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小村寿太郎とポーツマス会議〜難航覚悟の日露講和交渉

2017年09月05日 公開

歴史街道編集部

小村寿太郎
小村寿太郎(写真 国立国会図書館)
 

今日は何の日 明治38年(1905)9月5日

日露講和条約(ポーツマス条約)が締結

明治38年(1905)9月5日(現地時間9月4日15時) 、アメリカ東部のポーツマス海軍造船所において、日本とロシアの日露戦争講和条約、いわゆるポーツマス条約が結ばれました。戦争継続も辞さないとする強硬姿勢のロシアを相手に、苦難の末に日本が戦勝国として外交交渉を成功させた陰には、外務大臣小村寿太郎の並々ならぬ苦心があったことはよく知られます。今回は、小村寿太郎について少し紹介してみましょう。

「日本人は皆、閣下のように小さいのですか?」

日清戦争前のこと。宴会で小村は清国の李鴻章にそう揶揄されます。すると小村は「日本では閣下のような大男は、大男、総身に知恵が回りかねと申し、大事を託さぬことになっています」と、堂々と切り返しました。 身長156cmと小柄で痩せた小村は、体格の良い李鴻章や欧米人に対すると貧相に見えましたが、内には烈々たる闘志を秘めていた外交官であったといわれます。

明治34年(1901)に第一次桂太郎内閣が発足すると、小村は外相に就任。内相は児玉源太郎、海相は山本権兵衛と、錚々たるメンバーでした。当時、対ロシアについて政府内に二つの意見がありました。一つはロシアの満洲支配を認める代わりに、日本が朝鮮半島を影響下に置く日露協商論、もう一つはイギリスと同盟を結んで、ロシアを牽制する日英同盟論です。小村はもちろん後者で、日英同盟の実現に向けて尽力。そもそも日本を見くびるロシアが協商案に乗るはずもなく、小村の選択は正しいものでした。明治35年(1902)、日英同盟締結。小村の果たした大仕事です。

明治37年(1904)に日露戦争が勃発すると、アメリカで精力的に演説を行ない、ルーズベルト大統領を味方につけたのが、金子堅太郎でした。金子と小村はハーバードで同時期に学んだ同窓で、金子をアメリカに送り込んだのは小村であった可能性も指摘されます。

連合艦隊が日本海海戦で勝利を収めると、明治38年8月10日、ルーズベルト大統領の調停により、日露戦争の講和会議がポーツマスで行なわれることになりました。小村は日本の首席全権として会議に臨みます。本来であれば首席全権は元老の伊藤博文が担うべきでしたが、難航が予想される会議に伊藤をはじめ誰もが尻込みしました。国民が望む賠償金や領土要求をロシア側が呑むはずがなく、首席全権は明らかな貧乏くじだからです。しかし、あえて「火中の栗」を拾う決断をしたのが、小村でした。国家の危機に際して、自分を犠牲にしてでも難事に臨むその姿は、まさしく武士そのものといえるでしょう。

会議は数週間に及び、したたかなロシア全権のウイッテを相手に、息詰まる神経戦が続きました。ロシアは早期停戦を望んでいるにもかかわらず、賠償金と領土割譲には全く応じません。 そして交渉決裂寸前のところで、ロシアは南樺太の割譲を認め、かろうじて交渉は妥結したのです。日本は晴れて戦勝国となり、その夜、小村はホテルの自室で男泣きしたといわれます。

しかし10月、大任を終えて帰国した小村を迎えたのは、国民の罵詈雑言でした。ロシア側に大幅に譲歩したとして国賊呼ばわりされたのです。もとより小村は覚悟の上でした。そんな小村を、桂首相と山本海相が新橋駅に迎え、二人が小村の両脇をしっかり挟んで歩みました。もし小村が狙撃でもされるのならば、共に斃れる覚悟であったといいます。

その後、小村は明治41年(1908)の第二次桂内閣で外相に再任され、明治44年(1911)には日米通商航海条約を結んで、関税自主権を回復することに成功しました。そして同年11月、燃え尽きるようにしてこの世を去ります。享年57。

日本が大国ロシアを相手に奇跡的な勝利を収めた陰には、小村をはじめ自分を犠牲にする覚悟で難事に臨んだ多くの日本人がいたことは間違いありません。 そしてそれこそが、維新の苦難を経て、国民国家への道を歩んだ明治日本の真骨頂といえるのかもしれません。

iyashi

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