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山本勘助~武田信玄の名軍師は実在したのか

2017年09月09日 公開

歴史街道編集部

今日は何の日 永禄4年9月10日

八幡原の戦い(第四次川中島の戦い)で山本勘助が討死

永禄4年9月10日(1561年10月18日)、第四次川中島の戦いにおける八幡原の戦いが行なわれました。戦国最強と呼ばれた武田軍と上杉軍の激突として、あまりにも有名です。今回は、八幡原の戦いで討死したとされる山本勘助についてご紹介してみます。

山本勘助といえば、大河ドラマ「風林火山」の印象が強いですが、一般に武田信玄の軍師として知られます。しかしその実像は謎が多く、一時期、非実在ともいわれていました。 軍学書『甲陽軍鑑』の記述に矛盾が多いことから、史料としての信憑性が疑われ、山本勘助も架空の人物ではないかとされたのが、昭和34年(1959)のことです。

しかし、昭和44年(1969)に武田信玄の書状が発見され(『市河文書』)、そこに「山本管助」の名が記されていたことから、大きな議論となりました。すなわち山本管助は山本勘助なのか、と。 同一人物か別人かは研究者の間でもいまだに見解が分かれますが、少なくともこの発見によって、山本管助なる人物が信玄に仕えていたことがわかりました。しかも『市河文書』は信玄が信越国境の有力国人・市河氏に宛てたもので、その有力国人への使者を管助が務めていることから、管助が武田家で相応の地位にいた人物であることがわかります。 普通、こうした使者は武田一門や譜代家臣が務めるからです。

そして平成20年(2008)、「山本管助」に宛てた信玄の書状が2通発見されました。群馬県安中市の旧家・真下家で発見されたため、『真下家文書』と呼ばれます。 2通のうち1通は、天文17年(1548)4月、管助の信州伊那における働きに対して、恩賞を与えることを信玄が伝えたものでした。同年2月、信玄は上田原の戦いで村上義清に大敗を喫し、宿老の板垣信方らを失っています。武田の信濃統治が危うくなる中で、山本管助は伊那郡を確保する上で大きな役割を果たしたのであろうことが窺える内容でしょう。もう1通は時期がわかりません。某年4月20日、信玄が管助に対して、軍事作戦の検討と、宿老の小山田氏の病状見舞いを命じたものでした。信玄は文中で「揺(ゆらぎ、軍事作戦のこと)については、よく検討するように」と記しています。そこからは、信玄が管助に、軍略を任せていた可能性が窺えるといいます。

では、具体的にどの戦いであったのか。それを探る鍵が、病状見舞い先の宿老の小山田氏とは誰か、ということになります。 実は該当する可能性のある人物は二人いました。小山田信有と小山田虎満です。 もし小山田信有であれば、彼は天文21年(1552)に没していますので、手紙の時期は天文20年頃となるでしょう。そうなると、この年の5月26日に行なわれた真田幸隆の戸石城攻略を指す可能性が高く、山本管助もそれに関係していたのかもしれません。また小山田虎満であれば、彼が永禄元年(1558)に病を患っていた記録が残り、その頃の書状と見ることができます。折しも当時、信玄は上杉謙信と川中島をめぐって攻防を続けている最中で、小山田は川中島に近い東条城を守っていました。すると管助も、川中島経略に深く関わっていた可能性が出てくるのです。

『市河文書』で武田家の有力家臣であることが裏付けられ、さらに『真下家文書』によって、信濃経略の軍事作戦に関わっていたことが見えてきた山本管助。かなり『甲陽軍鑑』が描くところの山本勘助に近づいてきた感があります。なお真下家からは興味深いことに、山本管助の末裔に関する史料も発見されました。もともとこれらの史料は高崎藩士となっていた山本管助の末裔が所蔵していたものです。山本家に伝わる来歴と文書を付き合わせると、整合性があることがわかっています。また末裔は武田家滅亡後、徳川家康に仕え、さらに水戸家への仕官を勧められました。水戸家には武田旧臣が多く、山本家は『軍鑑』の山本勘助の末裔と見做されていたようです。

川中島合戦の「啄木鳥戦法」をはじめ、山本勘助にはいまだ謎の部分が多いですが、山本管助という武田家の有力家臣がいたことは間違いなく、少しずつ実像が見え始めているといえそうです。

iyashi

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