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紀州藩主時代の徳川吉宗~部下思いの名君ぶりを伝えるエピソード

2017年10月21日 公開

歴史街道編集部

貞享元年10月21日(1684年11月27日)、徳川吉宗が生まれました。徳川8代将軍で享保の改革を推進したことで知られます。また「暴れん坊」ぶりが知られる活発な人物でした。

吉宗は貞享元年、徳川御三家の紀州藩2代藩主・徳川光貞の4男に生まれます。幼名、新之助。母親はお由利の方と呼ばれる女性で、和歌山城大奥の湯殿番を務めていました。吉宗は生まれるとすぐに、家臣の加納五郎左衛門の屋敷に引き取られ、5歳まで加納の屋敷で育てられます。 やがて兄の次郎吉が病死したため、江戸の紀州藩邸に移り住むことになりました。

14歳の時に、越前丹生郡鯖江に知行3万石を与えられた吉宗ですが、宝永2年(1705)に長兄(紀州藩3代藩主)、次兄(4代藩主)が相次いで没したため、22歳にして第5代紀州和歌山藩主となります。今回は、紀州藩主時代の吉宗のエピソードをいくつか紹介してみましょう。

ある時、吉宗は奉行下役に藩の収入と支払いを記した「納払帳」を見せるように命じ、目を通しました。そして「帳面に算盤(計算)違いがいくつかあるぞ。再度吟味してまいれ」と命じます。下役は仰天し、誤りを見抜いた吉宗の能力もさることながら、不備のある帳面を提出した自分たちの責任を感じて、平身低頭して震え始めます。すると吉宗は笑顔で、「よいか。誤りをわしが見つけたと言うでないぞ。お前が見つけたことにして、勘定方に戻しておけ」 下役は吉宗の優しさに胸がつまりました。仕事場に戻って勘定違いを調べて修正し、勘定方に戻しますが、自分や勘定方の役人すべてを救ってくれた吉宗の配慮に黙っていられず、同僚に打ち明けました。同僚はしみじみと言います。 「われらは日の本一の果報者じゃ。殿のためならば命もいらぬ。心して務めに励もうぞ」

ある夜、宿直の若い藩士たちが退屈まぎれに酒を飲んでいました。その中に酒癖の悪い者がおり、酔ったあげくに金張りの襖を刀で切り裂いてしまいます。翌朝、報告を受けた上司は直ちにその者を牢に入れ、厳しい処断を覚悟しながら吉宗に謝罪しました。すると吉宗は、あっさりとこう言います。
「許してやれ。酒に酔えば、誰でも間違いは起こす。わしとて身に覚えがある」
「されど、お役目の最中に酒を飲むのは許されませぬ。きつく懲らしめねば、他の者に示しがつかぬかと」
「いかにも、そちの言う通りじゃ。なれど、世に全徳の者など稀じゃ。優れた所もあれば愚かな所も併せ持つのが人であろう。その者の優れたるところはないか?」
「酒癖は悪うございますが、武芸にはいささか秀でておりまする」
「ならば深く咎めるな。今後は宿直の時に飲まぬよう言い聞かせてやれ。ただし、切り裂いた襖の修理は許さぬ。そのままにしておけ」
上司から吉宗の言葉を伝えられた藩士はもとより同僚たちは、二度と職務中に酒を飲むことはありませんでした。そして切り裂かれた襖を見るたびに、誰もが愚かな行ないを慎んだといいます。

吉宗は鷹狩を好みましたが、吉宗の行列が通る折や鷹狩の最中でも、農民は野良仕事を続けていてよいと触れています。また領民に親しく声をかけて、農家の庭先で身分を問わず酒盛りを始めたりしました。 また夕立に降られて寺に駆け込み、住職が着替えを持ってくると、「気遣い無用じゃ」と笑って、裸のまま、着物が乾くまで茶を飲みながら住職と四方山話をしたりもしています。そんな吉宗が将軍職に就くことが決まった時、家老が領内の名主たちを和歌山城に呼び出し、吉報を伝えました。ところが名主たちからは、お祝いの言葉が発せられません。
「祝いの言葉も申し上げぬとは、どういうことじゃ?」と家老が問うと、名主たちは、「紀州になくてはならないお殿様に出て行かれて、喜ぶ者などおりませぬ」「お殿様がいなくては、わしらの国はどうなりますか」と涙ながらに語ったといいます。吉宗が徳川8代将軍に就任する、33歳の時のことでした。

いずれも吉宗の名君ぶりを伝える逸話と言えそうです。

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