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小沢治三郎~近代戦にふさわしい科学的リーダーシップをそなえた名提督

2017年11月09日 公開

歴史街道編集部

空母機動部隊の生みの親・小沢治三郎が没

今日は何の日 昭和41年(1966)11月9日

昭和41年(1966)11月9日、小沢治三郎が没しました。マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦の指揮官であり、最後の連合艦隊司令長官としても知られます。

小沢は明治19年、宮崎県児湯郡高鍋町で元高鍋藩士の家に生まれました。少年時代から柔道で鍛えており、因縁をつけてきた不良を、橋の上から投げ飛ばしたといった逸話が多く伝わります。

明治42年(1909)、海軍兵学校卒業。第一次世界大戦時には、第二特務艦隊の駆逐艦乗組となり、地中海に派遣されました。その後、太平洋戦争開戦直前まで第一航空戦隊司令官を務め、航空兵力を集中させた航空艦隊の編成を提唱、このため「空母機動部隊の生みの親」ともいわれます。

開戦時は馬来(マレー)部隊指揮官兼南遣艦隊司令長官。マレー作戦の成功に大きな功績を挙げ、陸軍の今村均司令官が行なったジャワ上陸作戦にも強力な支援を送って成功させたため、陸軍から篤い信望を得ました。しかし、小沢の不運は機動部隊を用いた航空戦術の先覚者でありながら、海軍人事の序列制のため、ミッドウェー海戦にもソロモンの一連の戦いにも参加することなく、ようやく南雲忠一の後任として機動部隊である第三艦隊の司令長官に就任した時には、開戦以来の熟練搭乗員の多くは失われていたのです。

昭和19年(1944)6月、小沢は第一機動艦隊司令長官として、最新鋭の空母・大鳳に座乗して、マリアナ沖海戦に臨みます。しかし日本軍の空母部隊が練度不十分であったのに対し、アメリカ軍はおよそ二倍の兵力で、高速空母部隊を擁していました。この時、小沢がとった戦法が「アウト・レンジ戦法」で、敵の航空機の航続距離の外から、航続距離の長い日本軍機の特性を活かして一方的に攻撃をかけるというものでしたが、練度不十分の攻撃隊ではその実行には無理があり、またアメリカ軍が対空砲火の弾頭にVT(近接)信管を組み込んでいたこともあって、攻撃隊は一方的に撃墜され、「マリアナの七面鳥撃ち」などと嘲られることになります。海戦は空母大鳳、翔鶴などを失い、惨敗を喫しました。

小沢は責任をとって辞表を起案しますが、同年10月のレイテ沖海戦で、より苛酷な任務を命じられます。囮(おとり)部隊の指揮官でした。すなわちフィリピンに上陸する米軍に対し、小沢率いる残存空母部隊が囮となって敵の機動部隊を北方に吊り上げ、その間に戦艦大和、武蔵を中核とする栗田健男指揮の第二艦隊が、レイテ湾の米軍泊地に突入するというものです。そして小沢は作戦通りに敵の機動部隊を吊り上げ、麾下の空母をすべて失いながらも栗田艦隊にレイテ突入のチャンスをもたらしました。しかし、栗田艦隊はレイテを目前にして謎の反転を行ない、小沢らの努力は水泡に帰すのです。

昭和20年(1945)5月、小沢は大将昇進を拒み、中将のまま連合艦隊司令長官に就任。しかし、連合艦隊の艦艇はもはやほとんど残っておらず、終戦時の混乱の回避のみが主な功績というべきものでした。戦後は東京の世田谷に住み、「自分は死に損なった男だ」と恥じて、戦争についてはマスコミには一切口を閉ざしました。多数の部下を自分の指揮で失ったことへの自責の念は強烈であったようです。たまたま近所に陸軍の今村均の住まいがあり(今村もまた自責の念から、庭に建てた狭い小屋で生活をしていました)、今村をよく訪ねていたようです。今村のもとに若い自衛官が話しを聞きに来ると、今村は必ず、帰りに小沢提督のもとにも寄りなさいと言っていたといいます。小沢はたまに今村と喧嘩することもあったようですが、生涯の戦友でした。

昭和41年(1966)11月9日没。享年80。葬儀に際し、アメリカの戦史研究家サミュエル・モリソンは、花束とともに「近代戦にふさわしい科学的リーダーシップをそなえた名提督」というメッセージを贈りました。

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