立脚し、自然の理法にかなう経営を真摯に実践していくことが、結果として「年輪経営」につながると思います。日本だけでなく、海外でもこの考え方が広がれば、きっと世界を変えることができると信じています。

 

※本記事はマネジメント誌『衆知』2016年9・10月号、特集「自分流を貫く」より、その一部を抜粋したものです。

経営・マネジメント誌「衆知」

2017年7-8月号 特集「先見力を磨く」

2017年7-8月号 特集「先見力を磨く」

発売日:
価格(税込):1,000円

iyashi

著者紹介

塚越 寛(つかこし・ひろし)

伊那食品工業会長

1937年、長野県駒ケ根市生まれ。伊那北高校在学中に肺結核を患い、学校を中退して長期の入院を経験する。快癒後、木材会社に就職するが、’58年、経営不振にあえぐ子会社の伊那食品工業の社長代行に任ぜられる。以後、原料の海草の価格に大きく左右される相場商品だった寒天の安定供給体制を確立し、寒天の成分を活用した医薬、バイオ、介護食といった新商品開発に取り組んで新たな市場を開拓、48年間連続で増収増益という金字塔を打ち立てる。黄綬褒章のほか、日刊工業新聞社による最優秀経営者賞など受賞(章)多数。
著書に『いい会社をつくりましょう』(文屋)、『リストラなしの「年輪経営」』(光文社)、『幸せになる生き方、働き方』(PHP研究所)などがある。

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構想力、実現力、人材育成力、人間力……。松下幸之助の哲学を学びつつ、現代に活躍する一流執筆陣の
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