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小山薫堂 ヒットを生み、幸せをもたらす発想のヒント

2017年03月14日 公開

マネジメント誌「衆知」

相手の心を慮り、喜びのサプライズを仕掛ける

小山薫堂「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」など、数々のテレビ番組をヒットさせてきた放送作家の小山薫堂氏。出身地でもある熊本県のPRキャラクター「くまモン」の生みの親としても知られている。また、日光金谷ホテルの顧問として業務の改革をサポートし、京都の老舗料亭・下鴨茶寮では経営を託され、魅力溢れる出会いの場を生み出し続ける。
豊かな発想と人を惹きつける企画で様々な事業をプロデュースしてきた小山氏が考える「おもてなしの心」とは。

小山薫堂(こやま・くんどう)
放送作家、脚本家、企画プロデューサー。1964年熊本県生まれ。日本大学芸術学部在籍中より放送作家として活躍し、斬新なテレビ番組を数多く企画。脚本を担当した「おくりびと」で第81回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞。活動は多岐にわたり、コラム・小説の執筆、ラジオパーソナリティ、企業の顧問やブランドアドバイザーなどとしても活躍。近年は、人気キャラクター「くまモン」の生みの親としても話題に。下鴨茶寮主人、京都館館長を務める。

取材・構成:若林邦秀
写真撮影:永井 浩

 

陥ってはいけない「おもてなしシンドローム」

最近は「おもてなし」が時代のキーワードとして至る所で取り上げられますが、大げさな言い方をすれば、僕は一つの社会問題だと思っています。

日本人の誰もが「おもてなし」を掲げる。すると、日本国中どこを歩いても「おもてなし」を求めるようになります。普通の人が、普通の応対をしているだけでは不十分、そんな空気ができてしまうのではないかという危惧を抱きます。

手厚いサービス自体は悪いことではありませんが、それが当たり前になると次第に感動は薄れて、逆に手厚いサービスがないことに対して、おおいに不服を感じるということにもなりかねません。接客するほうも、心に無理をして「おもてなし」を重ねていると、今度自分がお客の立場になった時、反動で相手に過剰な「おもてなし」を要求するケースも出てくるのではないかと心配します。

「おもてなし」がかえってストレスを生んでいる――まるで「おもてなしシンドローム」ですね。ですから、僕は「おもてなし」は、そんなに声高に主張するものではないと思うのです。

僕が尊敬する写真家のハービー・山口さんは、「見返りを期待しない善意が大切だ」とおっしゃいました。今、言われている「おもてなし」は、それとは逆で「これだけおもてなしをしているんだから、みんなが感動してくれて、口コミでいい評判が広がって、お客さんが増えて、売上アップにつながるはずだ」というような、明らかに見返りを期待したもののように思えてなりません。

また、「おもてなし」というと、誰もが笑顔で愛想よくしなければならない、という思い込みのようなものがないでしょうか。親しみやすさもサービスの一つではありますが、僕が「おもてなし」の心を感じる京都のお豆腐屋さんのご主人は、決して人当たりがいいほうではありません。どちらかというと一見、無愛想で近寄りがたい雰囲気すらあります。しかしそれは、豆腐づくりの作業から目を離せず、仕事に集中されているから。このお豆腐屋さんは、京都で唯一、昔ながらの製法で豆腐づくりを続けておられるのです。

この絶品の豆腐を味わうと、お客への愛想より、精魂込めておいしいものをつくることこそ、このお店にとっての「おもてなし」なのだと感じます。京都には、そのような「自分は何を一番大切にするのか」という哲学を持って商いをされている方が多いですね。

僕が理想とする「おもてなし」は、ハービー・山口さんがおっしゃるような、見返りを期待しない、さりげない気遣いであり、また京都の豆腐屋さんのご主人のような、自分自身のこだわりみたいなものです。

例えば、朝、家の前の落ち葉を掃く時に、ついでに隣の家の前も掃いておく。それを「これ見よがし」にやるのではなく、隣の人に「いつもすみませんね」と言わせないように、それとなくやっておくのです。あるいは銭湯に行った時、洗い場の桶が散らかっていたら、軽く洗って伏せておく。すると次に使う人が「なんか気持ちいいな」と思ってくれる……かもしれない。

人に見られないように、でも自分の心の中では何か楽しい。自己満足に近いのかもしれませんが、僕の場合、相手から認めてもらうとか、ほめてもらうためにするのではなくて、通りがかる人とか、次に使う人がいい気持ちになってくれるんじゃないかと勝手に想像してほくそ笑むという「おもてなしナルシスト」の傾向があるようです(笑)。

日本人が昔から持っていた美徳には、これと似たような面があると思います。履きものが乱れていたら揃えたり、洗面台が水しぶきで濡れていたらペーパータオルで拭き取ったり。こうした行為は、別に誰かに指示されてやっているわけではないし、やったからといって何か見返りがあるわけではない。人に感謝されるためにやるのではなくて、次の人のことを慮ってやっているのです。日本人がこれを自然にできるというのは、日本が持っている目に見えない資源です。履きものをきちんと揃えるというあの感覚を他のことにも向けられるようになれば、日本の「おもてなし」は、より奥の深いものになっていくと思います。

※本記事はマネジメント誌『衆知』2017年1・2月号、特集「おもてなしの真髄」より、その一部を抜粋編集したものです。

経営・マネジメント誌「衆知」

2017年3・4月号 特集「最強のブランドを育てる」

2017年3・4月号 特集「最強のブランドを育てる」

発売日:2017年02月27日
価格(税込):1,080円

iyashi

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